ひとり言 ひとつふたつ詩集

沖縄から詩をつぶやきます。

失語症

2018-11-27 22:47:51 | 日記
                   失語症



                みにくいあひるは
                ただ
                みにくいと自分勝手に
                決めつけただけで




                うたをわすれたカナリアは
                ただ
                かごの中で
                ことばが
                つぶやきになるだけで
                そよそよと
                風にさえも
                乗ることもなく
                口ごもり



                うたどころか
                ことばがでてこないのだ




                もう
                なにもいいたくない
                と思うのは
                世界が
                ブラックホールの中に
                吸い込まれているのではないかと
           

  
                それで
                自己啓発の本を必死に探して
                救いの言葉を
                拾い集めるのだ



                ポジティブ
                ポジティブ


                ポジの裏は
                ネガ
                写真を
                やく



                白黒の
                懐かしいフイルム


             
                取り戻せない時間
                

                ねじれた
                螺旋
                


                まっすぐな言葉
                を投げる人は
                正直


                
                その疲れたまぶたが
                垂れ
                うすめで
                眺めている


               
                不信の世界
              

                


あまだれ

2018-11-19 19:57:46 | 日記

                 あまだれ



               四角な顔
               しみが大陸を描き
               子供を育ててきた
               どっしりとした腰は
               石臼



               うらやましい限りの 
               8歳年下の夫への愚痴は
               分厚い口元から
               繰り出されて



               お給料を
               夫の貯金通帳に振り込まされて
               何もほしいものが買えない
               と
               家庭内別居をして
               夫に許可をもらわずに
               2階の自分の部屋にソファーを購入した
               と
               夫は自分をにらみつけて
               でていけ
               と

               などなど
               いったとさ



               ある意味
               のろけかな
               こっちの頭の中では
               「男と女の間には暗くて深い川がある
                えいやこらえいやこら~~」
               と
               闇夜に
               屋形船がどんぶらどんぶら
               だんだん
               脳が
               できものの
               膿のうみになってくる
               から
               所用ができたのでと
               散歩に出たら
               雨が
               ぽつり


               きょうもロマンが落ちて
               夕闇
               

               ああ
               ここにも沼地を抱えた女が一人


               恋に破れたどころか
               恋のなきがらに
               なおもしねしねと
               毒づいている


               愛の裏側が憎しみで
               愛の反語は無関心で
               まだ無関心には到っていないようなのに
               と



               あい
               昼休み時間が終わるさ
               しょうがない
               もどろー
               と
               どろんとして
               傘から
               つるり
               と
               雨だれ
              
               

            
               
                            
                
               
               

学校が消えた

2018-11-17 21:24:50 | 日記

                  学校が消えた



               看護学校の寮で
               母は
               その朝
               ごはんをよそおっていた




               青い空だった
               向こうから
               銀色の雲が
               こちらに動いてくる



               形が見えたとき
               建物が
               音を立てて
               崩れた


              
               吹き飛んだ
               朝餉


       
               悲鳴は
               あふれ


           
               倒れたものを
               抱き起こす
               時間が
               光の速さで
               


               地獄の入り口にすすんでいく



               母たちの看護は
               戦争の中で
               木っ端微塵に
               砕かれ



               戦前に始まった看護学校は
               跡形もなく
               消えた




               そして
               73年後
               お寺の隣の高等学校の体育館の下から
               残骸が見つかった



               戦前の沖縄県立沖縄病院のなかの
               看護学校
               

               




毒キノコーマツタケもどきー

2018-11-12 19:33:54 | 日記

                  毒キノコーマツタケもどきー



               重々しい木箱に納まっている
               あまりにも高嶺の
               手の届かない
               香ばしく
               秋の日には
               もてはやされる
               高級なきのこ
               それは
               おとぎ話で
               


          
               姉さんかぶりの手ぬぐいで
               年末の大掃除をしようかね
               そうすると
               かぼちゃの馬車が迎えに来て
               舞踏会へいけるか



               じめじめしたところで
               きのこが生えている
               暗い
               誰も覗けない部屋は
               きのこの住処
               

            
               ぶなしめじ
               えのきだけ
               スーパーに並んでいるきのこは
               健全な栄養のあるきのこで



             
               暗い目で
               ねたみ
               意識にさえ上らない
               そねみ
               

               どんな実だか
               ぼうぼうの雑草の間の
               ぬかるみで
               ひそかに
               育つ



               マツタケになりたい
               キノコ


               黒に真っ赤な斑点の毒キノコ


              
               
               
               
               



               
               
               
               

思い出のかぐやひめ

2018-11-11 21:12:36 | 日記

                  思い出のかぐやひめ



               暗闇は
              光を隠し
              舌を出して
              嗤う顔も隠し
              


              への字の唇から
              漏れる声を押し殺し
              


              もぞもぞと
              なにやら
              あやしい
              挙動不審の
              ものを走らせる



              暗がりで
              足を
              かかえて
              ひとり
              屋根から
              覗いている
              三日月に
              気づいて


            
              その目も
              細い線のよう
              


              ごめんね
              千鳥足で帰してしまった
              わたしは
              ほんとに
              うそつきだ


               
              そのまま
              お月様の中に
              帰れば
              と




              もう言い訳にしかならない



              メビウスの輪の上で
              40年前のメッチェンと
              めぐり合う



              ひげ