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映画を見た後にネタバレOKで映画を、展覧会を見たら絵画を、など様々のことについて気楽に話しましょう。

ジュリー&ジュリア

2009年12月30日 | 洋画(09年)
 「ジュリー&ジュリア」を、日比谷のシャンテ・シネで見ました。

 今年もメリル・ストリープの映画を2本見て一層のファンとなったところ(「マンマ・ミーア!」と「ダウト」)、本作品が今年最後の公開というのですから見に行かずにはおれません〔来年2月には『恋するベーカリー』の日本公開が控えているというのですから凄いことです!〕。

 そして、本作品もなかなかうまく仕上げられているなと感心いたしました。
 もちろん、2つの原作をいとも巧みに一つの作品にまとめあげた監督・製作・脚本のノーラ・エフロンの並々ならぬ手腕によるところが大きいわけですが、またメリル・ストリープの素晴らしさも大きく寄与しているものと思います。なにしろ、彼女は、身長が10cmほど低く、声もずっと低いなど相当違った個性である実在の料理家ジュリア・チャイルドを実に上手に演じているのですから!

 それだけでなく、もう一人の主役と言えるエイミー・アダムスも、典型的な現代女性であるジュリー・パウエルを巧みに演じています。彼女の映画も今年は2本見たところ、メリル・ストリープと共演した「ダウト」もよかったと思いますが、「サンシャイン・クリーニング」は出色の出来でした。

 この映画で面白いなと思った点は、次のようなことです。
・ジュリア・チャイルドの生涯と、ジュリー・パウエルの1年間の暮らしとは、まとまりのある一つの映画作品であるにもかかわらず、全く別々のものとして描かれ、ジュリアが作ったフランス料理のレシピでしかつながっていないとされているのです〔ただ、ジュリーは、ジュリアが自分のことに不満を抱いているということを知るのですが、それはあくまでも人づてに聞いたこととされ、二人はついに会うことはありませんでした〕。
・といっても、ジュリアの夫は、マッカーシーの赤狩り旋風のなかで尋問を受ける羽目になり、またジュリーは、9.11事件の事後処理に従事する公務員だということで、どちらもその時の政治状況から無縁の存在ではありません。
 政治状況などは、こうした雰囲気の映画であればカットされてしまうのが普通でしょうから、その意味でこの映画は骨のある映画だと言えるかも知れません。
・また、ジュリアは、普及し始めたTVの料理番組の草分け的存在であり、他方ジュリーも、ブログという最新のメディアを使って自分のポジションを確保しようとします。いわば両者とも、新しい流れに乗っていると言えるでしょう。
・他方で、ジュリアの夫は外交官という古くからの固い職業に就いており、またジュリーの夫も、考古学雑誌の編集に携わっていて、時流とは離れた所にいます。

 というように、様々な視点から2人の女性、2つの家族を比べてみるのも面白いかな、と思ったりしています。

 評論家諸氏の受けも概して良さそうです。
 福本次郎氏は、「作り手の人生観が込められた究極のラブレターに、心まで満腹になった」として、この人にしては稀有なことに80点もの高得点を与え、また、渡まち子氏も、「ストリープが個性豊かな名演技とすれば、ジュリーを演じるエイミー・アダムスの良さは自然体。二人の対比が効いている」などとして75点をつけているところ、前田有一氏は、「脚本はこなれているとは言えず、快感度は低い」ものの、「二人の素敵な女優と彼の食いっぷりで、映画全体としてもなんとか持ったという感じ」で60点しか与えていません。
 前田氏は、「いちいち無理してヒロインを上げたり下げたりする必要はない」と述べたり、「毎日あんなに大量の料理を作って、いったいこの人はどう処理してるんだとか、資金はどっから出てるんだとか、余計な事を考えさせてしまうあたりも処理が足りない」と言っているところ、そんなつまらないことが気になるのであれば、要するにこの映画の楽しさに乗り切れなかっただけのことではないでしょうか?


象のロケット:ジュリー&ジュリア


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5 コメント

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はじめまして! (ryoko)
2009-12-30 11:14:07
TBありがとうございました。
ブログ諸氏評もあまり良くないようですが、私は好きな映画です。
本出版という目標に向かって時代の異なる二人の無名の女性が頑張る姿、支える夫の優しさ、そこに夫々の時代の社会背景も盛り込むことで甘いテイストにピリっと胡椒を利かせ、楽しかったです。
アメリカでは、ジュリアは誰もが知る有名料理か、ジュリーもブログで一躍脚光を浴びた時の人という背景があるけれど、日本ではほとんど知られていないという違いが、いま一つ日本で当たらなかった原因じゃあないでしょうか?
私も「恋するベーカリー」を楽しみに待つ一人です。
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謹賀新年 (シネマDVD・映画情報館 by JIN)
2010-01-01 20:32:54
明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願い致します。
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ジュリーに口づけ (フレンチ・ビーフ)
2010-01-03 23:51:38
  歳末前日の水曜日にTOHOシネマズシャンテに行きましたら、その日は女性デイであったようで、満席であったため、翌日出直して、ほんとうの歳末に映画を観ました。私には珍しい体験でした。

