孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

タイ  王室権威に依った秩序維持に努める軍事政権 高齢国王のもとで現実問題となる王位継承

2015-12-11 22:32:43 | 東南アジア

(2010年1月 タイ・チェンライを旅行したとき市内「ワット・ミンムアン」に飾ってあった皇太子夫妻の肖像 きれいな女性だね・・・と見とれたのですが。離婚した今はもう飾ってないでしょう。)

軍事政権下で「不敬罪」による訴追が急増
タイのプミポン国王(正式にはラーマ9世)は国民から深く慕われていますが、最近は健康がすぐれず、現在も入院中でその様態が心配されています。

****<タイ>入院中プミポン国王88歳 世界最長在位69年****
タイのプミポン国王が5日、88歳の誕生日を迎え、多くの国民が国王のシンボルカラーである黄色いシャツを着て祝った。首都バンコクの王宮前広場では同日夜、政府関係者らによる祝賀行事もあった。

ただ、国王は入院中で、恒例としてきた国民演説はなかった。国王は昨年も入院中で、誕生日式典の出席を取りやめている。

プミポン国王は在位69年で、現役君主として世界最長。国民から敬愛され、長くタイの発展と安定を支えてきた。しかし近年は入退院を繰り返し、9月1日を最後に公の場に姿を見せていない。

11日には、ワチラロンコン皇太子らが市街地を自転車で行進する大規模な祝賀イベントが予定されている。【12月5日 毎日】
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タイは周知のようにタクシン派と反タクシン派の抗争が解消しないなかで、軍事クーデターによる軍が権力を掌握し、憲法改正などの民政復帰準備作業を進めています。

国内が分断された状態で、国王が非常に強い影響力を有していること、また、軍政が王室を頂点とする既存のタイ社会の秩序を重視していることから、プミポン国王の様態、万一の場合の王位継承問題は、政治も絡んでくる問題ともなっています。

そういう事情で、タイにあっては国王に関する事柄は極めて重要な問題でもある訳ですが、一方で、国王・王室を話題とすることは不敬罪に問われかねない微妙な問題でもあり、この種の問題がメディア等で議論されることはありません。

特に最近は、軍事政権は不敬罪の積極的適用によって、社会秩序維持に努めているようにも見えます。
こういう動きこそが、王室権威の政治利用にも思えるのですが、タイ社会にあってはそういうことは口にはできません。戦前日本にも似たところがあります。

口にすると、たとえアメリカ大使であっても不敬罪に問われかねません。

****不敬容疑で米大使を捜査=王党派が告発―タイ警察****
タイ国家警察は9日、不敬罪に関するデービース駐タイ米大使の発言をめぐり、王室を中傷した不敬容疑で捜査を始めたことを明らかにした。

デービース氏は11月、バンコクの外国特派員協会で「不敬罪で民間人がタイの軍事裁判所から長期かつ前例のない禁錮刑を言い渡されていることを懸念している」と発言。これに王党派が米大使館前で抗議デモを行うなど猛反発していた。【12月9日 時事】 
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****タイ国王の加工写真に「いいね」の男、不敬容疑で逮捕****
タイの軍事政権は10日、フェイスブックで国王の加工写真に「いいね」を押したとして、タイ人の男性を逮捕したと発表した。タイでは、軍事政権下で「不敬罪」による訴追が急増している。(中略)

君主制の擁護者を自認する軍部が昨年権力を掌握して以来、タイでは不敬罪での訴追が急増している。また、有罪判決件数もここ数か月、記録的な数に上って いる。

有罪が言い渡されている人の大半は政権に批判的な人々だが、他にも、不透明な汚職取り締まりで摘発された政府高官らも含まれている。【12月10日 AFP】
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私も、先月タイを旅行してきたばかりですが、今後もタイには行く機会も多いと思いますので、あまりブログに王室関連のことは書かないほうがいいかな・・・なんて思ったりもしますが、まあ、タイ警察関係者が私のブログを読むこともありませんから・・・・。

