バナナ バナシーささくれー
記憶の底に
沈んでいたこと
バナナ
大きなバナナ
手を伸ばした
横に兄がいたようだった
幼い頃のはじめての痛い思い出
おじが伸ばした手の甲を
叩いた
何が悪かったのか
わからなかった
兄が昔話をして
バナナの話題がでた
怖いおじの方だと思っていたが
それはやさしかったおじの方だった
あのおじさんは
急にきれると豹変するんだよ
やさしいのはねこをかぶっていたからさ
ねこをかぶらなくても
ねこは
爪を隠しているし
気に入らないと
シャーと
歯をむき出して
引っかく
飼っていたねこが
ふとんにおしっこをもらしたとき
父がそのねこをたたいた
そのとき私は
顔を背け
叩かれた気持ちになって
首が動いた
そのとき
父が
あっと私を見た
ささくれは
時間がたつと
硬い皮膚になって
自然にむけてしまうのに
いつまでたっても
痛いままで
バナナには手をだせない
おっかなくて
バナナの向こう側から
手が伸びてきて
また痛い思いをさせるのだろう、と
今日も思い出して
しくしくと傷むのだよ