映画的・絵画的・音楽的

映画を見た後にネタバレOKで映画を、展覧会を見たら絵画を、など様々のことについて気楽に話しましょう。

平岡正明

2009年07月19日 | 
 評論家の平岡正明氏が、先月9日に68歳で亡くなりました。  

 ジャズ評論から出発しながらも、歌謡曲・浪曲・新内~落語~映画などなど実に幅広い分野にわたり、鋭利な評論活動を展開してきました。  

 読書の達人・松岡正剛氏は、彼について、「何の主題を書いても読者をスウィングさせられる」「秘芸の持ち主」だと喝破しているところ(『千夜千冊』の第771夜)、むしろ何を書いても“革命の精神”に裏打ちされていると言えるかもしれません。

 例えば、29歳で出版した『地獄系』(芳賀書店、1970)には、「革命家の資質をひとことでのべれば、ひとたび自分の興味をとらまえた主題について、だれがするよりも徹底的に考察することだ」などと、自身を「革命家」と捉まえています。  

 そうして、生前最後の著書の『昭和マンガ家伝説』〔平凡社新書、2009.3;〕の中では、長編漫画『虹色のトロツキー』(安彦良和著:中公文庫コミック)を取り上げています。  この漫画は、ロシア革命の立役者の一人であるトロツキーを満州に招聘する謀略「トロツキー計画」を軸に、日蒙混血の青年ウムボルトを主人公として描いているところ、平岡氏は、トロツキーの「永久革命論と石原莞爾の最終戦争論を比較することを俺はやったのだが、両者が満州で交叉するという想像力はなかった」、「まことに複雑、雄大な構図の巨編漫画」であり、「奔放な妄想による世界革命論ではないか」と絶賛しています。  

 なお、主人公のウムボルトはノモンハン事変(1939年)で斃れますが、7月5日の読売新聞書評でも取り上げられた田中克彦著『ノモンハン戦争』(岩波新書)を読んだばかりなこともあって、この漫画のことを思い出し、それがまた平岡氏の著書でも取り上げられているので驚いた次第です(注)。  

 (注)『千夜千冊』の第430夜でも、この漫画が取り上げられ、冒頭から「どうやってこの傑作の興奮を案内しようかとおもっている」と書かれています。


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