巣窟日誌

お仕事と研究と私的出来事

ゲーベンクリームは悪くない

2013-08-31 23:13:20 | 美容と健康
Geben_cream

↑ 噂のゲーベンクリーム。50g。当初はこれを5日間で使い果たした。

ある朝、右脚の太ももに熱湯をかけてしまった。総面積は、はがき2枚半大になろうかという熱傷。しかも熱湯がかかった範囲はいびつで、リアス式海岸のよう。

初期対応としてはほぼ完ぺき。熱い!と感じた瞬間、すぐに風呂場へ行き、患部にシャワーで水を流し続ける。すでに最初の2分ほどで、もっともひどいところに水ぶくれができ始めたのがわかる。ここまでくると自力でどうにかすることはできない。飲み薬としての抗生物質も必要になろう。

Burn_day1

↑ やけどから約1時間半後。この水泡のある部分に直接熱湯がかかり、その後熱湯は右側(外側)に垂れた。この後、いったんは見た目がどんどんひどくなる。

皮膚科の医者に見せるころには、特大の水泡が2か所。「本当にこれから、仕事に行くつもりですか?」「これは長くかかりますよ」「やけどは危ないですからね」状態。
「ああ、この水泡は、こんなに大きくなっていますから、すぐに破れてしまいますねぇ。今破ってしまいますか?」
「お願いします」
というわけで、先生は針で2か所の水泡を破り、塗り薬を塗って、皮膚との接する面が銀色のパッドでやけどを覆って、テープと包帯で固定した。

そして、皮膚科で塗ってもらったのと同じ塗り薬と飲み薬(抗生物質)をもらって、昼前に出社。あらかじめ、「やけどで医者へ行くので遅刻する」と連絡ずみだったので、何人かが浸潤療法かどうかを聞いてくる。

最近広く知られるところとなった浸潤療法に、興味津々らしい。残念。今回は昔からの消毒なんだよ。

ところが昼休みに、医者で塗られ処方もされた塗り薬「ゲーベンクリーム」をネットで検索すると、何やら検索結果の最初のほうに恐ろしげな情報がいろいいろと出てくる。いわく、治りが遅くなるとか、やけどをさらに悪化させるとか。ゲーベンクリームを塗っていたら、永遠に治らないだとか。そしてその理由はゲーベンクリームの抗菌作用が諸悪の根源とのこと。

さあ、どうする?

こういう時のわたしは、乳がんのときもそうだったのだが、妙に燃える。知らないことを知りたいという欲望が、ムラムラとわいてくる。いかん。好奇心が抑えられん。もしかしたら、ネットで書かれているように、ゲーベンクリームはいけないものかもしれないが、それにしても、それにしても…

ここは、悪しき噂のあるこのゲーベンクリームの真実を、自分の身をもって確かめる千載一遇のチャンスではないか。

そうひらき直ったわたしは、医者の指示に100%完璧に従った手当をすることに決めた。

医者が指示した点は次の4つ。

  1. ゲーベンクリームを塗ったところを、毎日必ずきれいに洗うこと。

  2. その際、水泡が破れて皮がむけてきたところがあったら、自分で皮をむいてしまうこと。

  3. 洗って清潔になった皮膚に、新しくゲーベンクリームを毎日必ず塗り直すこと。

  4. ゲーベンクリームとともに使用するのは、傷につきにくいタイプの滅菌パッドにすること。


1については、流水だけではなく、やけどが落ち着いてきたら、石鹸の泡をつけて洗うようにとも言われた。最初は水でもしみたけれど、とにかく洗い流した。指示通り患部にかるく手も使った。数日後から患部への石鹸使用も開始。これも最初は石鹸の泡がピリピリした。

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↑ 4日目。次々に水泡ができてはつぶれたころ。ここは当初はそれほどひどくはないと思っていた場所(熱湯が直接あたった個所ではなく、直接あたった熱湯が皮膚表面を流れた個所)だったが、水泡ができた。


2については、「後生大事に、皮をそのままにしておく人がいるけれど、これだと薬が皮膚に届かないからね。」と言われた。というわけで、水泡が自然に破れたところを中心に皮をむいてしまった。でも調子にのって7日目にかなり盛大にむいたらわたしの皮膚は下の写真のような赤あかむけに。

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↑ 8日め。4日めの写真とほぼ同じ個所。赤むけ。一部残っている皮は、日焼けの後のように黒ずんでいる。

その赤むけ状態の皮膚にも、3と4の指示通り、ゲーベンクリームをこんもりと(2~3 mm厚)塗った滅菌パッドを、ぺったりと貼りつけた。さすがに赤むけにはゲーベンクリームがピリピリしみた。思えばその時が一番痛かったかな。耐えられないほどではなかったけれど。

やけどの状態についていえば、当初は水泡ができなかった部分も、翌日や翌々日に水泡ができ、しかも次々とそれが破れ、数日間は熱傷の箇所がベタベタだった。立っていると足首に液が垂れてくるほど。

さて、一部の人たちの切によれば、こんなことをすれば、永遠に治らないか、治りがすごく遅くなるはずだ。が、そうはならなかった。実は、着々と解放に向かっていった。

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↑ 21日目。1枚目の写真とほぼ同じ個所。最初に熱湯を浴びたところが、最後まで残る。医者の指示によりゲーベンクリームの使用は最後まで残った個所のみになる。

何故か?

おそらく鍵は、先生の指示の4番目にある、傷につきにくいタイプの滅菌パッドだ。

思うに、ゲーベンクリーム反対派の人たちが訴える症状は、多くの場合、ゲーベンクリームのせいではなくて、その時に使用しているガーゼのせいではないかと思う。

ガーゼは浸出液とゲーベンクリームの水分を吸ったあとに、乾いてくる。すると、ガーゼが皮膚に貼りついてしまう。それを剥がすときに痛みが生じるのだろう。が、わたしは傷につきにくいタイプのパッドを使用していたので、熱傷面にパッドが貼りつかず、剥がす際に痛みを感じることは全くなかった。

そういえば先生は、市販の滅菌パッドの現物をわたしにみせて、「これはすぐそこのドラッグストアにも売っています。こういうものを使ってください。」と言った。ここが重要だったのだ。1回につきLサイズの滅菌パッド3枚が必要なわたしにとって、滅菌パッドの購入は(加えて痒くなりにくいテープの購入は)結構な出費になったが、わたしは律儀にそれを守った。

だからここで言おう。ゲーベンクリームは悪くない。多くの症例において、悪いのは多分、一緒に使ったガーゼのほうだ。

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↑ 28日目。その後、さらに良い状態に。ゲーベンクリームは一部にのみ使用中。