団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

ゴーン被告の逃げるが勝ち?

2020年01月14日 | Weblog

  去年の12月29日、元日産自動車の会長カルロス・ゴーン被告が保釈中にも関わらず、関西国際空港からまんまと逃亡した。プライベートジェット機を使い、トルコ経由でレバノンに入国した。

 多くの人がこの事件に関して、意見、感想を述べている。私は佐藤優さんと堀江貴文さんの見解に注目した。佐藤優元外務省主任分析官は週刊新潮1月16日号25~26ページで「逃亡劇がレバノンのバックアップなしに成就したとは思えません。…日本の主権下に置いておかなければならない人物が、当人の意志によるとはいえ、民間軍事会社所属のプロに連れ去られてしまったわけです。日本政府は事件発生後6日も経ち、やっと法相が会見を開きましたが、遅すぎる。駐レバノン大使の召還をも検討すべき話です」と言った。もう一人の堀江貴文さんは、「まあ、ぶっちゃけゴーンの圧勝だよね。広報戦略は」「ほら、やっぱり検察とゴーン追い出したい派が日本版司法取引を使ったスタンドプレーをしたわけよ。つか、ゴーン追い出したい派もチキンすぎて検察の力借りないと無理だったんだろうね」とツイートした。二人とも鋭い。他の専門家とやらと明らかな違いをみせた。私を感心させたこのコメントは、二人がともに以前、日本の検察と闘い、長い拘留を経て、有罪判決を受けた経験からだと思う。やはり経験に基づいた解説は、説得力がある。難しい話は専門家にまかせたい。

 ゴーン被告は、今回の脱出に16億円から20億円かけたという。信じたくないが、金があればこんなことさえできるのだと思った。日本からの脱出を請け負ったのは、アメリカの元グリーンベレーの民間軍事会社所属の男だという。アメリカは脱税に厳しい国である。この男にゴーン被告がいくら払ったか知れないが、日本の司法当局は、まずアメリカの脱税調査機関にこの男の収入申告の調査依頼をするべきだと思った。レバノンはゴーン被告を返すことない。ならば国際世論に訴えるしかない。アメリカと日本には、犯人引き渡し条約がある。まずアメリカの元グリーンベレーの男の線から手をつけるべきだ。もしもの話だが、日本の警察が逃走途中のゴーン被告を発見していたら、元グリーンベレーだった男(達?)は、どう出たか。話によれば彼は拳銃などの武器を所持していたという。こうなるともうアメリカ映画そのものである。日本国内で元アメリカ軍兵士だった、脱出請負人はどう日本の警察を戦ったであろうか。アメリカの映画会社やNETFLIXが今回の逃走劇を映画化するという話は、映画関係者の制作意欲を刺激したに違いない。

 日本の法務大臣がゴーン被告の逃走から6日経って会見を開いた。それも真夜中にである。おそらく海外に向けての日本司法の立場を表明したかったのだろう。であるならば、やはり英語で声明を発するべきであった。一方ゴーン被告は、レバノンで勝利宣言でもするかのように自分でメディアを選別しての会見を開いた。何しろ6か国語(英語、フランス語、アラビア語、ポルトガル語、スペイン語、日本語)を話せるゴーン被告は、大げさな身振り手振りで自分の言いたいことをまくしたてた。私にその姿はピエロにしか見えなかった。いくら6か国語をあやつれて国際人と賞されても、自分が関わった国の法を踏みにじることは許されない。そういう人を国際人とは呼べない。

 悲しいかな、日本のグローバルゼイション(世界化)は、まだまだ遅れているのである。悲観することはない。どこの国にも同じ問題は存在する。これからどんどん改善されていくだろう。真理はひとつ。どこにも常識ある賢人たちはいる。あのイランにでさえ、現体制に批判的な人々がいる。私は過去に3年間アラブ社会に暮らしてアラブ人気質を肌で感じ取った。何事においても沽券を重んじすぎると思ったが、相手の沽券に敬意をもって付き合えば、良い関係を持てる。私は欲しい物を手に入れるために3日間、アラブの商店へ通った。1日目は軽く断られた。2日目は私の言い分を聞いてくれた。3日目にコーヒーが出て、店主が条件を提示した。店主が言った。「私が日本人にコーヒーを出したのは初めてだ。日本人は、私の言い値ですぐ買ってくれる。お前は本当に日本人か」と。今回の事件を解決するために、日本ができることは、妥協することなく日本の沽券を世界に示し続けることである。いつかはきっとコーヒーが出てきて、相手が話し始める。待つことも沽券である。

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