ひとり言 ひとつふたつ詩集

沖縄から詩をつぶやきます。

泥の骨ー七十九年目の慰霊の日にー

2024-06-23 12:39:01 | 日記

                 泥の骨ー七十九年目の慰霊の日にー

           横殴りの雨が降っていた
           落雷
           胸を突き刺す

           雨の六月が近づくと
           床がカタカタと鳴る
           雨が続き
           雨が道を覆い
           溝からあふれ
           畑を浸し
           木々をなぎ倒し
           緑の葉をひきちぎり
           森を白くくもらせ
           鉄の暴風雨が島を襲った

           六月が近づくと
           夜ねむれないおじさんが
           枕元に訪れるひとたちと
           話しをはじめる
           「わたしたちを探して
            あそこの床下に
            ここの床下にもいるから」

           胸がざわめき
           ざわざわと
           さとうきびが揺れうごくから

           おじさんは
           床をはがし
           地面をほり
           さがし   
           つきとめた

           そこには骨
           泥にまみれ
           黒くなった骨が
           いた

           七十九年にもなるというのに
           島の家々の床は
           いまも
           カタカタと
           鳴っている

                    

2024-06-17 00:23:07 | 日記
                     

                曇り空の大通り
                ごった返している知らないことば
                どこを歩いているんだろう
                と思わず辺りを見回した

                なつかしい  
                看板があるけど

                もはや
                異国の迷路
                知らない街

                  奥の暗がりで
                  ごそごそと
                  お豆売り
                  小豆や青豆
                  昔のお商売
                  古い木造のうちのにおいがした

                  表札には知った名前
                  仲のよかったクラスの子の名
                  島の都会で
                  置き去りにされた
                  お豆売り

                あの漫画の石売りと同じ

                川原で石を拾っている
                私の影

なぐさめる

2024-06-17 00:11:56 | 日記
                     なぐさめる                 

                  しょんぼりの
                  ひざに
                  ねこがとなりにきて
                  そっと
                  なめた
                  「うん、だいじょうぶだよ             
                    ありがとう。」

                  いつもは
                  じゃりじゃりの舌
                  そっとなめるから
                  おもわず
                  返事をしてしまった

                  さみしくない昼間の
                  ひとりの床の上

                 

小雨の街で

2024-06-09 22:26:32 | 日記

                     小雨の街で
                   

                 小雨の街を
                 歩いた

                 見知らぬおばさんが
                 微笑みかけてくれる

                 こんにちは
                 雨が降ってきましたね

                 みんなさみしい
                 雨の夕方は

                 いきているから
                 と思ったら

                 いままでみえなかった
                 看板の色が
                 輝いていた

                 小雨の街で
                 ありがとう
                 と
                 つぶやいた

南の海

2024-06-09 00:30:30 | 日記

                      南の海


                   南の海は
                   鉄板
                   魚が焦げて
                   誰もとりにこない

                   大砲に囲まれているから
                   おっかなくて
                   魚釣りができない

                   海に線は引けないのに
                   わざわざ線をかいて
                   陣取りしている

                   青い青い海は
                   美しいから
                   島の岩はとんがって
                   ひとを近づけない
                   白い波がざぶーと
                   岩に砕けて
                   散るんだ

                   南の海で
                   にーちゃんは
                   子どもたちと泳いで
                   楽しそうに過ごしていたんだ
                   あの浜で

                   南の島は
                   誰も近づけない
                   さめが
                   尖ったくちばしをして
                   ぐるぐる回っているから

                   美しい誰のものでもない
                   南の島の海