団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

神戸6歳女の子岡山2歳男の子

2014年09月26日 | Weblog

  神戸の小学1年生の女の子、生田美玲ちゃんが殺された。たった6歳だった。体をバラバラに切断されビニール袋6個に分けられ雑木林に放置された。私は軽率にも妻を駅に車で送る時、「こういう事件って親や親戚が関わることもあるのかな」と言った。妻は「自分の子どもを殺すことはあっても、バラバラに切断する親はいない」と言い切った。会話はそこで途切れ、妻は駅で降り電車で出勤していった。

 夕方私は買い物を終え夕食の準備に入った。いつもの魚屋でいいアジを買った。出刃包丁で頭を落とし3枚におろした。丁寧に骨を道具で抜いた。塩をして小麦粉を刷毛で塗る。油で火を通した。厚揚げ、戻した干しシイタケを加えて炒める。出汁を入れ煮る。醤油、砂糖、塩、酒で味を調えた。大根おろしをガーゼで軽く絞って煮立った鍋に入れひと煮して完成。盆に二人の箸、薬、取り皿などを用意して妻が帰宅したらすぐ夕飯にできるようにした。午後5時30分を過ぎていた。妻を駅まで迎えに行くまであと40分あった。テレビのニュースを観た。

 岡山大学病院で2歳の男の子が母親の肺を移植する手術が成功したという。その手術前、手術中、手術後を取材した記録だった。担当執刀医は大藤剛宏准教授。男の子のベッドを4人が取り囲んでいる。男の子の呼吸は弱まり、目を閉じたままだった。たくさんの管が挿入されていた。体全体を上下させ、止まりそうな呼吸を懸命に引き延ばしていた。大藤医師が言った。「勝算はありますけれど保証はできません」 神妙な面持ちで両親と祖母が聞く。「どうでしょうか、やりますか?」 両親祖母3人同時に「ハイ」と言う。

 世界初の肺区域移植手術は成功した。移植するための摘出手術を受けベッドで大藤医師から「成功しましたよ」の言葉に嗚咽する母親。妻の言う通りだ。親は子どものために身を投げ出す。できることは何でもする。私は自分の失言を深く反省した。

  手術成功の2週間後、2歳の男の子は目を普通に開けていた。呼吸も手術前よりずっと楽そうだった。お母さんからスプーンで食べ物を口に入れてもらっていた。

  一方神戸の女の子の事件の犯人が死体遺棄の容疑で逮捕された。47歳の男である。黙秘しているそうだ。最近書店で『性犯罪者の頭の中』(鈴木伸元著 幻冬舎文庫 780円+税)を買ってあった。犯人逮捕を知ってこの本を読み始めた。著者はNHKの報道ディレクターである。この著者も『殺人者はそこにいる』の著者の清水潔記者と同じく足で地道に取材している。増え続ける子どもへの性犯罪について述べている。「『同世代の女性には“拒否される”恐れが高く、接近できないとすれば、拒否できない、あるいは拒否を無視して性行為を行える子どもを対象とすることが少なくない。子どもを対象とする加害者は、“言うことを聞きそうな子”“起きたことを他の人に話しそうにない子”を見抜くのが極めてうまい』大阪大学藤岡教授『性暴力の理解と治療教育』を引用して犯行を繰り返していくなかでの“自分がスキルアップしていく感覚”が犯罪の基となる。犯罪者に共通するのは日常生活での“満たされなさ”である」(p57、58)

  大藤医師のように人間の命を守るために体にメスを入れる貴い仕事もある。医師のメスで自分の体の一部を切り取ってもらい息子に移植してもらう強い母がいる。自分の欲望に振り回されてたった6歳の子どもをバラバラに切り刻むホモ・サピエンス(知性人叡智人の意)のできそこないがいる。

 私のような凡人主夫は生きるための食事の用意で肉や魚を包丁で切る。留学したカナダの学校でサバイバル教育の一環として豚、ニワトリを殺して解体処理する体験を十代後半でした。妻が赴任した国々でこの経験が役立った。切れる包丁もナイフも恐ろしい。動物は食べなければ死ぬ。生きている限り、ただひたすら食べ続ける。生きるために殺す。性的欲望を満たすためだけに殺すことはしない。私はいつも疑問に思う。日常生活に満たされないという犯罪者は、自分でも家族でもが食材の下ごしらえからしてつくった食事をしたことがあるのだろうかと。なぜならまともな食事の準備には相当な時間がかかる。家族と友人と和気あいあいと一緒に食べるにも時間がかかる。食べることをおろそかにしてはならない。まともな食生活はまともな人間生活の基礎だ。働かずに生活保護を受けて、食べ物はコンビニや店で出来合いのモノを買って食べて、酒を飲んでよぱらっていて日常生活が満たされないって。ふざけるな。そんな生活ができるのは満たされ過ぎているからだ。甘えるな。一度ニワトリを殺して解体処理して食べてみたらいい。私は吐いた。こんなことを強いる学校の教育方針を呪った。その後、私は感謝で満たされた。

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