ひとり言 ひとつふたつ詩集

沖縄から詩をつぶやきます。

ゆうぞらはれて秋風のふく

2022-09-24 15:24:17 | 日記

                       ゆうぞらはれて秋風のふく


                    風が
                    幼い頃の
                    光景を一瞬運んできて消えた
                    
                    秋の始まりの風
                    ひかりがだんだんやわらかくなり
                    かぜがやさしくひたいをいきすぎた

                     運動会の
                     帰りの
                     夕方の風
                     もくまおうの葉を
                     揺らしている
                     すすきはまだあおい
                     まっくろな顔のわたし
                     母の笑顔

                     みんないた
                     元気でいた
                     
                     もう外に出ないよ
                     杖に頼っているから

                     そうだね
                     あの頃いなかった子どもたちが
                     もうおとなになり
                     運動会の準備をする
                     その子どもたちは
                     ありあまるものをもっていて
                     手渡したお土産には眼もくれない
                     大人びて     
                     ありがとう
                     とお礼を言うだけで

                     目新しいものは
                     ない

                     ものがあふれ
                     めずらしくもない

                    なにもなかったあの頃
                    破壊しつくされた瓦礫の上に
                    有り余るものが
                    乗っかって
                    過去がなかったものになっている

                    寂しい秋風の中に
                    昔のにおいがある
                     

                     
                     

9月の追悼文

2022-09-13 21:32:11 | 日記
                       9月の追悼文


                   真夏の風の中に
                   そっと
                   涼しい風が
                   入ってきた
                   ひとすじ

                   桜の葉が
                   朽ちて
                   はらはら
                   数えることができるほどの
                   少ない葉っぱ

                   だれにでも
                   なんにでも
                   限りがあるから

                   はらはら
                   9月の
                   夕方には
                   涙がおちてくる

                   部屋は
                   1年前のままで
                   風を
                   窓から
                   通して

                   ほら
                   もうすぐ秋が
                   やってくるよ

                   くるしかった夏がいき
                   永い眠りについた
                   秋
                   が
                   きたよ
                   
                   家の隅々に
                   生きてきた証と
                   まだ
                   鮮やかに
                   いきている
                   記憶が
                   のこっている

しろいかみよ

2022-09-08 09:55:13 | 日記

                       しろいかみよ


                    もぞもぞと
                    シロアリ

                    床を食いちぎり
                    台所の
                    母から受け継いだ流しを
                    ねぐらにして
                    あっちこち       
                    えさを探し
                    勢力拡大を
                    もくろんでいる

                    総毛だって
                    シロアリ駆除を
                    計画した
                    もともと
                    土の中にいるんだってさ
                    ということは
                    シロアリは先住民か

                      なんともいえない
                      脱力感
                      大きな柱
                      まがいものでも
                      この家の支柱に
                      食いつき
                      食い物にして
                      痩せ細らせ

                      食い尽くしたら
                      次のターゲットに移るのだろうか

                   シロアリ
                   とりあえずの駆除は済んだが
                   どこに潜んで
                   虎視眈々か
                   
    
                      あそこの土地や
                      向こうの土地も
                      狙いを定めたら

                      食える
                      とおもっているのだろうか

                      いつから
                      金目に目がくらむようになったのだろう
                    
                      猛獣に槍を突き立てて
                      食い物にしたときからか

                      かみよ
                      罪とはそういうことでしょうか

                      神よりもかみ
                      この現実をかみしめよ


                     
                      
                    
                    

黒ゴマ

2022-09-01 21:10:13 | 日記
                       黒ゴマ


                    石臼
                    がたがた
                    ぎしぎし
                    じゃりじゃり

                    硬く
                    ひっかかった
                    黒ゴマを
                    砕いている
                    みっともなく
                    まわりに
                    ゴマのくずを
                    巻き散らかし

                    案外
                    それ
                    素直に
                    自分を表現しているのかもしれない
                    納得いかない
                    収拾しがたい
                    始末のつかない
                    感情を
                    どうしていいのかわからず
                    そんなふうに
                    口角泡

                    あわわ
                    興奮しなさんな
                    といいたいところを
                    口を挟まず
                    褒めちぎる
                    私の方が
                    うそつきかもね
                    でも
                    ほめたのは
                    ほんとさ
                    そんなに熱っぽく
                    私は語れない
                    まあね
                    自分の感情を
                    整理して
                    ことばに
                    できない私の方が
                    よろしくないね

                    あたまのなかを
                    めぐって
                    口にたどりつくまでには
                    あっちですわりこみ
                    こっちでやすんで
                    雲散霧消

                    考えていたことはなんだっけ
                    何を思っていたっけ
                    で
                    うやむやにして
                    なかったことにする
                   
                    私の方が
                    悪質

                    胸の奥深く
                    黒ゴマがいっぱい
                    どころか
                    腹黒くなってきたのかもね

                    まだ黒くないか
                    かわいい
                    おへそのゴマぐらい

                    いやな世の中だ

                    石臼も
                    また
                    硬く
                    融通の利かない
                    真っ正直もの
                    生きづらく
                    がたがたと
                    重い体
                    ぎしぎし
                    と
                    不器用に歩いている