ひとり言 ひとつふたつ詩集

沖縄から詩をつぶやきます。

いのち

2018-07-29 20:07:47 | 日記

                        いのち

             

                 生産するって
                 産み出すこと?
                 形あるものを
                 差し出すってこと?




                   病院でね
                   個室に10歳の男の子が
                   入院していた
                   その子はね
                   脳腫瘍でね
                   だんだん座ることも
                   ご飯を食べることもできなくなっていって




                   人工呼吸器で
                   生きていた
                   生きていたというのは
                   この子の手ひらから汗が出て
                   垢になって
                   手のひらを洗うと
                   ぽろぽろと
                   垢がとれるんだ



                  
                   その子のベッドの周りには
                   おかあさんとおとうさんがいて指を握ったり
                   妹や弟たちは駆け回っていた



                   クリスマスや誕生日にも
                   ケーキがあって




                   ある日
                   その子の部屋のドアを
                   あけたら
                   気配がないんだ
                   生きている気配
                   翌日
                   その子のベッドは空で
                   誰もいなかった



                その子は何も形あるものは生み出さなかったよ
                その子のお尻に傷ができないように
                時間ごとに
                横向きにしていた



                夜勤のお仕事といえばそうだけど
                この子がいるということが
                家族にとって大事だったし
                少なくとも
                看護師だった
                わたしには
                いろいろなことを教えてくれた
                先生だったんだ




                命あるものは
                それだけで
                価値ある奇跡だって思うんだ
                   

     

                


400年の雨

2018-07-27 20:02:26 | 日記

                  400年の雨



                400年の
                雨が
                降り
                積もり
                泥の岩盤



                いまも
                降り続き
                その泥道
                くじけることも
                くじけても
                奮い立ち
                歩き続け
                泥に
                足をとられないように
                踏みしめて
                歩いている


                
                時にジグザグ
                時に座り込み
                雨に向かい
                拳を
                声を
                揚げ


              
                ここにある
                と
                叫ぶ


              
                400年
                の
                声は
                そこらじゅうに
                あふれ
                絶えることはない


         
                雨に撃たれ
                しみこんでいるから
                体中の細胞に

                 

異常きしょう

2018-07-23 21:09:30 | 日記
                  異常きしょう



               坂を下りたら
               その珈琲屋に着く
               様変わりした坂の道



               おばさんやおばーがいない
               唐辛子やすくガラスのビンもない
               軒先でしりしりパパイヤやもやしをビニルの
               袋につめる姿も消えた



               お土産の袋と耳慣れない言葉が行きかう
               タックスフリーの看板
               この坂は
               暮らしの糧が
               外国の銭



               珈琲屋で
               冷しぜんざいを食べている
               異国の家族
               躊躇していた足に
               自動ドアが反応し
               開いた
               隅っこで珈琲をすすっているうちに
               異国人がいなくなって


               
               珈琲屋の
               ご主人が
               テーブルに一人座ると
               次々と埋まっていく
               不思議なんです
               そしてね
               一人が店を出ると
               次々と出て行くんです
               と



               店にお客さんがいっぱいだと
               入りたくないんだけど
               最近
               いなければいないで
               さびしくなる
               って

               

               ぽたぽたの
               汗吹き出す
               猛暑の夏に
               ひと恋しい
               異常きしょう


               
               
 



          
               
               
           




                
                               
                

             

回帰

2018-07-21 12:30:02 | 日記
                    
                    回帰


               「えー・・・」

               このごろは
               にーちゃんにさえ
               ぞんざいなことばをかけ


               むかしむかし
               の
               雑誌に
               頭をそろえてみいっていたころに
               ふいにもどる



               ねこずきの
               おかっぱ頭は
               雑誌が積み上げられた
               物置で
               ねこをだいたまま
               ねこをならそうと
               ひきこもっていた



                 せがのびて
                 頭の神経細胞とホルモンが
                 増えていくと
                 とたんに
                 世界と隔絶して
                 自分の世界に
                 閉じこもって
                 でることができなくなった


                
                 細胞は
                 にゅうと
                 ほんとはね
                 地球からしみでた
                 水の一部なんだよ
                 ってさ


                 つつるんつるんの
                 脳の中で
                 ささやいている

           
               にーちゃんさ
               全うすることが
               生きている証を創ること
               なのかな


               右脳がさ
               わさわさと
               ざわめきはじめて
               指がさ
               かってに
               うごくんだよね


              
               これさ
               すり
               ではなくてさ
               

               
               ひとり言やら
               絵が
               つるつるっと
               すべりはじめるんだよね
               
 

あっちっち

2018-07-15 21:45:01 | 日記

                   あっちっち 
                   



                あっち
                あっちっち
                あっちっち

                あっち
                こっち


                なべ底で
                あっちっち
                あしもと
                地団駄



                焼き焦げて
                おこげ
                真っ黒
                炭素化
                ぼろぼろ


                ぼろぼろ
                の
                こころ
                ぽろぽろ
                と
                はげおちて


                素っ裸の
                むき出しの
                

                つるりと
                とびだした
                本音
                という
                隠しようもない


                世界が
                あっちっちと
                蟹股で
                右往左往の
                迷走を始めている



                あなおそろしや