ひとり言 ひとつふたつ詩集

沖縄から詩をつぶやきます。

どりょく

2016-11-26 10:42:07 | 日記
                       どりょく




               くらくらと
               耳の奥の
               磁石が
               定まらない


               海風に
               帆が揺れ
               嵐に
               見舞われて
               右に左に
               激しく揺さぶられていく


              
               おい
               おかしいよ
               健康問題というやつが
               この腹の中に
               ため込んだのは
               筋肉だと信じていたのに
               黄色に染まった
               脂なのか


               
               頑張って机にしがみつき
               そして
               外回りは車で移動して
               売り込みや
               接待やら
               飲んだり
               怪しげな
               もつ鍋を
               食らって


               
               それでも
               業績は上がらなんだ
               腹に一物
               脂ぎった首に
               睡眠時無呼吸で眠れやしない



               あー
               気分が悪い
               遠のく意識
               


               路頭に迷う



               冷たいダンボールで
               夢見ることもできない
          


             
               商売になった
               命
               


               品物になった健康
             


               狂った
               磁石の方向は
               どこを向くのか



               すべてを
               吐き出して
               とりあえず
               帆を
               立て直し



               普通のつもりで
               生きている



               頭に埋め込まれた
               これまでの記憶を
               くみなおすにしても
               染められた
               色を
               限りなく白に
               していく努力を
               怠らないこと
               
              



               

               

ふゆへ

2016-11-19 22:46:10 | 日記

                    ふゆへ


                こんなふうに
                時間が過ぎて行って
                このような時がつくられて
                そして
                刻まれていくのか



        
                こなごなの
                 砂埃のなかで
                 もがきながら
                  横たわる
                   





                 青い空の中を
                  白い雲ではなく
                   灰色の物体が鈍い音を
                    はきながら
                     通りすぎていく





                 飛行機雲は一直線を
                  描き
                   青空を真っ二つに引き裂きながら
                   ゆっくりと
                    右へ
              


            
                 南の島からは見えるが
                  北の国では曇っているから
                   みえず
                    浮かれ騒いで
                     



                しあわせの鳥が
                籠の中に閉じ込められて
                声を失っている



                ロボットの
                返事に
                慰めてもらう日々



                もはや
                鉄の手が
                万歳三唱か
                

              
                  

おいちゃん

2016-11-10 19:58:30 | 日記
                   おいちゃん


             おいちゃんは
             ハンサムで
             もてていたようで
             おいちゃんは
             若くして
             父親になって
             子供たちを引き取ったはいいが
             面倒を見ることができなくて
             子供たちは
             親戚のうちを渡り歩いて
             そのうちぐれてしまった



             そして
             おいちゃんによく似た息子は
             やせ細って
             先に逝ってしまった




             おいちゃんは
             バリバリの会社勤めを終えて
             いまは
             歩幅が数センチ
             背が曲がり
             ものがはっきり見えず
             太陽の下でのゴルフに行くこともなくなって
             体中あちこち痛くて
             湿布の匂い



             おいちゃん
             コーヒーを飲みに
             行こう
             あのころの家の近くに
             おいしいケーキのお店ができたよ