ひとり言 ひとつふたつ詩集

沖縄から詩をつぶやきます。

たま

2019-02-18 20:00:36 | 日記

                   たま



                電話の声が
                唐突に話しはじめた



                「日曜日も忙しいのね。
                 報告なんだけど、
                 まぶいぐみしてきた
                 5歳からまぶいおとしていたんだって。」




                耳の奥で
                たまがコトリと
                落ちた
                深く
                暗い穴ぼこの中に
                ごとり



                そこから
                たまが
                ぐるぐるとひとまわり
                「なに?まぶいぐみって。
                 赤組ね!?白組ね!?
                 勝ち組か?負け組みか?」




                たまは
                空気を震わせて
                玉突き


            
                言霊の衝突
               

曇り空の下

2019-02-18 19:35:49 | 日記

                   曇り空の下




               今にも降り出しそうな
               曇り空
               冷たい風に
               褐色の葉が
               道路にこすれ
               舞い上がっていく


               行きかう人
               うつむいて
               かばんを握り締め
               足早に歩いている



               がさごそ



               足元の葉っぱたち
               乾いて
               ちぎれ
               壊れている


               
               もどかしく言いよどんだ
               言葉の群れが


               
               がさごそ
            

               
               がさついて
               飛び散っている



               だれがすてたのか
               からの
               レジ袋といっしょに


           
               曇り空の下
           



  

天気図

2019-02-16 21:27:51 | 日記

                   天気図



               薄っぺらの
               こぶし大の
               心臓



               へらへらと
               薄笑い
               その目は
               わらっていない
               不気味に光っている



               そんな自信たっぷりに
               答えられたら
               思考停止して
               催眠術に引っかかる



               ゆー あー きんぐ
               ゆー あー あーあー
               ゆるされない


              
               世は冬               
               春めいたり
               狂喜乱舞の
               真っ赤な桃色桜


              
               心ちぎれ
               乱れる


     
               しわのごとき
               等圧線
               
               
      

悲嘆

2019-02-09 09:09:00 | 日記

                    悲嘆




                「国語」のなかで
                こぶしの花が咲き
                「社会」では
                かまくらであかりがほんのり
                むぎふみをする
                 


                「日本史」は縄文土器が
                いすわり
                弥生の中で畑仕事
                平安な世界では
                十二単で文学する紫式部
                鎌倉幕府は
                がけから馬で駆け下りて
                大奥の維持に
                金策で江戸を駆け回り
                黒船に対抗して
                港町を開き
                富国強兵にひた走り
                小さな島も引きずり込まれ
                あれよあれよの
                国際的孤立の
                三国同盟の
                恐怖時代を苦しく立ち回り
                おびただしい
                悲嘆と苦難の茨の道



                ああ
                こどもたちは
                社会の鏡なので
                暴力が満ち溢れていることを
                自らの体で
                痛ましい
                時代を映し出している



                幸せなはずの時代は
                うそと欺瞞と虚偽に塗り固まれ
                こどもだったはずの大人が
                手本のうそをあたかも真実のごとく
                美しく着飾った言葉で
                ダブルメッセージを送るから
                凶器と狂気に
                かなしむのだよ
                生きづらいと


                
                

                               
               

春の雨

2019-02-08 22:03:24 | 日記

                      春の雨



                  春の雨は
                  初夏をはらみ
                  霧雨からいきなりのよこなぐりの大雨



                  細い水路に雨だれ
                  菖蒲の花 紫
                  遠い記憶




                  トタン屋根に落ちる雨音
                  砂の庭の小さな穴に
                  しみいる




                  明け方の大雨が
                  葉を揺らしている
                  若木の枝が大きくたわみ
                  ぽろりと
                  花が落ちる



                  記憶は
                  雨にふやけ
                  にじんで
                  薄れ行く




                  初夏には
                  まだとどかず
                  冬と春の間を
                  いききしながら


                 
                  しとしと雨になったり
                  まぶしい青い空がのぞいたり



                  過去にとどまってしまいたくなる
                  不穏な
                  くらい春