ひとり言 ひとつふたつ詩集

沖縄から詩をつぶやきます。

疲れた野菜

2019-05-31 22:39:22 | 日記
                 疲れた野菜  



              その路地は
              こぎれいで
              タイルが敷き詰められて
              雑草もない



              向こうから
              年を重ねた
              女の人が来るから
              ここってどこ?
              わけのわからないことをきいてしまった


              こちらを振り向いた
              顔
              前歯がかけて
              紅が唇からはみでて
              目が
              ぎらっと
              こちらを
              睨み付けた


              人通りの少ない
              昼下がりの
              路地

              
              ピンクに近い赤がわら
              卑猥な
              屋根


              路地は
              白に
              隠れた
              貧困


              売店の棚に
              野菜がしなびている
              
              
              
              
     

100年人生

2019-05-26 21:57:34 | 日記

                 100年人生


              つるかめ
              つるかめ


              つるは千年
              亀は万年


              おめでたい


              ヒトは
              100年に延長したって
              60は洟垂れ小僧で
              働け
              働け
              だってさ
              喰ってけない
              年金というものがあったはずなのに
              預けたはずが
              預けたところで
              使い込まれちゃってさ
              離れの奥座敷で
              高級食材のなべを囲まれちゃってさ
              そのうえ
              この膨らんだお財布から
              抜き取られて
              博打しやがって
              離れの奥座敷は
              誰も近づけない


              ははあ
              ありがたく承ります
              お代官様
              感謝しこそすれ
              物申すなんて
              とんでもないことでごじゃります
              お代官様
              


              つるは寒い雪の中で細い足1本で立ち続け
              亀は重い甲羅を背負い地面を這い


              つるは千年立ち
              亀は甲羅を万年背負い


              ヒトはどこに立ち
              何を背負い
              どこで踏ん張るのか


              絶望の中でも希望をもちながら
              どこに向かうのか
              
              

半・ぎょ!人

2019-05-23 17:23:30 | 日記


                 半・ぎょ!人


              ぬるぬる
              ぬるり
              気味が悪い
              闇夜で動き回るから
              見えないけれど



              つるつる
              つるり
              音もなく
              近づき
              聞き耳をたて
              いなくなる



              目の前に
              躍り出て
              いきなり
              とがったつめを出して
              襲い掛かろうとする
              かまきりかゾンビか
              ファイティングポーズは
              釜もちの手



              あそこにも
              ここにも
              怪獣がいて
              目を覆ってしまう



              しかたないから
              あら、おじゃましたね
              お近づきには
              なれない
              えらいかたがた
              恐れて
              ひれ伏して
              すみません、すみません
             「むる、わんがわっさいびーたん
              (すべて、わたしがわるーございました」
             「けっ!説明不足と明文化しない頭の悪さよー」
              と
              わたし


             顔が笑っているから
             いい人ぶって
             ひっひっひ
             わたしの中には
             冷たく観察し
             腑分けしようとする


             悪魔がいるんです
             
     
             人の形をした
             半・ぎょ!人を面白がっている

             
              

心配の種

2019-05-19 13:01:46 | 日記

                     心配の種



               おしつぶされて
               こなごなに
               こわれたこころを
               とりもどそうとして


               北へ
               北へ


               もうないふるさとを
               さがしあるいて
               いまはいない
               半ズボンの
               傷だらけのひざの
               少年たちを
               さがしもとめて


               描いた未来を
               失い
               今を病んで
               過去に帰ろうと
               あがいている
               

               それは
               きっと
               生きなおすための
               傷を
               治すくすり
               と思いたい
               
               
               そのくすりが
               正しく
               偽ものではないように
               なにかをたくらんでいる
               わなではないように


               過去が
               かすんで
               読みづらくなった
               妹は
               余計な心配をしている

               
               ただの心配であればいい
               
               
               

危惧

2019-05-15 21:12:38 | 日記

                 危惧



               ゆがんだ空
               青空が暗い
 

               光はまばゆいはずだが
               霞の中で
               向こうにある


               信じることができない
               初夏は
               冬の始まりで


               捻じ曲がった熱風が
               顔を焼き
               溶けて
               ただれて
               たれている

              
               来ないはずの未来が
               やってきたのだが
               暗い空から
               灰色の土砂降りの雨が降り


               涙さえ乾いて
               ぼろぼろと
               砂粒


               引き継がない
               物語が
               延々と語られ
               

               くるくると巻かれていく
               歴史の巻物
               


               過ちのお重