ひとり言 ひとつふたつ詩集

沖縄から詩をつぶやきます。

宣言

2019-04-30 13:18:38 | 日記

                  宣言


               湿った風に
               深い緑の草木がうなだれ
               空を見上げると
               煙った雲が
               流れることなく
               そこに立ち止まっている



               重い足どり
               春が行過ぎて
               夏を生みだすために
               垂れ込めた
               空気


                  あなたの息子は
                  あなたの息子ではなくなり
                  迷える羊
                  赤の他人の
                  神を名乗る
                  偽りの母に
                  寄りかかって
                  許しを請う
                  哀れな
                  破綻した
                  優等生


               がちゃんと割れた
               透明なコップを
               悲しくて
               拾うことができず
               ただつったって


               小さく
               別れの唄を歌った


               もうそこには
               空の巣箱しか存在していない

             
               仏間に向かって
               報告をした

              
               もう息子はいないと
                  

               



               
               
               




歳月

2019-04-27 23:50:50 | 日記

                      歳月



               40年の歳月は
               レジの紙送り
               まったなしに
               書き込まれた値打ち



               空が
               狭く
               今にも落ちてきそう
               


               劣化なのか
               退化なのか
               皮膚はぴりぴりなのに
               神経の突起は
               錆びついて
               避雷針にも
               なりはしない


               40年の歳月は
               朽ちていく
               風景
               懐かしい人が増える
               相容れない
               鮫肌の
               ざらざらする
               半人魚が増えていく


              
               ますますの人嫌い
               時代遅れの頭

天狗

2019-04-22 22:04:37 | 日記


                    天狗


                時代の風は
                向かい風


                なんにもない
                無風ではなくて
                いつも逆なでする
                向かい風


                とげを
                とばして
                つきさしていく


                大きな団扇をもつ
                天狗は
                人々の声を
                団扇で
                散らし
                なかったことにする

               
                高下駄の
                真っ赤な鼻


                裂けた島国
                列島を走る

ゆらゆら

2019-04-22 21:50:01 | 日記





                   ゆらゆら


             朝の玄関で
             ゆら
             ゆら

             歩いているときにも
             ゆら
             ゆら

             昼の階段でも
             ゆら
             ゆら

             車酔い

             耳の奥の
             磁石が
             ゆら
             ゆら

             水面で
             浮かんだり
             沈んだり

             伝わらないという苛立ち
             伝えられない言葉の数が
             ゆら
             ゆら

             不幸なことがおきているわけではない
             けれど
             揺れ動いている


             耳の奥の磁石
             水の中で
             ゆら
             ゆら

             体の中をかけめぐり
             ゆれている
             想念

             水の中の
             わかめ
             こんぶ
             のように

             ゆら
             ゆら
             

花見バス

2019-04-14 14:37:08 | 日記

                 花見バス


              しずかな風が吹き渡る
              春の通路を
              バスがいく
              咲き乱れる花びらが
              ひらひらと
              人々を歓迎し
              はらはらと
              地面に
              ひとひら
              ひとひらひとひら
              通りすぎる
              バスを
              名残惜しみ

              白く
              透明な
              花びらを
              散らして
              春を
              かなしみ
              風に乗せて
              言葉なく
              散らしていくのだ

              笑い声や
              薄桃色の
              木々を
              めでるために
              乾杯をする声さえない
              
              浜通りの
              満開の
              桜並木の
              バスの花見
              降りられない