喜屋武岬-慰霊の日に-
雨は
7月まで降り
豪雨で
道は
泥水で
逃げ惑う人の
腰まであったそうだ
もんぺの
少女は
月の
露も
なく
泥水の中をかき分け
かき分け
南に向かったそうだ
南に向かう途中の十字路で
兵士や住民の泥を吸った
膨れたお腹を
知らずに踏みながら
逃げたそうだ
もんぺの少女は
南の突端につき
押し寄せる
金髪の青い眼の兵士に
追いつめられ
疲れ果て泥にまみれた兵士に
壕を追われ
救われない思いの
泥だらけの
絣のもんぺの少女は
灰色の海に飛び込もうと
おかあさんと
言いながら
海の水の中ではなく
海岸の岩の波に
吸い込まれたそうだ
岬の花は
だから
白ではなく
赤い
花
仏桑花