
友人の強い薦めもあり、『バーレスク』を吉祥寺のバウスシアターで見てきました。
(1)吉祥寺のバウスシアターの一番小さな劇場(座席数50)で上映されたためもあって、ほぼ満席の状況でした。クマネズミが見た前の回は、出入り口の扉の前で数えてみましたら、約50人の観客の中で男性は8名ほどで、女性の割合が圧倒的でした。それで上映直前に周りを見回したところ、男性の数はやや増えていたものの、相変わらず女性客ばかりです。『プラシャス』などと違って、それほど女性向きとは思えない映画の内容ですから、不思議な現象だなと思っているところです。
というのも、確かに、主役のアリが次第に自己を実現していく様子が描かれており、それを支えるのも女支配人テスですし、主人公が活躍する舞台に登場するのはすべて女性ダンサーといったところから、女性映画と言えるのかもしれません。
ですが、この映画が取り上げているバーレスクは、ストリップと誤解されるくらいセクシーなダンスショーであり、むしろ男性が面白がるものなのではないでしょうか?
そんなことはともかく、主役アリを演じるクリスティーナ・アギレラの素晴らしい歌と踊りに圧倒されました。田舎から突然大都会に出てきた小娘という設定にもかかわらず、バーレスク・ラウンジの支配人テスの前で、その場で言われたバーンスタインの曲を見事に踊ってしまうなんて考えられないところであり(注1)、またマイクが使えなくなって即興で歌い出す歌(“Tough Lover”)の素晴らしさも、まさにファンタジックなのですが、そんなことは全く気にもなりません。
なにしろ、全世界で3,000万枚ものCDを売り上げているアギレラが8曲も歌っているのですから!

ストーリー自体は実に単純でありきたりながら、このアギレラと、支配人テスを演じるシェール、それに舞台監督ショーンのスタンリー・トゥッチによって、稀に見る素晴らしい音楽映画に仕上がっています(注2)。
シェールは、1946年生まれの64歳ながら(アギレラは昨年末で30歳)、超ハイレグ姿でバーレスクラウンジのオープニングショーで歌って踊り、また経営がおもわしくなくなってこのラウンジを譲らざるを得なくなった段階で、実に底力のある歌を披露します。
こんな姿を見ると、昨年末の29日にNTVで放映された番組『1億人の大質問!?笑ってコラえて!』で、「プロが選ぶプロの振付家」として紹介された名倉加代子氏が連想されるところです。というのも、彼女は1940年生まれの70歳ながら、まだ現役のダンサーでもありかつ振付師でもあるのです!

また、スタンリー・トゥッチは、『ジュリー&ジュリア』でメリル・ストリープ演ずるジュリア・チャイルドの夫(外交官)を演じていましたが、表で活躍する女性たちを裏から支える役柄にうってつけといえそうです(こんな印象を与えるのは、『プラダを着た悪魔』〔2007年〕で、主人公の女編集長ミランダ〔メリル・ストリープ〕の右腕のファッション・ディレクターを見事に演じていることからくるのかもしれません)。

