(アフガニスタンの首都カブールで、イスラム主義組織タリバンの戦闘員による威嚇射撃で散会させられるデモ参加者ら(2022年8月13日撮影)【8月14日 AFP】)
【「戦争は終わったが、アフガン女性の適切な居場所を求める闘いが始まった。」】
アフガニスタン駐留米軍が撤収を進める中、イスラム原理主義勢力タリバンが2021年8月15日、怒濤の勢いで首都カブールを制圧。ガニ大統領は抵抗することも和平交渉を行うこともなく出国逃避。欧米や日本が支援してきたガニ政権はあっけなく崩壊しタリバンが復権しました。
あれから1年が経過しようとしているということで、アフガニスタンの現状、とりわけ、就業・教育・一般生活におけるこれまでの権利を大きく制約されることになった女性の現状について、幾つかの報道がなされています。
特段の目新しいことはなく、“相変わらず”と言えば相変わらずですが、そうした不当な現実を改めて確認しておくことも必要でしょう。
****タリバン政権発足から1年、自由失った女性の闘い****
アフガニスタンのモネサ・ムバレズさん(31歳)は、20年にわたる民主政権下で獲得した女性の権利をやすやすと手放すつもりはない。
1年前にイスラム主義組織・タリバンが権力の座に返り咲く前、ムバレズさんは同国の財務省で政策監視を担う幹部だった。大都市を中心として、彼女のように自由を勝ち取っていた女性は多かった。1990年代末の前タリバン支配時代を過ごした世代には、夢見ることさえかなわなかった自由だ。
しかし今、ムバレズさんは職を失っている。タリバンがイスラム法を厳格に解釈し、女性の就労を厳しく制限したからだ。タリバンは女性に保守的な服装と行動を義務付け、全国で女子の中等教育学校を閉鎖した。
新政権に女性閣僚はおらず、女性問題省は閉鎖された。
「戦争は終わったが、アフガン女性の適切な居場所を求める闘いが始まった。あらゆる不公平に対し、命果てるまで声を上げていく」と語るムバレズさんは、首都カブールで最も著名な活動家の1人だ。
西側を後ろ盾とした民主政権が転覆した後の数週間、ムバレズさんはタリバンのメンバーによる殴打や拘束のリスクも顧みず、街頭デモに参加した。激しい闘いの末に勝ち取った権利を守るためだ。
そうしたデモも今ではすっかり鳴りを潜め、ムバレズさんが最後に参加したのは5月10日だ。
しかし、彼女らは自宅に集まって女性の権利について話し合い、他の人々にも参加を呼びかけるなど、反抗のための行動を内々に続けている。タリバンが前回アフガンを支配していた時代には、こうした集会はまず考えられなかった。
7月にムバレズさんの家で開いた集会で、女性らは車座になって経験を語り合い、「食料」、「仕事」、「自由」など街頭デモさながらのスローガンを唱えた。
ムバレズさんは、ロイターに「私たちは自らの自由のために、権利と地位のために闘う。国や組織、スパイ機関のために闘うのではない。ここは私たちの国、私たちの故郷であり、私たちはここに住むための全ての権利を有している」と語った。
国連女性機関のアフガニスタン代表、アリソン・ダビディアン氏は、ムバレズさんのような事例は国中にあふれていると言う。
「世界中の多くの女性にとって、自宅の正面玄関から外出するのは日常の一部」だが、「多くのアフガン女性にとって、それは特異なことだ。反抗を示す行動なのだ」とダビディアン氏は言う。
公共の場所における女性の行動について、必ずしも明確なルールは無い。だが、カブールのように比較的自由な都会では、女性は男性の付き添い無しに移動することがよくある。だが、南部や東部など、より保守的な地方では、さほど日常的な光景ではない。また、すべての女性は78キロメートル以上移動する際に、男性の付き添いが義務付けられている。
<勉強はやめない>
国際社会がアフガンの新指導部の承認を拒んでいるのは、タリバンによる少女と女性の取り扱いが主な理由の1つだ。この結果、アフガンは数十億ドルの支援を断たれ、経済危機に拍車がかかっている。
