孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  結婚・出産に関する価値観の変化 横行する代理出産の“闇ビジネス”も

2024-10-09 22:16:40 | 中国

(病院のベッドで眠る新生児=2月、中国甘粛省蘭州市【10月9日 共同】)

【結婚と出産の奨励に躍起になる当局】
中国では1人の女性が生涯に産む子どもの平均的な人数を示す「合計特殊出生率」が2022年に1.09に下がったと報じられています。少子化・人口減少が大問題となっている日本の同数値が1.30(2021年)ですから、中国の深刻な状況がわかります。

出生数の基盤になる婚姻件数も減少傾向にあること、当局は離婚を難しくしようとしていることなどは、8月25日ブログ“中国  止まらない人口減少・婚姻数減少 当局は離婚申請厳格化も 背景に若者の就労環境の悪化”でも取り上げました。

中国当局は結婚と出産の奨励に躍起になっています。

****中国衛生当局、「適齢」での結婚・出産を奨励へ****
中国の国家衛生健康委員会(NHC)は、少子化が進み、人口減少に歯止めがかからない中、「適切な年齢」での結婚と出産を奨励することに注力する。中国共産党系メディアの環球時報が12日、NHCの高官の話として伝えた。

NHCは若者を「結婚、出産、家族に対する前向きな視点」に導くため、子育ての分担も呼びかける。NHC高官は、それが「結婚と出産を巡る新しい文化」を育むのに役立つとの見方を示した。

中国の法律では、男性は22歳以降、女性は20歳以降でなければ結婚できない。

中国では2023年に人口が2年連続で減少し、出生数が記録的な低水準に落ち込んだため、政府はより多くの女性に出産を奨励している。

多くの女性は、高い育児費用や、結婚したくない、キャリアを中断したくないなどの理由から、子どもを持たないことを選択している。伝統的な社会では、女性はいまだに育児や介護の主な担い手と見なされ、男女差別が蔓延している。

公式データによると、今年上半期の婚姻件数は13年以来の最低水準に落ち込んだ。

中国の人口減少の主な原因は1980年から2015年にかけて実施された一人っ子政策と高額な教育費だ。【9月13日 ロイター】
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【結婚・出産に関する価値観の変化】
こうした少子化の背景には、高額な教育費や高い失業率に見られる現在の若者の経済的苦境などももちろんありますが、そもそも結婚や出産に関する価値観が大きく変わってきていることも重要な要素です。

****「子どもをひとりで育てる経済的余裕があるなら、夫はなぜ必要?」婚姻数が1980年以降“最低”の中国 結婚しない道を選んだ女性たちの本音****
今年、建国75年を迎えた中国。もっとも変わったのは、女性の生き方かもしれません。
「結婚はしたくないけど子どもは欲しい」。
自ら進んでシングルマザーの道を選んだ女性たちを取材しました。

結婚しないのは「男性に対する失望感」
北京市内で暮らすナナさん(仮名)。デザイナーをしながら7歳の長女を育てています。父親にあたる男性とは、あえて結婚しませんでした。

ナナさん(仮名・30代)
「結婚しないのはまだ人生を一緒に過ごしたいと思う相手が見つかっていないからかもしれません。経済的に自立した女性が増え、男性に対する失望感もあり、結婚せずに子どもを育てる女性はこれから増えていくでしょう」
「男性に対する失望感」。

いったいどんなことなんでしょう? 
ナナさん(仮名・30代)  
「育児に関わらない父親は私の周りにもたくさんいます。もし、家事を手伝ったり、子どもの面倒を見てくれないのであれば、(夫の存在は)もう一人手のかかる子どもがいるようなもので、それならば結婚しても意味がないと思うのです。私は自分の子どもをひとりで育てる経済的余裕がある。ひとりでできるならなぜ夫が必要なのか、と思うのです」

長らく女性は早く結婚し、後継ぎの男の子を産むことや夫の両親の面倒を見ることなどが求められていました。しかし今、その家族観に変化が起きています。

中国メディアによりますと今年の婚姻数は1980年以降、最低となる見通しです。

なぜ中国の若者は結婚しないのか?子育てにかかる費用が高いことに加え女性の高学歴化とともに、経済的に自立し、自由な生き方を選ぶ女性が増えていることが背景にあるとみられます。

