映画的・絵画的・音楽的

映画を見た後にネタバレOKで映画を、展覧会を見たら絵画を、など様々のことについて気楽に話しましょう。

女の子ものがたり(漫画)

2009年09月23日 | 
 前日のブログで、映画「女の子ものがたり」に感動したと書きましたが、そうなると自ずと原作の漫画の方にも手を伸ばしたくなってしまいます。
 そこで書店に行ってみますと、映画と同じタイトルの原作本は、なんとハードカバーのオールカラーで、900円もの豪華本なのです!ですが、かまわず購入して読んでみました。

 すると、この漫画と映画のストーリーとがかなり違っていることが判明します。
 
 何よりも、原作には、深津絵里の女性漫画家とか雑誌の編集者などは登場しないのです。
 映画の方は、女性漫画家の“死と再生”の大人の物語であって、子ども時代の話はその転換の契機となっているのに対して、漫画の方はあくまでも子ども時代の話をその時の視点から描いています。

 ですから、映画の主人公が“きいちゃん”のお母さんから彼女の本当の気持ちを聞く場面―主人公が“再生”の糸口をつかむことになるシーン―とか、親友だった3人の取っ組み合いの喧嘩の場面―“きいちゃん”から「あんたなんかきらいだ」といわれて主人公は街を離れます―などの感動的なシーンは、原作にはありません。

 これらは、女性漫画家の立ち直りをより鮮明にするために、映画化するにあたって付け加えられたり書き換えられたりしたエピソードと言えるでしょう。
 この漫画を映画化するに際して、脚本・監督の森岡利行氏等のアイデアがかなり入り込んでいるもの思われ、映画と原作とは全くの別物という事情がここでも再確認されます。

 そうした違いはあるものの、原作で描かれている子ども時代の出来事のかなりのものが、映画に組み込まれています。中でも印象的なのは、クラスメイトに虐められている“みさちゃん”と“きいちゃん”を救ってくれた友達について、「わたしね/あんたのこと/だいっきらい/みさちゃんも/きいちゃんも/きらいだけど/あんたのことが/いちばん/きらい」と思ってしまうことでしょうか。

 ただ、いうまでもありませんが、映画で取り上げられなかったエピソードや画面にも、捨てがたいものがたくさんあります。
 たとえば、「(厳しい状況におかれたときは)自分の影をみてあてっこするといい。うすむらさきのにわとりとおおきなおたまじゃくしがみえる」として描かれている画面(第2話)とか、お墓の納骨堂を覗いて、「まっ暗でみえない中は/お母さんの三面鏡を少しあけてのぞいた時と同じで/なんにもないのにいろんなものがみえ」たりすること(第6話)、一人で退屈していると“なっちゃん”の体の中に入ってくる「にゅうにゅうさん」のお話(第9話)など。

 こうしてみますと、映画は映画としてなかなか良くできた作品と思われますし、また漫画の方も漫画として非常に優れた出来栄えとなっていると思われます。


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