ひとり言 ひとつふたつ詩集

沖縄から詩をつぶやきます。

キャンプ はんせん という名の通りで

2022-11-19 14:31:50 | 日記
                  キャンプはんせん という名の通りで


              そのゲートのある町に
              琉舞をする人に連れられて
              いった
              道向かいに
              スナックが立ち並び
              夕方の通りには
              大声で話し、笑っている大柄の外国人
              が群れていた

                その中のスナックのひとつは
                舞台をしつらえ
                琉舞道場でもあった

                サンシンの音が聞こえる
                ママの笑顔は
                なんともいえない
                すべてを見通しているような
                すべてを包み込んでいるような

             そのゲートをみていたら
             ある映画の場面が立ち上った
             広い外人の背中
             押しつぶされた少女
             廊下の血痕

                ゲートの向かいは
                住居
                フェンスはぐるりと
                住民を囲み
                誰も逃げられない
                押しつぶされないように
                サンシンと琉舞に支えられて
                フェンスに立ち向かい
                いつも
                祭りで
                押し戻している

             その通りを行くたびに
             胸がちくちくと痛む
               
             キャンプ はんせん
             という名の
             ゲート通り
                       

                   

                    
                  

胃酸の暴動

2022-11-19 12:21:40 | 日記

                      胃酸の暴動

                   箱の中
                   あふれる
                   書き留めたメモ

                   整理できず
                   箱から飛び出て
                   大空に舞い上がり
                   暗闇を漂った

                     消化できないよ
                     この紙
                     胃酸で溶け出しても
                     ボールペンの文字は
                     浮き出して
                     くるしいくるしい
                     ボールペンの味は
                     胃の中で
                     ちくちく
                     異物
                     消化不可

                  胃の容量
                  頭の情報処理能力
                  は一緒か

                  たまらず全部吐き出した
                  水で薄めても
                  耐えられない

                     どうして
                     こうくるしいのか
                     見たくない情報
                     から
                     古い記憶が引き出され
                     その記憶に紐づいて
                     ぞろぞろと
                     ほこりかびをまとった
                     思い出やら
                     怒り
                     悲しみ
                     が飛び出してきて

                     七転八倒


                 いつもの気分悪ささ
                 と
                 耐える

                 お花畑の中でも
                 気分悪いものは悪い

                 毎朝
                 弾の飛び交うニュースを
                 夜には
                 暗闇に放ち
                 あしたの
                 朝日にとかしてしまえ
                 と
   
                 胃酸の暴動が治まった
                 胃の中に
                 バニラアイスクリームを
                 流し込んでいる

                 
                      
                     
                     

金属音

2022-11-15 21:19:05 | 日記
                    金属音

                

                切りすぎた
                爪を
                突き立てようにも
                つるつる
                つるつると
                滑り落ち

                落ちたところで
                右往左往
                拾おうとして
                今度は
                地団駄をふみ

                立っているところを
                踏み荒らしてしまった

                この地点を
                記憶に残して
                掘り下げようと
                決意したが

                まどろみのなかで
                記憶が
                とろとろと
                うやむやに
                霧の向こうへ
                かすみ

                きょう
                いつかいた
                鉄鍋の底に
                指を置いたら
                爪が
                きーきーと

                音をたて
                耳の奥で
                立ち上がろうと
                
                もがいている


                
              
                
              
                
                
                
                
                

モスグリーンー軍服ー

2022-11-10 21:29:04 | 日記
                      

                       モスグリーンー軍服ー                      

                 
                  せかいは
                  緑で蔽われ
                  新しい命を生み出す
                  ものと
                  思っていた

                  いま 
                  モスグリーンは
                  毎朝
                  硬直したこころを
                  ひび割らせ
                  夜
                  いためつけて
                  こなごなに
                  壊していく

                  赤黒い月が
                  きのう
                  現れて
                  
                  不気味な天空
                  
                  メビウスの帯に沿って
                  繰り返し
                  現れては
                  消えていく

                  歴史の波
                  モスグリーンの波
                  
                  凍え
                  乾いた舌
                  では
                  新しい言葉は
                  生まれない
                 

                 
                                 

詩を書く理由ー夕暮れの風のせいー

2022-11-04 19:45:52 | 日記
                       詩を書く理由ー夕暮れの風のせいー


                   尖った葉
                   ススキの穂が
                   秋の風にゆれている

                   二十歳の秋
                   夕暮れ
                   父が入院している
                   病院の屋根が見える
                   丘の
                   草むらで
                   ひとり
                   膝を抱えて
                   ないた

                   父の病が
                   その体を蝕み
                   もう立ち上がって
                   歩くことができないだろう
                   と
                   たぶん
                   最後に伝えきいた末っ子
                   は
                   ことばにして
                   かなしみを
                   表すことができず
                   長い時間
                   なきつづけていた

                   秋の雲が
                   雨になりそうな空の
                   夕暮れを隠し
 
                   あのときの風が
                   きょう
                   頬をかすめていった

                   突然
                   胸の奥で
                   悲しみが
                   きしんで
                   しみだした

                   夕暮れの
                   風
                   のせいで