その男、獰猛

　　　　　　　　　　　その男どう猛につき・・・



　　　　　　　　　その男
　　　　　　　　　ほほが
　　　　　　　　　重力に負けて
　　　　　　　　　垂れ下がり
　　　　　　　　　


　　　　　　　　　鼻の下の
　　　　　　　　　ちょび髭を
　　　　　　　　　剃り落し
　　　　　　　　　21世紀に
　　　　　　　　　現れた
　　　　　　　　　透けた
　　　　　　　　　まがいもの


　　　　　　　　　闘争的
　　　　　　　　　平和主義が
　　　　　　　　　口癖で


　　　　　　　　　知らない間に
　　　　　　　　　知らせない間に
　　　　　　　　　
　　　　　　　　　「私が責任者ですから決めるんです」
　　　　　　　　　と
　　　　　　　　　耳の欠けた
　　　　　　　　　耳なしほういち


　　　　　　　　　その語り口は
　　　　　　　　　上品にして丁寧
　　　　　　　　　「皆様の命を守るために・・・
　　　　　　　　　　　　先頭に立って・・・」
　　　　　　　　　

　　　　　　　　　盾になれるか
　　　　　　　　　決めたことのために起こりえることに
　　　　　　　　　責任が取れるのか
　　　　　　　　　どう責任をとるのかまで
　　　　　　　　　考えているのか

　　　　　　　　　ナルシストの
　　　　　　　　　ちょび髭
　　　　　　　　　演説のパフォーマンスで
　　　　　　　　　20世紀最大の惨劇を起こした

　　　　　　　　　
　　　　　　　　　その男
　　　　　　　　　姿　物言いに合わず
　　　　　　　　　どう猛につき
　　　　　　　　　気をつけろ

　　　　　　　　
　　　　　　　　　現代にも姿を現している

　　　　　　　　　


　　　　　　　　　


　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　
　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　

この夏．ゴディラ

　　　　　　　　　　　　ゴデイラ


　　　　　　　　　　　むせかえるアスファルトの熱
　　　　　　　　　　　


　　　　　　　　　　　熱気
　　　　　　　　　　　まぶしい白い陽
　　　　　　　　　　


　　　　　　　　　　　陽の中で
　　　　　　　　　　　鎖も燃えて



　　　　　　　　　　　青い鏡は
　　　　　　　　　　　銀色に
　　　　　　　　　　　陽を照り返し


　　　　　　　　　　　熱の波
　　　　　　　　　　　陽の海をかいくぐり

　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　その浜辺へ
　　　　　　　　　　　仁王立ちの変形ゴジラ
　　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　高速艇を
　　　　　　　　　　　握り潰し
　　　　　　　　　　　その浜辺へ


　　　　　　　　　　　大きな足の爪で
　　　　　　　　　　　鉄骨の建物を
　　　　　　　　　　　踏み潰す



　　　　　　　　　　　白の浜を守れ
　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　

新・鬼平犯かちょう

　　　　　　　　　　　　　　　　　　盗賊改め



　　　　　　　　　　　　　丑三つ時に
　　　　　　　　　　　　　暗躍
　　　　　　　　　　　　　盗賊団
　　　

　　　　　　　　　　　　　闇にまぎれようもない
　　　　　　　　　　　　　どでかいトレーラー
　　　　　　　　　　　　　のせているのは
　　　　　　　　　　　　　海に浮かべるブイ



　　　　　　　　　　　　　これで盗る物は
　　　　　　　　　　　　　海水なんだよ
　　　　　　　　　　　　　ジュゴンの餌場の海底なんだよ


　　　　　　　　　　　　　すげー
　　　　　　　　　　　　　地球を盗るんだ



　　　　　　　　　　　　　珊瑚がきらきら
　　　　　　　　　　　　　紺碧の海が
　　　　　　　　　　　　　ゆらゆら




　　　　　　　　　　　　　わかんねー
　　　　　　　　　　　　　ここに
　　　　　　　　　　　　　無様な
　　　　　　　　　　　　　物騒な
　　　　　　　　　　　　　物体を
　　　　　　　　　　　　　浮き上がらせて
　　　　　　　　　　　　　200年ものらしい
　　　　　　　　　　　　　永久人口物を造るんだって


