団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

洗剤どばどば

2021年09月03日 | Weblog

  ネットで『洗剤どばどば…』という見出しを見つけた。私はサハリンで見た光景を思い出した。

  サハリンに住んでいた時、私の釣りの師匠リンさんとヤマメを釣りに出かけた。遡上する鮭は、海から川に入ってくる。川の上流に行けば行くほど、鮭はボロボロになる。そのような鮭は食用には向かない。上流の小川で鮭は産卵する。その卵を狙ってヤマメが集まる。そのヤマメを釣る。4,50センチ級のヤマメが面白いように釣れた。

  その帰り道、テントがあり、煙が空に一筋上がっていた。リンさんが鋭い目つきで私を見て、口に指をあてた。二人で腰をかがめて、音を立てないよう忍び足で、その場を離れようとした。川幅2メートルぐらいの小川の水は洗剤の泡だらけ。その下の水は真っ赤。だいぶテントがあった場所から遠ざかった。リンさんが「あいつらは密漁者だ。鮭のイクラだけ採ってドラム缶に塩と一緒にしている。採り終わるまであそこに寝泊まりしている。たいていライフルを持っていて、危険な連中だ。川に洗剤をドバドバと流して、下流の魚がみんな死んでしまう。悪い奴らだ」と堰を切ったように言い放った。私は、ソドムとゴモラのロトの妻が塩の柱に固まってしまったように、体が動かなくなっていた。

  サハリンではリンさんと山、野、海を駆け巡った。野営したこともある。リンさんは、自然を崇めていた。食材は現地で採った山菜キノコや川で釣った魚、海で獲ったカニや貝。私はリンさんが作ってくれた料理が好きだった。ご飯は飯盒で炊いた。フライパンや鍋も軍隊で使うモノ。箸はその辺の木の枝。料理も美味かったが、その後片づけにはもっと感心した。洗剤を使わず、砂や泥。タワシの代わりに、草を丸めてゴシゴシ。骨や殻は、掘った穴に埋めた。リンさんが言った。「必要な物は何でもある。ゴミも埋めれば、また土になる。要は頭の使い方。自然に逆らうと怖いよ」

  『洗剤どばどば…』(まいどなニュース 8/12(木)6:55配信)は、こう続く。「バーベキュー後に川で食器を洗う若者たち、無知な行為の代償は?専門家『想像力育んで』」

  人間の無知な行為の代償であろう。温暖化による中東の砂漠地帯の豪雨、中国の豪雨、ヨーロッパの豪雨、カナダの熱波、アメリカの山火事、日本の雨による土石流。川の上流で洗剤どばどばをしたら、下流で、そして海でどういうことが起こるか。確かに想像力が必要だ。便利で役にたつモノが、私たちの周りに溢れているが、自然を知らない想像力に欠ける人も大勢いる。改めて思う、リンさんはやっぱりすごい人!

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