巣窟日誌

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「イージス艦」と「目出し帽」

2008-02-23 19:24:20 | 英語
すぐにピンと来た人もいると思うけれど、この2つの一見まったくことなるものの共通項は

「デストロイヤー("destroyer")」

である。

「目出し帽」は、昔は「デストロイヤー・マスク」といわれていた。その昔、目出し帽をかぶって「ザ・デストロイヤー」のリングネームで活躍した、米国人のプロレスラーがいたからだ。

「目出し帽」がデストロイヤー・マスクと呼ばれなくなった理由は、「ある特定の人間の名をそのまま使って、ものの名前を一般化することはまずいんじゃ…」ってことを、マスコミあたりが考えたからだという話を聞いたことがあるが、真実は知らない。

さて、イージス艦は「駆逐艦 (destroyer)」の一種なので、英語では "Aegis destroyer" と呼ばれる。日本は建前では軍隊を持っていないことになっており、そこで「駆逐艦」じゃまずいと思って、わざわざ「イージス『護衛艦』」と呼ぼういうことになったのだろうかと勘ぐってしまう。

ただし、英語ではあくまでもイージス艦は "destroyer"、つまり「破壊者(物)」だ。というわけで、デイリー読売のような日本の新聞でさえ、英字新聞になると自衛隊のイージス艦を "destroyer" と記述せざるを得ない。

ときに、政府による日本語訳を使った物事のすり替えセンスは抜群だ。たとえば、"deregulation" とは本来は「規制を取り除くこと」だ。それを「規制緩和」、つまり「規制を緩めること」とした。「規制緩和」は一昔前の日米貿易摩擦でよく取り上げられた話題だが、政府間交渉で "deregulation" を論じるとき、米国側は「撤廃すること」を、日本側は「緩和すること」を念頭に話していたのだろうな。

ところでかつて、「陸上自衛隊」「海上自衛隊」「航空自衛隊」をとっさに、"Army" "Navy" "Air Force" と訳してわたしをぎょっとさせた友人がいたが、いくら一般人相手のボランティア通訳でも、これはまずかった。日本には軍隊は存在しないことに、表向きはなっているからだ。せっかく日本語の名称のつけ方(と、その英訳名称)でコトをぼかそうとしていたのに、わざわざ本質をついてしまうとは。

一応 "Self-Defense Force" にして、頭にそれぞれ"Ground" "Maritime" "Air" をつけないと(さらに正式にはその前に "Japan" をつけないと)、へんなところで使った場合には、下手をすると国際問題になりますわ。たとえデストロイヤーを持っていたとしてもね。