ひとり言 ひとつふたつ詩集

沖縄から詩をつぶやきます。

怪獣

2024-07-28 23:09:43 | 日記
                     怪獣


                   まるまった怪獣が
                   3つ
                   四角のテーブルで
                   ギクシャク
                   これ食べて
                   皿にいれてあげるよ
                   とこわい顔でいうから
                   こわくて
                   箸がすすまない

                   いきなり怒鳴ったり
                   するから
                   心臓に悪い
                   箸を
                   かみちぎってしまいそうだ

                   食事に誘ったのは
                   怪獣だけじゃ
                   わきあいあいの
                   様子がつくれないからか
                   御車の運転手代わりだからか
                   怪獣が口をゆがめて
                   食事に誘うから
                   さみしかったから
                   断れなかった

                   気分の悪かった
                   この数週間の
                   終わりには
                   怪獣は
                   刺激が強かった

                   怪獣は
                   背びれをたてて
                   めがうつろ
                   2つの怪獣をまえに
                   今にも火を噴いて
                   決戦の火蓋

                   かわいそうに
                   姉妹なのに
                   深刻な事情が
                   剣の背びれをにょきと
                   はえさせて

                   あした
                   アイスクリーム食べたいって              
                   いっただろうが
                   と
                   今朝の電話で
                   火をまた噴いている

                   ぼーっと
                   お茶をすすっていたのに
                   きのうのきょうで
                   まだ気分が
                   よくなってないから
                   と
                   気弱な怪獣が
                   ひとこと

                   そして
                   ならんしが
                  (つきあいきれん)
                   と
                   ひとりつぶやく
                
                  

               


                   

あんばらんす

2024-07-25 20:57:54 | 日記
                   あんばらんす


                 このごろ
                 ゆらゆら
                 どんぶり
                 どんぶらこ

                 あんばらんすに
                 水面にゆれる
                 木の葉

                 耳の奥で
                 不気味にささやく
                 不穏のつぶやき

                 なにもうけつけない
                 最近はやりの熱中症か
                 冷静に考える
                 いや
                 もとからのかんしゃくもちで

                 いから噴水
                 すっぱい噴水は
                 乳白色で
                 それでも
                 治りかけの気分不良

                  一番上のにーちゃんの
                  つき命日のお参りの帰り
                  森の中を
                  さまよい
                  その後
                  三半規管が壊れて
                  起き上がれず

                  にーちゃんというより
                  しらないひとに
                  背中を押されて
                  みちを
                  たどっていったのかな
                  もぬけの殻になった
                  心に忍び込んで
                  ふらふらの
                  からだを
                  もっていかれそうになって

                  いつもの知っている
                  街に
                  かえってきたのに
                  三半規管は
                  すぐには立ち直れなかった

                  小禄の
                  園児が
                  不発弾で亡くなった場所の
                  近くで

                 さびしい
                 おおきくなれなかった少女が
                 おおきくなったのに
                 おとなになれない
                 さびしい少女の
                 となりで
                 泣いていた

                 幼い子のままの女の子と
                 もうすでに
                 ひからびそうな
                 幼かった昔の女の子と
                 いっしょに
                 あるいていたようだ

            
          
                  

おいらくの来い

2024-07-14 21:36:29 | 日記
                   おいらくの来い

                 ふらっと
                 いってみる
                 懐かしい場所

                 ふらっと
                 な
                 何もない毎日
                 ひとりごとを
                 いっていると
                 迷路が消え
                 薄ぼんやりした
                 景色
                 ぺらぺらの紙

                 誤字だらけの
                 あの気分は
                 もどってこない
                 夏の日々で

                 あんたの顔を思い出したら
                 いらいらと
                 気分が悪い
                 腹の立つ記憶で
                 記憶を消そうと
                 消しゴムを手に取ったら

                 なにもなかったことになるかな
                 と
                 記憶がうすぺっらになって
                 ぺらぺらの
                 老いらくの恋で

                 雲散霧消
                 遅れてやってきた青年は
                 あまり遅れすぎで
                 つまずいて

                 もう
                 そこには誰もいない
         

7月の雷鳴

2024-07-07 15:12:44 | 日記
                     7月の雷鳴

                  7月の雨は
                  雷鳴とともに
                  大粒で落ちてきて
                  草のにおいが
                  むーんと
                  熱気を連れてきた

                   夢を見たんだ
                   歩いているんだけど
                   どこからきて
                   どこを歩いているのか
                   わからない
                   以前に歩いたことが
                   あるような

                   だれもいないが
                   さみしくはないんだ

                   一人で歩いているんだけど
                   だれかが横にいる気がして

                 風
                 冷たい風
                
                 熱気のなかの
                 冷たい風が
                 ほほを
                 かすめていった

                 もう
                 もどれない
                 このまま
                 歩こう
                 そうするしかない

                  
                   
                  

                  

泥の骨ー七十九年目の慰霊の日にー

2024-06-23 12:39:01 | 日記

                 泥の骨ー七十九年目の慰霊の日にー

           横殴りの雨が降っていた
           落雷
           胸を突き刺す

           雨の六月が近づくと
           床がカタカタと鳴る
           雨が続き
           雨が道を覆い
           溝からあふれ
           畑を浸し
           木々をなぎ倒し
           緑の葉をひきちぎり
           森を白くくもらせ
           鉄の暴風雨が島を襲った

           六月が近づくと
           夜ねむれないおじさんが
           枕元に訪れるひとたちと
           話しをはじめる
           「わたしたちを探して
            あそこの床下に
            ここの床下にもいるから」

           胸がざわめき
           ざわざわと
           さとうきびが揺れうごくから

           おじさんは
           床をはがし
           地面をほり
           さがし   
           つきとめた

           そこには骨
           泥にまみれ
           黒くなった骨が
           いた

           七十九年にもなるというのに
           島の家々の床は
           いまも
           カタカタと
           鳴っている