ひとり言 ひとつふたつ詩集

沖縄から詩をつぶやきます。

40年

2012-05-26 18:24:45 | 日記
         



                    時の川-40年-


                    川底から
                    突然
                    たちのぼる
                    
                    忘れていた
                    影たち

                    時の
                    断片が
                    目の前で
                    声となって
                    取り囲む
                    
                    泥水に
                    ずぶぬれとなった
                    靴
                    その地と時を
                    踏みしめる

                    あの時
                    そこで
                    叫び声を
                    あげられず

                    立ちすくんでいた

                    素手の拳
                    鉄の
                    何重もの
                    いつわりで
                    塗り固められた
                    壁に
                    抗し

                    未来は
                    いま
                    
                    にやけた
                    ふやけた
                    
                    しめられた
                    首の
                    苦しささえ
                    わからなくなった

                    グローバルな民
                    眼を
                    眼を

                              

                                                                                      

5月の雨

2012-05-19 00:26:34 | 日記
               

              



                     5月に
                
                     5月の雨の中を
                     歩いた
                     
                     大雨の日
                     慟哭の日

                     沈黙した日
                     
                     ぬるい熱湯に徐々に
                     つかり始めた日

                     大雨に
                     景色が消え
                     大雨が
                     大声を上げている

                     変化は
                     見えないところから
                     忍び寄り
                     むしばんでいった

                     占められている
                     という意識は
                     大雨に
                     白く朦朧とし
                     大雨は
                     いつものことに
                     なり
                     
                     ぼんやりと
                     この大雨に打たれて

                     考えることさえ
                     やめてしまった

                     命が
                     商品になってしまう
                     ことにももはや気が付かない

                     従属の民たち
                     
                     大雨に打たれ
                     その冷たさで
                     目覚め

                     取り返せ

                     私たちの立っている地を



                               
                     

闇の中で

2012-05-17 20:13:21 | 日記
       



          伝言

             言葉が
             おりてこないときには
             お待ちください

             言葉は
             あなたのものではなく
             かみが
             あなたのくちを通して
             つたえているのですから

             あなたにつながるひとびとの
             言葉たちなのですから







                   
                           やむひと
             
                        やみびとは
                        病人ではなく

                        それぞれの中で
                        巣くう
                        闇
                        
                        闇の中に
                        広がる大きな宇宙

                        宇宙で
                        ひかりが生まれ
                        生命に
                        連なる

                        何もなく
                        何でもある
                        闇

                        暗がりに
                        目を凝らし
                        耳を澄まして

                        読み取れ

                        やみびとは
                        闇の住人

                        闇にひそむ
                        
                        無明のひと


                        
                        
                                                            
                        
                    

絵画からの印象

2012-05-07 19:15:25 | 日記
           


                    糸巻き

                 ぐるぐるっと
                 巻いて

                 夢のかけら
                 われてしまった
                 ガラスを
                 集め

                 ぐるぐるっと
                 包帯で
                 覆い

                 破れた
                 障子
                 の穴
       
                 ぐるぐるっと
                 丸く
                 きりとり
                 星の形の
                 紙を
                 はりつけて
                 ぺたぺたっと
                 まわりを
                 のりづけ

                 身のおきどころなく
                 アピールする
                 口を
                 ふさぎ
                 動き回る
                 手足を
                 体ごと
                 ぐるぐるっと
                 巻き
                 かくしている

                 抱きしめて
                 このぐるぐる巻き
                 の自分

                 大丈夫
                 こころを
                 しばる
                 糸を
                 ゆるく
                 ゆっくりと
                 といて
                 
                 歩き始めよう

                 ぐるぐる巻きの
                 糸巻き

                 くるくると
                 動き
                   
                 すすむ
                 
          
                                            

                 

初夏

2012-05-03 20:15:38 | 日記



                      
                      這う虫


                  去年のカレンダーが
                  初夏の風に揺れている
                  めくらないままの
                  7月が
                  部屋の中で
                  冬も来ず
                  春も通り過ぎ

                  もう
                  初夏がそこまでやってきた
                  真っ青な空は
                  かわらず        
                  天にあり

                  小さな虫が
                  地面の
                  新しい緑の芽の間を
                  這っている

                        お墓のお掃除に
                        祖母と母に連れられて
                        行ったときにも
                        地面に
                        小さな虫が
                        ゆっくりと
                        緑の芽の間を
                        這っていたっけ・・・
                          
                   いま
                   ふたりはいない

                   かんぷーの祖母と
                   パーマネントの母と
                   おかっぱのわたしと

                   時代が
                   虫のように
                   地面の上を
                   通り過ぎていく