ありか

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ありか


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ちくちくと
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　小さな痛み
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　遠い記憶の痛み
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　思い出したよ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　どうしていいのかわからなくて
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ただまっすぐに歩いた
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　あの頃

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　同じ痛み
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ささくれの棘
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　とろうと
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　指でたどっても
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　とれない痛み
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　途方にくれて
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　建物からもれる夜の明かりを
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　かきわけて
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　たぐりよせてみる

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　痛みのありか
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

風の便りー再生ー

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　風のたよりー再生ー

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　心細かった
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ひとり
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そして
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ひとり
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　いなくなって
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ひとりぼっちに
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ほうりなげられたようで

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そしたら
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　いつか
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　きえてしまうんだって
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　毎日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　毎朝
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　なにも考えられなくて
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　きえてしまうまえに
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　準備をしなくては
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　片付けをしなくては
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　まわりは
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ごみだらけで
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　あせってしまった

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　時間が
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　時間が
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　すり抜けていくんだ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　つるり
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　するする
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　と
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　どこにもひっかりはしない

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　きょう
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　コンマ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　兄に勧められて通っていた美容室で
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　コンマ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ひといきついて
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　紅茶とケーキ

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　やさしい時間が流れた
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ここちよい風が
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　周りに吹いて

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　やあ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　こんにちは
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　お目覚めですか

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ちゃんと
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　生きなさい
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　自分の時間を生きるんだよ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　って
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　風が便りをよこした

影

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　影

　　　　　　　　　　　　　　　　　　そとで
　　　　　　　　　　　　　　　　　　爆音

　　　　　　　　　　　　　　　　　　うちには
　　　　　　　　　　　　　　　　　　ウイルスがうごめく

　　　　　　　　　　　　　　　　　　がんじがらめに
　　　　　　　　　　　　　　　　　　閉じ込められて
　　　　　　　　　　　　　　　　　　ひとは
　　　　　　　　　　　　　　　　　　動きが取れなくなるのか

　　　　　　　　　　　　　　　　　　すでに
　　　　　　　　　　　　　　　　　　大地を
　　　　　　　　　　　　　　　　　　踏み荒らして
　　　　　　　　　　　　　　　　　　叩き潰しあっている
　　　　　　　　　　　　　　　　　　泥だらけの穴ぼこ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　白い四角の海で
　　　　　　　　　　　　　　　　　　溺れる人もいる

　　　　　　　　　　　　　　　　　　恐ろしい光景が
　　　　　　　　　　　　　　　　　　毎日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　繰り広げられ

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「わたしは
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　貝になりたい」
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　という白黒の画面を
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　うっすらと覚えている

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　あの時代より
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　カラフルに
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　画面から飛び出している
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　耐えられない風景

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　それで
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　画面を消して
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　木々や花が咲き乱れ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　動物が飛び跳ねる
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　光景を見つめるのだが
　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　その裏にモノクロームの影
　　　　　　　　　　　　　　　　　消えない


　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

めまい

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　めまい

　　　　　　　　　　　　　　　　　　毎日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　不消化
　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　1日が通過
　　　　　　　　　　　　　　　　　　ただ通過
　　　　　　　　　　　　　　　　　　噛み
　　　　　　　　　　　　　　　　　　砕き
　　　　　　　　　　　　　　　　　　味わうにも

　　　　　　　　　　　　　　　　　　なにもない
　　　　　　　　　　　　　　　　　　苦味も甘さもなく
　　　　　　　　　　　　　　　　　　舌の上を
　　　　　　　　　　　　　　　　　　ころがっていき
　　　　　　　　　　　　　　　　　　胃酸の中に
　　　　　　　　　　　　　　　　　　落ちていく

　　　　　　　　　　　　　　　　　　味蕾が
　　　　　　　　　　　　　　　　　　しぼんでいる
　　　　　　　　　　　　　　　　　　うなだれた花
　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　この数年悲しいことが起こったからね
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　さびしい肩に
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　雨が落ちていることにも気づかず
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ぬれていたよ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　歩いている道で

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　道の途中は
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　こんなこともあるさ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　とは思わなかった
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　いつのまにか
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　うつむいていることが多かったから
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　笑顔になれなくて
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　こんふうに
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　年を重ねていくんだって
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　納得しようとしたさ

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　いつでも
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　くるくると
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　同じところで
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　回っているよ

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　耳の中の石のように

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ああ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そうか
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　そうだったのか
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　私の気分の悪さは

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　その生き方そのもので
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　いつでも楽しくしてりゃ

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　耳の石も
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　その海で
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　静かに浮いて
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　風に吹かれているよ

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　きっと
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　生きることに目を回すこともなく
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　

1年の始まり

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　1年の始まり


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　むかし
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　むかし
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　アイドルが
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　春なのにお別れですかあー
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　とうたっていたっけ

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　お正月なのに
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　しのんでいる

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　写真に向かって
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　話しかけている

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　お正月のご馳走は
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　好きなものだけ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　お供えし

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　しのんでいる