  それはさておき、「美味しい料理をいい雰囲気で食べると、楽しい」というごく単純なことが、この映画を観ても実感します。映画も総じて楽しいものでした。ジュリーを演じるエイミー・アダムスも可愛い女性をうまく表現しています。そして、ジュリーの行動は行き詰まり気味の人に元気を与えてくれそうです。だから、年の最後に楽しい映画を観て、ハッピーな気分で年を締めることができました。トータルで高い評価をします。

  ただ、五十歳ほど年齢差のある二人の女性が最後まで交叉しないことは、残念です。それが実話であったとしても、映画の物語では、両者の暖かいふれあいがどこかであってもよいのではないかと感じます。それどころか、真偽不明ですが、ジュリーの行動を知ってジュリアが不快感を表したという話がジュリーの耳に入ることです。この辺での微妙な感覚を感じるのは、私だけではなさそうです。
  ジュリアは自分が利用されたと感じて、そういう言動をしたのかも知れませんが、これが本当だとしたら、狭量ですね。ジュリアは総じてなんでも一生懸命すぎて、面白くありません。苦労しながらも、フランス料理を初めて英語でアメリカに紹介して、この道の成功者になったのですから、ジュリーの行動のなかに安易さを感じて、共感を感じなかったのでしょうか。
  ジュリーは結局、ジュリアの受け取り方についての真相が確認できません。それでも、心のつながりをもちたいと思って行動するわけですから、健気ですね。だから、どこか最後で、実際になにかがつながったと思わせるような点があれば、観客はホーッとするのではないでしょうか。
  それでも、ジュリーは最後までやり遂げ、夫・友人など周りの人々にも受け入れられ祝福されて、ついには小説家として歩む道も開けます。それでも、ジュリアとのつながりがあれば、さらに力を与えるという気がします。

  もう一つ、ジュリーの夫も、ジュリアの夫も、もう少しおいしそうに、それぞれの奥さまの作った料理を食べてもよさそうに、私には感じました。料理作りはたとえ目標でも、やはり「わたし、食べる人」ありたいものです。せめて、どの料理が最もおいしかったよと言わせてもよいように思います。
  多少不満感を記しましたが、最初に言いましたように、総じて楽しい映画です。そして、エイミー・アダムスの気持ちと行動の可愛さがこの映画を盛りあげています。ジュリアのほうも、可愛さを夫ばかりではなく、他の人々にも振りまいたら、と思ったら、満腹になりすぎでしょうか。料理も映画も、それぞれに楽しさを感じたいものです。
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お礼 (クマネズミ)
2010-01-04 21:36:27
 「フレンチ・ビーフ」さん、お正月早々のコメントをありがとうございます。
 おっしゃるように、二人の女性の間で「実際になにかがつながったと思わせるような点があれば、観客はホーッとするのではない」か、という点はまったくその通りだと思います。
 ただ、実話に基づくとされていますから、実際にそのような出会いはなかったのでしょうし、仮にあったとしたら、話がうまく出来すぎているのではという感じを逆に観客は懐いてしまうのかも知れませんが。
 いずれにしても、今年もよろしくお願いいたします。
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おいしい男は ハゲ チビ メガネのメリ子 (zebra)
2015-04-11 20:53:27
うわっ、 でっけえメリ子(←メリル・ストリープ)
しかも、夫役は 「プラダを着た悪魔」で共演したトチ夫(←スタンリー・トゥッチ)。

 ノミの夫婦という珍しい役柄だわ

そんなハゲでチビでメガネのトチ夫とイチャつくとは そんだけ仲がいいんでしょうな~  旦那と度々ベッドでイチャつき、
今にも裸で絡み合いそうなメリ子に「脱が んといて。見たくないし!」と、心で呼びかけておりました。

演技面でも そのことを裏付けてますよ。 料理なだけに うまく溶け合ってんですよ~ 野菜の具のトチ夫と スープのメリ子の二人が!

 じっくり コトコト煮込んだ コンソメスープみたいにネッ(←ホメてます)

おまけにジュリアの妹はリチ子(←ジェーン・リンチ)ですよ!リ・チ・子! 
彼女も姉さんに負けず劣らず でっけえ~(>・<) きっと親の遺伝子なんでしょう。血は争えないッス

もうひとりの主役はアダ美(←エイミー・アダムス)。
「ダウト」で共演しても 50年の隔たりを設定してるからメリ子といっしょの場面はない。


環境保護のテレフォンサービスの苦情受付係りで ストレスたまりまくりのウンザリ日々のアダ美・・・

そんなある日 ジュリアの料理本を見て心機一転!一年間で彼女のレシピをすべて作ってブログで記載すると闘志を燃やしたよ~

まるで、しがない無名ボクサーだったロッキー・バルボアがチャンピオンのアポロから指名された時みたいに(アメリカンドリームのチャァ~ンス)

しっかし、やってみたはいいが ロブスターにてこずるアダ美をみかねて手を貸してくれる恋人。
やっぱ、料理も愛の力だね。

なのに彼の気持ちを考えずにないがしろにするアダ美に ギクシャクムード
チッ、チッ、チッъ(ー・ー)ダメだぜえ アダ美!そんなこっちゃあ~

彼に謝るアダ美に恋人も機嫌を直して 料理再開のアダ美・・・ ラスト 見事達成した時の合言葉は”ボナペティ”

料理は”おいしい男”もいて 完成できるもんですって~
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