ひとり言 ひとつふたつ詩集

沖縄から詩をつぶやきます。

まぬけ

2020-10-31 21:52:17 | 日記

                      まぬけ

                   ひととひとの間に
                   生まれ
                   ひととひとの間で
                   あやされたり
                   ぶつかったり
                   間をぬって
                   あるいたり
                   
                   手をとり合ったり
                   抱き合ったり
                   反発したり
                   ののしりあったり
                   
                   ひととひとの間で
                   どれだけの距離をとればいいのか
                   わからなくて
                   近づきすぎて
                   怒鳴られたり
                   つめをつきたてられて
                   血だらけにひっかかれたり

                   ひととひとの間で
                   どんな思いでこちらに向いているのか
                   わからなくて
                   ほほをひっぱたたいて
                   背を向けて走り去ったり

                   お互い様の
                   ひととひとの間
                   間合いもとれず
                   間が抜けて
                   
                   ひととひとの間に流れる
                   ともに同じ時間を生きているという
                   この感じがあやふやで

                   簡単に人間ていいななんていえなくて
                   ひととひとの間の距離は
                   時間と空間と
                   尽くした言葉の数々と
                   沈黙に耐えられるほどの
                   ひととひととの関係を構築する努力が決めるのではないか
                   と
                   にんげん嫌いと思っている
                   ひととひととの間を右往左往している
                   わたしという
                   まぬけ

                   
                   
                   

あさの小鳥

2020-10-29 22:25:30 | 日記
                       あさの小鳥


                   はじめまして
                   あたらしい朝のわたし
                   
                   薄明かりの夜には
                   あしたに踏み出すことがこわくて
                   あれやこれや思い悩み
                   はては
                   地球の果てで
                   穴が開き
                   そこから
                   ぼろぼろと
                   何もかもが零れ落ちるのではと
                   恐ろしく
                   あちこちに
                   邪悪な
                   皇帝が現れ
                   なつかしいふるさとの歌を
                   禁止するのではないかと
                   恐れ
                   地球のてっぺんに
                   稲光が落ちて
                   まっぷたつにわれ
                   まっくらくらになって
                   消滅
          
                   冷や汗をかいたとき

                   窓から朝の光
                   伸びをしたら

                   はて
                   何を考えていたっけ
                   きょうのやるべきことを
                   数えて

                   おはよう
                   あたらしいきょうの朝

                   小鳥がさえずった
                   
                   

ある写真展をみてー『2020 Album ”YES"』

2020-10-26 21:23:10 | 日記

                      ある写真展をみてー『2020 Album" YES"』ー

                   その写真の前で
                   うつむいた
                   とげが
                   刺さったよう
                   いたい

                   病院の廊下に
                   たたずむ
                   影を見つめた

                   点滴の数が
                   病の重さを
                   語っている

                   廊下を走り
                   夜明け前に
                   点滴を準備した
                   あの日々が
                   よみがえったから
                   いたかったのか

                   「YES」という
                   ひとは
                   病に向き合い
                   そして
                   人生というたびを振り返り
                   じぶんを
                   見つめ
                   すべてを受け入れたのだろうか

                   いたい
                   いたいのは
                   病院の廊下を
                   走りきることができなかった
                   「YES」と言えない自分が痛いのか
                   写真の影がいたかったのか

                   まだ
                   いたい
                   棘が突き刺さったまま
                   あの廊下が冷たく見えたのだが
                   「ちがうよ
                    病院に感謝しているんだよ」って
                   ギャラリーのオーナー

                   それぞれ

                   いたいのは自分

                   廊下を走っていた自分の痛さ
                   足りない痛さ
                   だ

                   積み重ねた
                   不十分さへの痛さ

                   誠実を尽くしたかどうか
                   の
                   迷いの痛さ

                   突き刺さったままの棘
       
                   
                   

てんぷらの効用

2020-10-17 20:07:50 | 日記
                     てんぷらの効用

                  あぶらかたぶら
                  
                  あっ
                  あぶらかたぶら
                  あぶらぎとぎと
                  お口の周りがてかてか
                  少しは滑ぜつがよくなるか

                  世の中がよくわからなくなり
                  なにがどうなっているのか

                  あぶらかたぶら
                  呪文をつぶやく
                  建前にしてもあからさまで
                  もう開き直って
                  建前なんか取っ払って
                  いう必要がないと
                  答えない
                  隠蔽
                  建前というより
                  戦前

                  世の中が
                  ひん曲がって
                  どこかへ流れ込んでいるんだろうな
                  と
                  苦しくなってくるから
                  呪文を唱えて
                  楽天的に
                  希望の灯を
                  つま先にともして
                  歩いてみる

                  白黒のフィイルムには
                  悲劇の歴史が
                  刻まれているが
                  前向きに学ぶという姿勢で見つめる
                  
                  ふらふらっと
                  バランスが
                  壊れそうになる
                  お腹に力をと
                  ばりばりっと
                  本をかじり
                  骨を作るのだ

                  支柱がか細く
                  今にも倒れそうなので
                  地球を感じるように
                  足を踏ん張り

                  あぶらかたぶら
                  あぶらかたぶら
                  と
                  
                  唱える
                  

                  
                  
                  
                  
                  

COVID-19のいる世界ー暗幕ー

2020-10-11 21:41:58 | 日記
                         COVID-19のいる世界ー暗幕ー
             

                     幕を指でそっと少しだけずらして
                     垣間見る
                     そして
                     誰も見てない隙に
                     そっと台本を書き換えて
                     主演者に渡すのだ
                     主演者はせりふの言い回しにはたぶん自信があるので
                     よくよく見なくても
                     演じきれると

                     台詞を言わなくても
                     腕を振り上げて
                     ポーズを大げさにしなくても
                     簡単に出来上がるさ、この一幕
                     と

                     台本は以前から準備を整え
                     不適な薄ら笑いで
                     聴衆は親しみやすい世間話が好きだから
                     台本のせりふなんかには関心がない
                     せりふが作られた経過にはますます関心がない
                     だから

                     不穏な空気は
                     COVID-19以上に蔓延しているはずなのに
                     
                     浮かれ
                     ぽんぽんちき
                     なんだかよくわからい間に
                     えらいこっちゃ えらいこっちゃ
                     と
 
                     むかしむかしの
                     消えかかった
                     モノクロームを取り出している