ひとり言 ひとつふたつ詩集

沖縄から詩をつぶやきます。

慰霊の日に -はたちのかあさん-

2014-06-27 15:46:56 | 日記

                       はたちのかあさん-慰霊の日に-




                    かあさんの
                    70年は
                    はたちのままで
                    丸坊主の
                    男物の
                    軍服で
                    小禄と
                    摩文仁の間を
                    さ迷い歩き



                    煙と水蒸気に
                    気を失い
                    頭の傷あとは
                    消えなかった



                    ひとりを十分噛みしめ
                    ベッドに横たわっているときも
                    ひとりで
                    痛さと
                    動けない自分を耐えた


                  
                    かあさんの
                    はたちは
                    砲弾と
                    豪雨の中


                    小禄の山で
                    白くて
                    黒い
                    人の集団を
                    じっと見つめていた


                    私の知らない
                    写真の中の私に似た
                    はたちの
                    かあさん
                    
                    
                    

慰霊の日に

2014-06-27 15:18:14 | 日記

                      喜屋武岬-慰霊の日に-



                   雨は
                   7月まで降り
                   豪雨で
                   
                   道は
                   泥水で
                   逃げ惑う人の
                   腰まであったそうだ


                   もんぺの
                   少女は
                   月の
                   露も
                   なく


                   泥水の中をかき分け
                   かき分け
                   南に向かったそうだ


                   南に向かう途中の十字路で
                   兵士や住民の泥を吸った
                   膨れたお腹を
                   知らずに踏みながら
                   逃げたそうだ


                   もんぺの少女は
                   南の突端につき
                   押し寄せる
                   金髪の青い眼の兵士に
                   追いつめられ
                   疲れ果て泥にまみれた兵士に
                   壕を追われ

                   
                   
                   救われない思いの
                   泥だらけの
                   絣のもんぺの少女は
                   灰色の海に飛び込もうと


                   おかあさんと
                   言いながら


                   海の水の中ではなく
                   海岸の岩の波に
                   吸い込まれたそうだ



                   岬の花は
                   だから
                   白ではなく
                   赤い
                   花


                   仏桑花
                   
 


                  
                   
               

変調民謡

2014-06-21 11:11:34 | 日記

                       変調民謡



                  えいやーとっと
                  えいやーとっと


                  まつしまは
                  どこさいっただか
                  

                  
                  えいやーとっと
                  えいやーとっと



                  あいづばんだいさん
                  たからのやまは
                  だれがうばっただか



                  えいや
                  えーやさ


                  えいやとっと
                  えいやとっと


                  70年の年月は
                  その倍の
                  140年は
                  ぽかり
                  ぽかり
                  雲は変わらず


                  いや
                  いやさっさ


                  熱帯の雨降る
                  日本が沖縄になり

                  太平洋の中の
                  大きなヤモリになり


                  毎年毎年
                  しっぽ切って
                  いきてらー



                  ヤモリの目玉から
                  涙

                  
                  緑の体から
                  赤い
                  涙
                  

                  えいやーとっと
                  えいやーとっと


                  

いろはがるた

2014-06-11 16:01:07 | 日記
                           現代いろはがるた



                      あ
                      あっ、口を閉ざしているよ

                   
                      い
                      いいのかな、そんなので
                      やり過ごしていると
                      そのままあんたの思うままにしていいよ
                      ということにならないのか


                      う
                      うまく言えないけど
                      抗することが
                      できなくなるほどの強い圧力と
                      がんじがらめに
                      迫りくる
                      この重い空気



                      え
                      えらく自信のある
                      物言いは
                      どこからくるのか
                      大多数の白いマスクの塊が
                      自信を与え
                      金がありあまるほどの
                      黄金の虫たちが
                      もっともっと
                      と
                      フンコロガシに
                      群がっているのかな



                      お
                      おお
                      この世界が
                      モノクロの写真のなかに
                      もどってしまわないように
                      と
                      祈るだけでは
                      何もしていないのと同じことか
       
                      
                      

ぽつり

2014-06-03 09:02:07 | 日記

                           ぽつりひとり



                       母校の大学の庭で
                       待ち時間の隙間に
                       ぽつりひとり


                       学生が
                       お昼時の時間を
                       行きかう



                       眼をこすったよ
                      
                       中学生が通りすぎたかと思った
                       十数年の時間が
                       流れ去って
                       

                       庭の石も苔むし
                       がじゅまるは
                       枝を伸ばし
                       ひげが地面に届いている



                       母校の庭で
                       空を見上げ
                       空と雲が
                       変わらずにあること
                       
                       傲慢に叫び
                       走り回った
                       小さな痩せ細った
                       少女を
                       思った


                       時間が過ぎていかなければ
                       気づかないこともあるか
                       と
                       ゆっくり階段を下りながら
                       白い蝶々が
                       空と地面の間を
                       飛ぶ姿を見ていた


                       キャベツ畑が姿を消し
                       中古車が並ぶ
                       広場の見える
                       

                       母校の庭で
                       ぽつりひとり