　　　　　　　　　　　　　銀色の
　　　　　　　　　　　　　鈍色の
　　　　　　　　　　　　　さっしょうきち
　　　　　　　　　　　　　


　　　　　　　　　　　　　エメラルドグリーンの
　　　　　　　　　　　　　海に
　　　　　　　　　　　　　


　　　　　　　　　　　　　０の飛行機が突進した海の
　　　　　　　　　　　　　波立った
　　　　　　　　　　　　　映像が浮かぶ


　　　　　　　　　　　　　ジュゴンに返せ
　　　　　　　　　　　　　地球に返せ


　　　　　　　　　　　　　その海

あんぱんまん

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　あんぱんまん


　　　　　　　　　　　　　　　箱
　　　　　　　　　　　　　　　箱の中に
　　　　　　　　　　　　　　　入ったのはいつか


　　　　　　　　　　　　　　　硬いレンガ
　　　　　　　　　　　　　　　中からせっせと
　　　　　　　　　　　　　　　レンガを積み上げた


　　　　　　　　　　　　　　　なんだったのかな
　　　　　　　　　　　　　　　この箱
　　　　　　　　　　　　　　　疑いの目と
　　　　　　　　　　　　　　　人間嫌いと

　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　人間の何が嫌いなのかな

　　　　　　　　　　　　　　　


　　　　　　　　　　　　　　　　　　黒い覆面の迷彩服が銃を持ち
　　　　　　　　　　　　　　　　　　悲しみにくれる人々を遠ざけている
　　　　　　　　　　　　　　　　　　人間ではありませんのサイン
　　　　　　　　　　　　　　　　　　正義が我にあり
　　　　　　　　　　　　　　　　　　という頑なな主張


　　　　　　　　　　　　　　　　　　ブラックボックスには
　　　　　　　　　　　　　　　　　　事実が
　　　　　　　　　　　　　　　　　　継時的に記録されている




　　　　　　　　　　　　　　この箱
　　　　　　　　　　　　　　自分でつくったの
　　　　　　　　　　　　　　自分ではない人を入れないために
　　　　　　　　　　　　　　だってだって
　　　　　　　　　　　　　　傷つくのが怖いから
　　　　　　　　　　　　　　逃げたの



　　　　　　　　　　　　　　若いとき
　　　　　　　　　　　　　　そのままで
　　　　　　　　　　　　　　箱もそのまま残り
　　　　　　　　　　　　　　出られずにいる




　　　　　　　　　　　　　　　　　　窓のない部屋をつくりました
　　　　　　　　　　　　　　　　　　鍵は外鍵だけです
　　　　　　　　　　　　　　　　　　逃げられないようにしました
　　　　　　　　　　　　　　　　　　かわいいその子が
　　　　　　　　　　　　　　　　　　自己主張せずに
　　　　　　　　　　　　　　　　　　生きているけど
　　　　　　　　　　　　　　　　　　自分の言うままになるように育てたかったのです
　　　　　　　　　　　　　　　　　　女性はよくわからないから
　　　　　　　　　　　　　　　　　　自分がわかりやすいようにしたかったのです




　　　　　　　　　　　　　段ボール箱を破り
　　　　　　　　　　　　　ねこは箱の外にでた
　　　　　　　　　　　　　小さなその腕で
　　　　　　　　　　　　　今度はね、家からでるよ
　　　　　　　　　　　　　外の世界は怖いけど
　　　　　　　　　　　　　面白いんだ
　　　　　　　　　　　　　新しい発見ばかりさ
　　　　　　　　　　　　　よその猫を見ることができるし



　　　　　　　　　　　　　　　　　　家族を奪った
　　　　　　　　　　　　　　　　　　お前にも家族がいるはずだ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　銃より
　　　　　　　　　　　　　　　　　　花束を
　　　　　　　　　　　　　　　　　　人間をとりもどせ


　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　ひとつの国よりも
　　　　　　　　　　　　　　　　　　この地上にいる
　　　　　　　　　　　　　　　　　　ひとつの種


　　　　　　　　　　　　　命の輝きは
　　　　　　　　　　　　　ねこも
　　　　　　　　　　　　　ひとも同じように
　　　　　　　　　　　　　太陽の下で


　　　　　　　　　　　　　「てのひらのちしお
　　　　　　　　　　　　　　みみずも
　　　　　　　　　　　　　　おけらも
　　　　　　　　　　　　　　あめんぼだって
　　　　　　　　　　　　　　いきている
　　　　　　　　　　　　　　みんなともだち」
　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　

ニュースはみない！

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ニュース


　　　　　　　　　　画面は破壊のがれきの山
　　　　　　　　　　音声はないが
　　　　　　　　　　しわの母親と父親が天空に腕をさしだし
　　　　　　　　　　叫んでいる
　　　　　　　　　


　　　　　　　　　　修羅の
　　　　　　　　　　地獄絵図


　　　　　　　　　　こちらの画面は
　　　　　　　　　　のどかな
　　　　　　　　　　田んぼのあぜ道での中継
　　　　　　　　　　GPSを持たせた女の子の
　　　　　　　　　　神隠し



　　　　　　　　　　さーっと
　　　　　　　　　　冷たい風が吹き抜ける
　　　　　　　　　　頭の中
　　　　　　　　　　しらじらと
　　　　　　　　　　霞む




　　　　　　　　　　テレビのスイッチを切る
　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　地球のごくごく一部のかけらの私が
　　　　　　　　　　哭いている


　　　　　　　　　　嘆き悲しんでいる