皇太子妃親族の汚職事件、そして離婚 揺れる王室
王室問題にメディアが関与できないにもかかわらず、昨年末に皇太子妃親族が汚職事件で逮捕されるという“王室スキャンダル”が表面化しました。

****<タイ>警察、内部汚職摘発・・・・王室巻き込む醜聞****
タイ警察が、内部のグループによる大型汚職事件の摘発を進めている。ワチラロンコン皇太子(62)の妻シーラット妃(42)の叔父で、重大事件を捜査する「中央捜査局」のポンパット前長官(58)が逮捕され、王室を巻き込んだ異例のスキャンダルとなっている。

警察は先月から前長官や民間人など計19人を収賄や王室に対する不敬の容疑などで次々と逮捕。前長官は多くの実績を誇る大物警察高官として知られていた。捜査は継続中で、容疑者はさらに増える見込みだ。

前長官らのグループは、石油密輸や違法カジノを巡り業者から賄賂を受け取ったほか、昇進を求める部下に金を要求した疑いが持たれている。関係先の捜索で、現金や貴金属、仏像など不正蓄財とみられる20億バーツ(約72億円)以上相当の資産も押収された。

前長官らは王室との関係をかたり、賄賂を求めたとされる。逮捕された容疑者には、シーラット妃の実弟らも含まれている。ワチラロンコン皇太子は先月28日、内務次官に書簡を送付し、シーラット妃の一族に王室が与えた姓を剥奪した。事件を受けた措置とみられる。

タイで王室周辺の関係者が絡む事件が表面化するのは異例だ。しかし、地元メディアは不敬罪に抵触するのを警戒し、王室との関わりについては詳しく報じていない。【2014年12月1日 毎日】
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この汚職問題で親族から逮捕者を出したワチラロンコン皇太子の妻シーラット妃は「王室の地位」を返上、更には離婚することとなりました。

高齢であるプミポン国王の健康状態が悪化する中、ワチラロンコン皇太子の離婚で、タイの君主制の将来がさらに危ぶまれることになるとの懸念も出ていました。

もともとワチラロンコン皇太子の世間での人気は芳しいものではありませんでした。

“ワチラーロンコーンの評価については、タイ国内では不敬罪に触れる可能性があるため公の場で議論されることはまずないが、一般的にはかなり悪い。
これはその親しみにくい人柄や、結婚と離婚を繰り返していることが「素行が悪い」と言う評価を作り出していることなどが挙げられる。
これは国内外を問わず各地を訪問し地道に活動する妹のシリントーン王女の人気とは対照的である。
このため未来の王位にはシリントーン王女が就くことを望む者が多いと一般に言われている。ラーマ9世が高齢の今、この不人気をどのように克服するかが今後のワチラーロンコーンの課題となっている。”【ウィキペディア】
(私の意見ではありませんので、念のため)

また、政治的にも、軍事政権が敵視するタクシン首相に近いとされてきました。

皇太子と軍の利害が一致?】
そうしたこともあって、今回の事件が今後にどのように影響するのか・・・と注目もされましたが、実際には、むしろワチラロンコン皇太子が軍事政権との関係修復を含め、王位継承に向けて動き出したことを示す事件だったようにも指摘されています。

****揺れるタイ、裏に王位継承問題**** 
京大東南アジア研究所・パヴィン准教授寄稿

◆クーデター非難せず
皇太子は軍政が8月に招集した国民立法議会(NLA)国会の開会式に出席し、議員は国のために働かねばならないとするスピーチを行ったが、クーデターを非難することはなかった。

先のシーラット皇太子妃一族をめぐる事件は、軍と皇太子の間に何らかの取り決めがあったのではないかと思われている。

この事件では、皇太子妃の叔父のポンパット前中央捜査局長官が腐敗に関わったとして逮捕され、さらに彼女の3人の兄弟も不敬罪で告発された。皇太子は事件を受けて、彼らに授けた姓を剥奪した。