(注1)このサイトの記事によれば、クラシックのレナード・バーンスタインではなく、映画音楽の巨匠エルマー・バーンスタインとのこと。
(注2)台詞は歌われませんから、純然たるミュージカルとはいえないかもしれませんが、やはりミュージカルの一つでしょう。歌が物語の展開と別建てになっていればミュージカルといえないでしょうが、この映画の場合、アギレラが映画のために作曲した曲が3つも入っていることもあり、音楽は物語の展開の沿ったものだと考えられます。
(2)この作品は、アイオワの田舎からロサンジェルスという都会へ少女が出てきて成功するという物語ですから、先に見たウディ・アレン監督の 『人生万歳!』と似た面を持っています。
むろん、『人生万歳!』はミュージカルではありませんし、そこに登場するメロディは、ちょっと単純すぎる感じながら、それでもメロディは、イケメンの青年俳優をゲットしますし、メロディの母親は芸術写真家として華々しく活躍するようになるのです!
他方アリは、これだけ歌唱力があり、これだけ踊れもし、かつバーレスクラウンジの空中権を売却することまで思いつく経営の才があるのですから、その内にテスの後を襲ってここの経営者になって、テス以上に大活躍することでしょう(なにしろ、テスの下では、またぞろ大借金地獄に陥ることは、火を見るより明らかでしょうから!)。
なお、空中権は、日本では「建物の容積率のうち、未利用容積率分を移転する権利」とされるようですが、米国あたりではもっと広く認められているようです(詳しくは、このサイトの記事を参照してください)。
現に、バーレスクラウンジの前に建てられたマンション所有者がテスから買い取った空中権は、そのマンションの容積率を拡大するためのものではなく、単に当該マンションの眺望を妨げるものを排除するためのものなのですから。
(3)渡まち子氏は、「めきめき頭角を現してスターになっていくサクセス・ストーリーのプロセスはとんとん拍子だし、それにからむラブロマンスやクラブ買収の危機なども、あくまでも軽いテイスト。それでも、全米一のトップシンガーになったりはせず、クラブのスターになって脚光を浴びるという程度に抑える“慎ましさ”が好ましい」、「何より物語が安直な分、シェールとクリスティーナ・アギレラという新旧のグラミー賞受賞歌手が魅せる、圧倒的な歌とダンスが活きた」として50点を付けています。
ただ、直前に見た『きみがくれた未来』が65点だったことと比べて、この50点は低すぎる評価のように思えます。
★★★★☆
象のロケット:バーレスク
(1)吉祥寺のバウスシアターの一番小さな劇場(座席数50)で上映されたためもあって、ほぼ満席の状況でした。クマネズミが見た前の回は、出入り口の扉の前で数えてみましたら、約50人の観客の中で男性は8名ほどで、女性の割合が圧倒的でした。それで上映直前に周りを見回したところ、男性の数はやや増えていたものの、相変わらず女性客ばかりです。『プラシャス』などと違って、それほど女性向きとは思えない映画の内容ですから、不思議な現象だなと思っているところです。
というのも、確かに、主役のアリが次第に自己を実現していく様子が描かれており、それを支えるのも女支配人テスですし、主人公が活躍する舞台に登場するのはすべて女性ダンサーといったところから、女性映画と言えるのかもしれません。
ですが、この映画が取り上げているバーレスクは、ストリップと誤解されるくらいセクシーなダンスショーであり、むしろ男性が面白がるものなのではないでしょうか?
そんなことはともかく、主役アリを演じるクリスティーナ・アギレラの素晴らしい歌と踊りに圧倒されました。田舎から突然大都会に出てきた小娘という設定にもかかわらず、バーレスク・ラウンジの支配人テスの前で、その場で言われたバーンスタインの曲を見事に踊ってしまうなんて考えられないところであり(注1)、またマイクが使えなくなって即興で歌い出す歌(“Tough Lover”)の素晴らしさも、まさにファンタジックなのですが、そんなことは全く気にもなりません。
なにしろ、全世界で3,000万枚ものCDを売り上げているアギレラが8曲も歌っているのですから!

ストーリー自体は実に単純でありきたりながら、このアギレラと、支配人テスを演じるシェール、それに舞台監督ショーンのスタンリー・トゥッチによって、稀に見る素晴らしい音楽映画に仕上がっています(注2)。
シェールは、1946年生まれの64歳ながら(アギレラは昨年末で30歳)、超ハイレグ姿でバーレスクラウンジのオープニングショーで歌って踊り、また経営がおもわしくなくなってこのラウンジを譲らざるを得なくなった段階で、実に底力のある歌を披露します。
こんな姿を見ると、昨年末の29日にNTVで放映された番組『1億人の大質問!?笑ってコラえて!』で、「プロが選ぶプロの振付家」として紹介された名倉加代子氏が連想されるところです。というのも、彼女は1940年生まれの70歳ながら、まだ現役のダンサーでもありかつ振付師でもあるのです!

また、スタンリー・トゥッチは、『ジュリー&ジュリア』でメリル・ストリープ演ずるジュリア・チャイルドの夫(外交官)を演じていましたが、表で活躍する女性たちを裏から支える役柄にうってつけといえそうです(こんな印象を与えるのは、『プラダを着た悪魔』〔2007年〕で、主人公の女編集長ミランダ〔メリル・ストリープ〕の右腕のファッション・ディレクターを見事に演じていることからくるのかもしれません)。