アフガニスタンは少女の高校通学を禁止している世界で唯一の国。タリバンは今年3月、女子の中等教育学校を再開すると発表したが、女子児童が喜んで通学し始めたその朝に決定を撤回した。
民間の学習指導やオンライン授業を通じて、なんとか教育を受け続けている少女もいる。
ケリシュマ・ラシーディさん(16歳)は、一時しのぎの措置として民間の学習指導を受け始めたが「学校再開を期待している」という。学校の閉鎖が続くようなら、学校に戻れるよう両親とともにアフガンを出たいと望んでいる。
「勉強することは決してやめない」とラシーディさん。2020年に北東クンドゥーズの自宅がロケットに攻撃された後、一家はカブールに移り住んだ。
食いつなぐために「新たな日常」を受け入れざるを得なかったと語る女性もいる。
元女性警察官のグレスタン・サファリさん(45歳)は、タリバンに止められて職を変えざるを得なかった。現在はカブールで他の家庭の家事を請け負っている。「自分の職業が好きだった。肉でも果物でも、必要なものが何でも買えた」とサファリさんは振り返った。【8月13日 ロイター】
1年前にイスラム主義組織・タリバンが権力の座に返り咲く前、ムバレズさんは同国の財務省で政策監視を担う幹部だった。大都市を中心として、彼女のように自由を勝ち取っていた女性は多かった。1990年代末の前タリバン支配時代を過ごした世代には、夢見ることさえかなわなかった自由だ。
しかし今、ムバレズさんは職を失っている。タリバンがイスラム法を厳格に解釈し、女性の就労を厳しく制限したからだ。タリバンは女性に保守的な服装と行動を義務付け、全国で女子の中等教育学校を閉鎖した。
新政権に女性閣僚はおらず、女性問題省は閉鎖された。
「戦争は終わったが、アフガン女性の適切な居場所を求める闘いが始まった。あらゆる不公平に対し、命果てるまで声を上げていく」と語るムバレズさんは、首都カブールで最も著名な活動家の1人だ。
西側を後ろ盾とした民主政権が転覆した後の数週間、ムバレズさんはタリバンのメンバーによる殴打や拘束のリスクも顧みず、街頭デモに参加した。激しい闘いの末に勝ち取った権利を守るためだ。
そうしたデモも今ではすっかり鳴りを潜め、ムバレズさんが最後に参加したのは5月10日だ。
しかし、彼女らは自宅に集まって女性の権利について話し合い、他の人々にも参加を呼びかけるなど、反抗のための行動を内々に続けている。タリバンが前回アフガンを支配していた時代には、こうした集会はまず考えられなかった。
7月にムバレズさんの家で開いた集会で、女性らは車座になって経験を語り合い、「食料」、「仕事」、「自由」など街頭デモさながらのスローガンを唱えた。
ムバレズさんは、ロイターに「私たちは自らの自由のために、権利と地位のために闘う。国や組織、スパイ機関のために闘うのではない。ここは私たちの国、私たちの故郷であり、私たちはここに住むための全ての権利を有している」と語った。
国連女性機関のアフガニスタン代表、アリソン・ダビディアン氏は、ムバレズさんのような事例は国中にあふれていると言う。
「世界中の多くの女性にとって、自宅の正面玄関から外出するのは日常の一部」だが、「多くのアフガン女性にとって、それは特異なことだ。反抗を示す行動なのだ」とダビディアン氏は言う。
公共の場所における女性の行動について、必ずしも明確なルールは無い。だが、カブールのように比較的自由な都会では、女性は男性の付き添い無しに移動することがよくある。だが、南部や東部など、より保守的な地方では、さほど日常的な光景ではない。また、すべての女性は78キロメートル以上移動する際に、男性の付き添いが義務付けられている。
<勉強はやめない>
国際社会がアフガンの新指導部の承認を拒んでいるのは、タリバンによる少女と女性の取り扱いが主な理由の1つだ。この結果、アフガンは数十億ドルの支援を断たれ、経済危機に拍車がかかっている。
