ひとり言 ひとつふたつ詩集

沖縄から詩をつぶやきます。

幻視

2018-01-31 22:04:11 | 日記
                   幻視




                走る
                山を越えて
                たって
                小高い丘
                平たい島に
                車溢れて
                路地を
                走る




                路地の奥で
                行き止まり
                息も詰めて
                


                街は
                表
                裏では
                ごそごそと
                50円のもやしを
                むさぼっている



                華やかなりし
                街中は
                ものめずらしの
                異国人
                

                
                ごったにの
                エスニック飯を
                喰らう
                生活臭のない
                生活の糧


                
                もうすでに
                腐りかけた缶詰
                膨らんで
                はちきれて


                滅びるのか
                

毒キノコ

2018-01-28 20:37:28 | 日記
                  毒キノコ



                毒キノコは
                毒であることを知ってか知らずか
                胞子を巻き散らかし




                白く霞み
                じわじわと
                辺りを覆い




                地球の裏側まで
                偏西風に乗って
                毒キノコ



                昔の毒キノコが
                にょきっと
                顔をだし
                


                きみの悪い
                にこにこと
                薄ら笑い



                3分の2
                の
                2分の1


                毒キノコは
                小さな集団でにょき
                大きな顔で


                あたりを
                いい人顔で
                恫喝している


                オレンジに
                黒色まる
                私も毒ですの印
                
         

砂時計

2018-01-15 22:26:08 | 日記

                  砂時計



               消えたんだ


               隣の家のおじさん
               ついこの間まで庭の木を手入れしていた
               


               夕方
               そこの家の娘さんが近づいてきて
               体調崩して
               あっという間でした
               見つかった病気を治すのに頑張ったんだけど半年ももたずに
               今日は通りを車を止めるために使わしてもらいますので
               と
               涙ぐんでいる




               母が消えた時がよぎって
               うつむいた



               命が
               消えていく
               から
               命を
               意識しない間は
               この世界をもがいても
               いつくしんでいかなければならない
               


               毒キノコを見つめ
               嘴を突き出す鶏には
               嘴をかわしながら
               餌をまき



               生き難くなっていく
               世界をじっと
               かみしめながら
               時には闘いながら
               味わうか



               そうか
               消えるものなのだ
               

               時間が砂時計の中に
               一粒つつ
               降りていく
               


          
               


               

2018-01-08 22:35:11 | 日記
                      



                  バスが
                  コザの街のある停留所に
                  止まった


                  バスの中には
                  青い目の男が数人


                 
                  母は
                  歯医者で治療中の歯を
                  むき出して見せた
                  前歯は欠けていた


         
                  いつも控えめで
                  声をあらげたこともない
                  母が
                  ない歯をむき出した



                  コザの街は
                  異国の街
                  故郷に帰る途中
                  フェンスと
                  英語の看板
                  に囲まれて



                  母の後ろに隠れて
                  見ていた
                  窓の中の
                  その青い目は
                  嗤った


               
                  母の
                  眼は
                  わらわない


                 
                  憎悪
                  


                  初めて見た
                  振り上げないこぶし


                
                  雨の中でフェンスを
                  大勢で取り囲んだ日に
                  ずぶぬれで帰った
                  私に
                  家の代表で
                  行ってきたか
                  と
                  ほめた
                  母


                  歯なしの
                  刃
              
              



                                                     

天地無用

2018-01-04 21:54:16 | 日記
                    天地無用



               12を繰り返し
               新しい12月に向かう
               


               去って行った12を
               懐かしく思いながら
               降り積もる
               砂時計の粒



               朝の光が
               時間の粒子の
               しろい霧



               未知を恐れ
               新しい時間に
               期待しながら
               手探りの毎日


               
               毎日が
               ずっとずっと続くと疑わない
               おろかな
               無自覚な自分が
               1月の姿



               そうやって
               浸食されていく日常を
               母の時代は体験している



               鉄の暴風の時代

    
               ほころびは突然だから
               壊れ物の
               天地無用