(注1)このサイトの記事によれば、クラシックのレナード・バーンスタインではなく、映画音楽の巨匠エルマー・バーンスタインとのこと。
(注2)台詞は歌われませんから、純然たるミュージカルとはいえないかもしれませんが、やはりミュージカルの一つでしょう。歌が物語の展開と別建てになっていればミュージカルといえないでしょうが、この映画の場合、アギレラが映画のために作曲した曲が3つも入っていることもあり、音楽は物語の展開の沿ったものだと考えられます。
(2)この作品は、アイオワの田舎からロサンジェルスという都会へ少女が出てきて成功するという物語ですから、先に見たウディ・アレン監督の 『人生万歳!』と似た面を持っています。
むろん、『人生万歳!』はミュージカルではありませんし、そこに登場するメロディは、ちょっと単純すぎる感じながら、それでもメロディは、イケメンの青年俳優をゲットしますし、メロディの母親は芸術写真家として華々しく活躍するようになるのです!
他方アリは、これだけ歌唱力があり、これだけ踊れもし、かつバーレスクラウンジの空中権を売却することまで思いつく経営の才があるのですから、その内にテスの後を襲ってここの経営者になって、テス以上に大活躍することでしょう(なにしろ、テスの下では、またぞろ大借金地獄に陥ることは、火を見るより明らかでしょうから!)。
なお、空中権は、日本では「建物の容積率のうち、未利用容積率分を移転する権利」とされるようですが、米国あたりではもっと広く認められているようです(詳しくは、このサイトの記事を参照してください)。
現に、バーレスクラウンジの前に建てられたマンション所有者がテスから買い取った空中権は、そのマンションの容積率を拡大するためのものではなく、単に当該マンションの眺望を妨げるものを排除するためのものなのですから。
(3)渡まち子氏は、「めきめき頭角を現してスターになっていくサクセス・ストーリーのプロセスはとんとん拍子だし、それにからむラブロマンスやクラブ買収の危機なども、あくまでも軽いテイスト。それでも、全米一のトップシンガーになったりはせず、クラブのスターになって脚光を浴びるという程度に抑える“慎ましさ”が好ましい」、「何より物語が安直な分、シェールとクリスティーナ・アギレラという新旧のグラミー賞受賞歌手が魅せる、圧倒的な歌とダンスが活きた」として50点を付けています。
ただ、直前に見た『きみがくれた未来』が65点だったことと比べて、この50点は低すぎる評価のように思えます。
★★★★☆
象のロケット:バーレスク
テス(シェール)に重ねてみました。
ホンモノであることは、若さにもつながるのですね。
空中権のお話は、漠然とはわかったものの
こうして説明していただけて有難いです。
トラバを送らせて下さい。
たまたま、この映画が日本で封切りされ、かつ観賞した2010.12/18はアギレラの30歳の誕生日であったとのことで、たいへん魅力的に演じています。彼女の名前は前から知っていても、曲はまったく知らずにいたので、新鮮な驚きでした。
この映画ではシェールが大きな役割を果たしますが、シェールが1946年生まれで御歳64歳とのことで、また吃驚。映画中で、3つほど彼女が唱いますが、実に素晴らしい歌唱で、最後の曲がもっとも印象的でした。彼女が、「ソニー&シェール」でデビューした時から、「悲しきジプシー」などいくつかの大ヒット曲はかなり知っていても、最近の曲は知らなかった事情にあります。実のところ、オールディズ愛好者としては、ストーリーとは関係がなくとも(ストーリーを多少壊してでも)、彼女の持ち歌を1つくらい聴きたいところでした。
ちなみに、別れたご亭主のソニー・ボノは、その後、共和党の連邦議会上院議員をやり、著作権の延長法の成立に尽力した後に、スキー場で事故死したとのことです。そして、シェールのほうは、いま世界で最もお金持ちの歌手とのことです。
アギレラやシェールのことを知らなくとも、その歌唱力に圧倒され、映画を楽しく見ることが出来ました。
また二人に関する興味深い情報を提供していただき、誠にありがとうございます。
あなたみたいな人って「ヘルタースケルター」も男性向けって書くんでしょうね。
ですが、
「女性とオカマが喜ぶ映画」=「客が女性中心」でしょうから、LADY GAMAさんの言明は、ある意味で同義反復ではないでしょうか?
問題は、どういう点から「女性とオカマが喜ぶ映画」なのかということではないでしょうか?
その点については、拙エントリで、主役のアリを「支えるのも女支配人テスですし、主人公が活躍する舞台に登場するのはすべて女性ダンサーといったところから、女性映画と言える」と書いているところですが?
なお、「「ヘルタースケルター」も男性向け」との点ですが、LADY GAMAさんに言われずとも、つとに、斉藤環氏が、「断言しよう。蜷川実花の新作『ヘルタースケルター』は「女の、女による、女のための映画」だ」と述べていることを知っているのですが(『ユリイカ』7月号P.90)?
検索結果で再発見したものだから。
支配人が女である必要も、ダンサーが全員女である必要もないのよ。
男と野心にギラギラした女が出ているミュージカルは女かオカマしか喜ばないのよ。
あんたが観に行ったのが不思議なくらいよ。
「ヘルタースケルター」も似たようなもので、斉藤ゴニョゴニョがクソ雑誌でどや書きしないでも、見るからに女とオカマが喜ぶ映画なの。
あんたは映画と本とブラジルが好きアピールしてインテリぶってる割に見聞が浅いんじゃないの?
正直見てて滑稽な記事よ。
おっしゃるように、「女とオカマ」のことがわからないクマネズミの「見聞が浅い」ことは言を俟ちませんし、きっと「滑稽な記事」なのでしょう。でも、それがクマネズミなのですから、それでいくほかに仕方がないと思っているのですが。