ひとり言 ひとつふたつ詩集

沖縄から詩をつぶやきます。

秋の昼間

2016-09-24 19:44:40 | 日記
                    秋の昼間



                雨の日に
                傘の中で
                雨粒を見ているとき



                曇り空の
                鉛色の雲に
                風の行方を見ようと目を凝らすとき




                晴れの日には
                青空を見上げて
                風の中に陽の香りを感じるとき



                  このまえ
                  人ごみの中で
                  ひとりなのに一人ではないと
                  ふと
                  思った


               
                  家族のなごりは
                  幼いころと
                  大人になって
                  濁ったお茶の底のような
                  ごちゃごちゃの
                  葉っぱの切れ端



                  どうしようもなく
                  言葉が
                  ひっこんで
                  喉に魚の小骨



                風がさらりと
                通り過ぎて
                木の葉が揺れている
                ひとりの昼下がりのコーヒーに



                ふいに
                隣のテーブルの
                知らないおばさんが声をかけてきた
                「ごめんね、うるさいでしょう。
                 合唱サークルの帰りにランチに来たら
                 こっちって服まで置いてあるからさ。
                 コーデイネーターになって、いろいろいっているさ。」




                わかっていた      
                空っぽの心を案じて
                現実に戻してくれた


              
                はじめて
                おしゃべりという救いを知ったとき
                

                空は時々仰いで
                隣の花子さんに話しかけてみるのがいいかもしれない
                と思った
 

                秋の昼間
                                    
            
               



                
                

前夜の前に

2016-09-19 16:40:46 | 日記

                    前夜の前に



               原色のネオンの点滅
               狂瀾のテーブル
               


               ぽとりと
               落下する
               腐乱の果肉に群がる
               こばえたち


               

               温帯に
               大型台風が連続して
               吹き
               海風が
               川水を噴き上げて
               陸地に
               溢れている



 
               前夜
               破壊の



               踊り呆けている間に
               地下に空洞
               地上に跋扈する
               紺色の制服
               


               と
               ひげダンス
               


               ひげを
               剃り落して
               間抜けなその顔を
               暴いてやれ


              
               前夜を
               夜明けのその前に
               変えてしまえ
               
            
               
              
               
 
               

よりめ

2016-09-12 21:19:30 | 日記

                              よりめ


                故郷の小学校の細い道を
                歩いていた
                泣きながら
                あんちゃんの後をついて
                んーめーがなくなったとき




                あんちゃんも不器用で一途で
                言葉を選ぶことに苦労して
                ものが言えなんだ



                私も不器用で一途で
                ひとつのことを考えたら
                それだけしか頭に浮かばず
                眼がよってきて
                空の向こうを見てしまうんだ




                言葉を尽くそうとすると
                風の中に消えて行って
                ただただ
                ためいきをついて
                もうすでに
                数十年の歳月が過ぎているにもかかわらず
                足踏みをして
                


                小学校の細道を歩いていたときの
                んーめーの死というものがどういう意味なのかわからない
                子供のまま
                

堪忍袋

2016-09-11 22:53:36 | 日記

                     堪忍袋


               渦巻いた空気が
               静止したとき
               



               破れていた袋が
               繕われ




               袋の
               尾っぽは
               切れて
               空に飛ぶ
               




               つりさげられた
               破壊の道具は
               ぶーん
               ぶーんと
               宙ぶらりん




               たるんだ神経が
               重さで
               ほどけて
               切れていく



               ぶらりぶらりと
               ぶらさがり
               たかる
               制服は
               無表情を決め込んでいながら
               針のむしろ


 
               筵は
               一揆の旗
               乾き
               餓え
               



               叫ぶ
               青いむしろ