ひとり言 ひとつふたつ詩集

沖縄から詩をつぶやきます。

哀愁

2020-07-29 21:54:18 | 日記

                         哀愁



                    降り積もる時の雨に撃たれて
                    そこらじゅう穴だらけ
                    ぽつりぽつりの雨だれや
                    暴風雨に揺さぶられ

                    今にも倒れてしまいそうな
                    シロアリに食われてしまった柱
                    つたが絡まって
                    かろうじて立っているのか

                    かじまる
                    お前は長い間そこにいて
                    幹は太く
                    コケや
                    ひげが伸びたから
                    枝も重く
                    垂れ下がっている
                    重い体は
                    朝の軽やかな風に吹かれても
                    揺れもしない

                    年月は
                    とめようもなく
                    流れて
                    酸化させ
                    劣化を
                    促している

                    時間を
                    惜しみ
                    いとおしく
                    思っても
                    流れていってしまう

                    だから
                    写真に切り取り
                    そこに残したいと
                    あの時間が
                    そこにあったことを
                    証明するために

                    慣れないスピードの車で
                    あの場所へでかけているのだよ

                    もはや
                    太陽の熱で
                    吹き出る汗が
                    ぬぐえないから

                    何も思わず
                    白い砂利道をひたすら駆けていた
                    あのときにはもどれないから

ひととして

2020-07-27 17:06:28 | 日記
                            ひととして


                    いつのまにか
                    道を行く人たちが
                    みな 子どもにみえて
                    いつのまにか
                    大人になり
                    おとなというものは
                    懐深く
                    見習うべきもので
                    と
                    思っていたら
                    大人になったはずなのに
                    懐は浅く
                    心狭く
                    うろうろと
                    迷ってばかりで
                   
                    おぼれたと思って
                    ぶくぶくと
                    沈みかけては
                    あがいて
                    沈んだと思ったのは
                    ただの思い過ごしで
                    地面に足がついていることに
                    はっと気づいたり

                    神業が
                    自分はできるという
                    まぼろしの全能感は
                    そのぶくぶくのただなかで
                    わらをつかみ
                    息を吹き返そうとする
                    他人のせいにする
                    自分をきちんとわかっていない愚か者の
                    わざである
                    と思うのだよ

                    死にたいというのは
                    いいか 死にたいほどとても苦しくて・・・
                    ということなんだよ
                    と
                    どんな苦しい場面でもいっていた先生がいた
                    
                    ただひたすら聴いて寄り添おう 理解したいと
                    それを姿勢にしなさい、と。
                    単純に死にたいをうのみにして
                    殺せるか
                    他者を
                    自分でさえ

                    戦争のさなかに
                    暗い洞窟の看護婦は
                    何にも考えない頭で軍医の
                    言いつけを守って
                    青酸カリを傷病兵に注射した
                    が
                    軍医は
                    軍刀を抜いて
                    がまから走り出て
                    敵国のタンクに
                    突っ込んでいったと

                    その童顔で
                    お金を出すからといわれて
                    毒を盛るのは
                    SNSとやらの
                    今日的つるりとしたコミュニケーションツールで
                    進化した人間関係の結果か

                    自分で決めたからいいのだよ
                    って
                    いっていいものなのか

                    明日の有望な研修医が
                    当直明けの車の事故で
                    言葉も歩行も手指の動きもなくし
                    ベッドの上で
                    新婚の奥さんの手で体をさすってもらっている
                    姿をみて
                    死んだ方がいいなんて思えるか

                    10歳の子が人工呼吸器に繋がれ
                    呼吸を1日、1日積み重ね
                    家族に囲まれて
                    見えない聞こえない
                    誕生日のうたを歌ってもらっていることが
                    無駄だといえるのか

                    最後まで耳は残るから
                    いいことを話してね
                    といった先生を
                    わたしは信じる

                    いのちの灯は
                    誰にも消すことはできない

                    苦しみを
                    癒すような努力をサポートすることが
                    わたしたちの
                    やるべきことではないのか
                    

              
                    
                    
                    
                  
                    
                 
                   
                    
        
                    

カマキリの恩返し

2020-07-26 19:14:36 | 日記
                         カマキリの恩返し


                    さよならという言葉が
                    突き刺さるので
                    またね、といってみたり
                    ありがとうございました、が
                    突き放されたような
                    寂しい気持ちになるので
                    つねに現在形の進行形にしてみたり
                    ぎくしゃくと
                    不器用に
                    言葉を
                    さしだして
                    こう表現したほうがよかったのかな、と
                    もやもやと
                    曇った窓に
                    息を吹きかけて
                    ますます
                    曇らして
                    すっきりしない
                    雷音のある
                    曇り空の下

                    きょうは
                    緑色のカマキリが
                    頭の上にすがりついて
                    がさがさと
                    髪の毛を
                    毛づくろい

                    なんだかね
                    カマキリの恩返し

                    もやもやの曇り空の下
                    もう少し
                    言葉を
                    考えてみるよ

仮面ライダー カマキリ

2020-07-20 22:17:02 | 日記

                      仮面ライダー カマキリ

                    三角の眼は
                   ボンネットの上に乗り
                   前足を踏ん張って
                   前をジーッと見つめ
                   風に向かっていた

                   スピードを上げて
                   進む
                   車を怖がりもせず
                   
                   そして車は
                   ゆっくりと
                   建物に入っていく
                   暗い屋根の下で
                   とまった

                   飛び上がって
                   コンクリートに降りた
                   
                   自販機の陰に隠れようとしたとき
                   手が伸びてきて
                   とらわれてしまった

                   座席の横の
                   丸い穴に入れられ
                   「こっちで待っていて
                    一緒におうちに帰えるからね」

                   しばらくたって
                   カサコソとその穴を逃れて
                   姿を隠してしまった

                   夜をすごし
                   暑い昼が過ぎ
                   夕方
                   車が動いたら
                   ゆっくり姿をあらわし
                   窓にしがみついていた

                   家の近くの
                   コンビニでのこと
                   「よかった、駐車場じゃなくて、車の中にいたの
                    そのまま動くな
                    家の庭で降りるんだよ」

                   車が止まった
                   帽子が近づき
                   「これに入りなさい
                   入ったら
                   今度は降りるんだよ」

                   そっと帽子を地面に近づけるから
                   帽子の中から
                   草むらに
                   降りたら
                   声の主は
                   「よかった、よかった」
                   と
                   弾んでいる
                   
                   三角の眼の
                   仮面ライダー

                   車に乗って
                   那覇の街をドライブした
                   カマキリ 
                   
               
                   
                   

                  

ねこの毛玉

2020-07-19 14:36:47 | 日記
                       ねこの毛玉



                   その人を
                   見つめていたら
                   どこかで
                   見たような
                   だれかに似ているような

                   あ、そうだ
                   手塚治虫の
                   「どろろ」かもしれない
                   魔物のねずみ
                   ひげと
                   にやっと
                   「ひやり」とする
                   嗤い
                   
                   おおきな闇の住人のような
                   異界のヒトのような
                   ぬるりと

                   あ、そうだ
                   胸にぬるりと触れる

                   どうしてかな

                   異物を飲み込んで
                   げっと吐き出したいのに
                   つっかえて
                   でてこない

                   いやな感じ

                   いつもの
                   人間嫌いの症状が
                   しょうもない

                   むりやり
                   吐き出す
                   
                   ねこの
                   毛玉