ナナさん(仮名・30代)
「以前は女性は子どもを育て、義理の両親に孝行しなくてはならないと考えられていました。25歳を過ぎて独身だと、親や近所の人から『あの子は結婚できないのかしら』という視線を浴び、プレッシャーをうけたでしょう。しかし今の若者は個人主義的で、自由を追求したいのです」

代理出産で双子の母に…37歳女性の選択
ユエさんは結婚せず、代理出産で子どもを持つ、という道を選びました。

ユエさん(仮名・37)     
「37歳の今になるまで、子どもが欲しいかどうかわからなかったんです。でも歳をとると(子育てが)難しくなるかもしれない。それと、妊娠している間、自分のできることが制限されてしまうかもしれない。そのストレスを考えたら代理出産の方が楽だと思ったのです。あと、子どもを持つこととパートナーを持つことは別だと考えているのもありますね」

代理出産にかかった費用はおよそ2000万円。しかし、キャリアを犠牲にすることもなく、支払った金額に見合う幸せを得たといいます。

ユエさん(仮名・37)
「昔は女性は経済的に自立していませんでしたから、男性に依存せざるを得ませんでした。しかし今は男性より稼ぐ女性もいますので男性に依存する必要もないし、結婚しないという選択肢も選べるようになったのです」

ある調査では、結婚の予定はないと答えた女性は44%に上るといいます(中国共青団調査・2021年)。

ユエさんの祖父母はお見合い結婚。両親は恋愛結婚。しかし今は女性が多様な生き方を選べる、新たな時代になったと考えています。

ユエさん(仮名・37)
「私たちの世代は結婚するのかしないのか、どんな人生を送りたいのかを自分で選ぶのであって「どうすべきか」ではない。これが一番大きな変化だと思います。私たちの時代は、より自己実現が追求できるようになったと思います」

今回取材に応じてくれた2人の女性。いずれも匿名での取材になりました。まだまだ自由な生き方を公言するのがはばかられるのもまた現実です。

女性たちの変化は、今後中国をどのように変えていくのでしょうか。【10月9日 TBS NEWS DIG】
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【代理出産の“闇ビジネス”】
価値観の変化はともかく、“代理出産にかかった費用はおよそ2000万円”・・・これだけのカネが動く、しかも規制が厳しいとなると、闇ビジネスも生まれます。

****中国、代理出産の業者調査 闇ビジネスが横行****
中国山東省青島市のバイオ企業が国内法令で禁じられている代理出産をひそかにビジネスとして展開し、不正に利益を上げていた疑惑を中国メディアが報じた。地元当局は9日までに調査に乗り出した。

子ども1人当たりの出産費用は75万元(約1500万円)で、20万元上乗せすれば性別を選べたという。

中国では少子高齢化が加速する一方で、不妊に悩む夫婦や富裕層を相手に代理出産の闇ビジネスが横行している。高額な収入を目当てに代理母になる若い女性も多いとされ、倫理上の問題に加え、女性の搾取につながるとの批判もある。

バイオ企業は青島市内の産婦人科医らと結託して代理出産ビジネスを展開。子どもの戸籍登録に必要な出生証明は約5万元で販売していたとされ、地元当局は8月下旬に調査チームの結成を発表した。

中国保健当局は2001年に「生殖技術の安全を守る」ことを目的とした管理規定を施行し、医療機関が代理出産を手がけることを禁じた。報道によると、違反した医療機関やその関係者は罰金などの処罰を受けるが、代理母や依頼者は刑事責任を問われない。【10月9日 共同】
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「管理規則」では「配偶子、受精卵、胎の売買は、いかなる形式であれ禁止する。 医療機関および医療従事者は、あらゆる形式での代理出産技術も実施してはならない」と規定されています。


しかし、需要があるところには・・・ということで“闇ビジネス”が生じますが、“闇”であるかぎり、安全性や契約面で様々な問題も生じます。

中国だけでなく日本も少子化の現実は同じであり、また、価値観の変化も同様です。
国内での“闇”が難しければ、規制が緩い海外での代理出産ということも。

「結婚も夫もいらない、でも子供は欲しい」といった価値観の変化、あるいは同性婚の増加といった現実の変化を踏まえて、従来の価値観に引きずられるのではなく、改めて、何が許されるのか、何が許されないのか、一から検討する必要があるように思えます。
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