皇太子の動きは、単にこれらの犯罪を罰するだけでなく、より深い部分では皇太子の王位継承と深く関わっており、王位継承に備えた“粛清”の一部だ。

王室の人々は皇太子妃が一般市民出身で品位がないとして、国王の配偶者となることを認めていない。

英BBC放送は、今回の一件が離婚へのステップだと報じたが、皇太子は離婚することで、王位継承への支持を得る狙いもあるようだ。

また皇太子は、国民の人気を得るためにタクシンと同盟を結んでタクシン派の支援に頼ったという噂も打ち消そうとしている。

皇太子とタクシンとの関係は国王側近にとって周知の事実だ。側近らは、タクシンが皇太子を思いのままに操るのではないかと心配してきた。

一連の動きは軍が、民主主義への移行過程にあるタイ政治の中心に、君主制を位置づけていることを意味する。

ワチラロンコン皇太子も政治を操ることに熱心なようだ。英国のように王室が政治に関わらないようにしない限り、宮殿内部の権力闘争がタイの未来に悪影響を及ぼす原因の一つとなるだろう。【2014年12月21日 産経】
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早い話が、皇太子と軍部が将来の王位継承に向けて手を結び、邪魔な存在は排除された・・・ということでしょうか。

先述のように、先月ほんの数日ですがタイ北部のチェンマイ・スコータイを観光してきました。
バスの窓から街の様子を眺めていると、国王を描いたものがよく目につきます。

それは当然なのですが、そのなかでも、国王の足元にすがりつくように皇太子が膝まづく絵柄のものが何枚かあったのが印象に残りました。

いかにも王位継承を示唆したようにもとれる構図なのですが、以前からそうしたものは多かったのか、最近増えたのか、それが何を意図しているのか・・・そのあたりは知りません。

国民的人気に問題も指摘されてきたワチラロンコン皇太子ですが、最近は積極的な活動が報じられています。

今年8月には、誕生日を迎えたシリキット王妃(83)をたたえるイベント「バイク・フォー・マム」が行われ、息子のワチラロンコン皇太子が数万人のサイクリストを率いて市内の歴史地区を駆け抜けるパフォーマンスがおこなわれました。

プミポン国王の誕生日にあたっても、同様のイベントが行われたようです。

****国王の誕生日祝福 60万人が自転車行進****
タイ全国で11日、プミポン国王の88歳の誕生日を祝う大規模な自転車行進「バイク・フォー・ダッド」が催され、計約60万人(参加登録者数)が自転車をこいだ。

ワチラロンコン皇太子が主催し、プラユット暫定首相、閣僚、政府高官、各国大使らも参加。8月に爆破テロがあったバンコクでは、約10万人が参加登録し、厳戒態勢のなか、国王の色である黄色を基調としたシャツを着た参加者が乗る無数の自転車が目抜き通りを駆け抜けた。

国内各地だけでなく、在外タイ人も一部の国で参加し、日本では約500人が東京都江戸川区の葛西臨海公園を走った。(中略)

国王は近年、体調を崩して入退院を繰り返している。今も入院中で、今月5日の誕生日は、2年連続で本人が出席する式典は中止された。【12月11日 朝日】
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来るべき日に備え着々と・・・といったところでしょうか。

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1 コメント

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日本に不敬罪は事実上もう存在する (芋田治虫)
2019-09-07 20:40:51
https://youtu.be/Xwjg9jGcOuw
https://youtu.be/0-PHAszxmlY
https://youtu.be/ELn_hUc-WTg
https://youtu.be/ZusoeiK51hw
「ムッソリーニ万歳」
こういっただけで逮捕される国があったら、その国末期。
どういう体制で、どういう政策をしようが、その国の終わりは近い。
枢軸国のどの国よりもひどい。
事実上の不敬罪が、既に存在する我が国に無関係の話ではない。
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