アフガニスタンは少女の高校通学を禁止している世界で唯一の国。タリバンは今年3月、女子の中等教育学校を再開すると発表したが、女子児童が喜んで通学し始めたその朝に決定を撤回した。
民間の学習指導やオンライン授業を通じて、なんとか教育を受け続けている少女もいる。
ケリシュマ・ラシーディさん(16歳)は、一時しのぎの措置として民間の学習指導を受け始めたが「学校再開を期待している」という。学校の閉鎖が続くようなら、学校に戻れるよう両親とともにアフガンを出たいと望んでいる。
「勉強することは決してやめない」とラシーディさん。2020年に北東クンドゥーズの自宅がロケットに攻撃された後、一家はカブールに移り住んだ。
食いつなぐために「新たな日常」を受け入れざるを得なかったと語る女性もいる。
元女性警察官のグレスタン・サファリさん(45歳)は、タリバンに止められて職を変えざるを得なかった。現在はカブールで他の家庭の家事を請け負っている。「自分の職業が好きだった。肉でも果物でも、必要なものが何でも買えた」とサファリさんは振り返った。【8月13日 ロイター】
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【声をあげる女性にタリバン威嚇射撃】
“(自由を求めて戦い続ける)ムバレズさんのような事例は国中にあふれている”というのは、やや誇張した表現でしょう。
そうあって欲しいという願いはありますが、厳しい現実を生きていくのはそうたやすいことではありません。
どんなに現状への不満や将来への希望があったとしても、まずは今日を生きることが優先されます。
そうしたなかにあっても声を上げる女性もいます。
しかし、タリバンの対応は強硬です。
****タリバン、女性の権利求めるデモに威嚇射撃 アフガン****
アフガニスタンの首都カブールで13日、数か月ぶりに行われた女性たちによるデモを、イスラム主義組織タリバンが参加者への殴打や威嚇射撃で暴力的に散会させた。(中略)
AFP記者によると、デモには約40人が参加。教育省前を行進しながら「パン、仕事、自由」とシュプレヒコールを上げた。
タリバン戦闘員は空に向かって威嚇射撃をしてデモを散会させた。近くの店に逃げ込んだ参加者の中には戦闘員に追い掛けられ、銃床で殴られた人もいた。
女性たちは「8月15日は暗黒の日」と書かれた横断幕を手に労働と政治参加の権利を求めて「正義だ正義。無学はもうたくさん」と声を上げた。多くは顔をベールで覆わずに参加していた。
デモ主催者の一人、ゾリア・パルシさんによると、タリバン情報機関の戦闘員がやって来て空に向かって発砲した。戦闘員は、横断幕を引き裂いたり、多くの参加者の携帯電話を没収したりしたという。
参加者の一人、ムニサ・ムバリズさんは「私たちを黙らせたくともそれはできない。家からでも抗議する」と述べ、女性の権利のために闘い続けると語った。
AFP記者によると、デモを取材していた報道陣の中にもタリバン戦闘員に暴行を受けた記者がいる。 【8月14日 AFP】
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イスラム社会において女性の権利が制約されているのは珍しいことではありませんが、“アフガニスタンは少女の高校通学を禁止している世界で唯一の国”というように、アフガニスタンの現状はイスラム教のルールというよりは、(おそらくはタリバンの中核をなすパシュトゥン人部族社会を反映した)タリバン特有のローカルルールであり、宗教指導者の中にも現状を批判する人はいるようです。しかし・・・・
****タリバンの著名な聖職者殺害される 女性教育に賛成****
アフガニスタンのタリバン暫定政権の支持者で、女性教育の推進者として有名だった宗教指導者が首都カブールで発生した自爆テロの標的となり、殺害されたことがわかりました。
現地メディアによりますとアフガニスタンの首都カブールの神学校で11日、自爆テロが起き、宗教指導者のラヒムラ・ハッカーニ師が殺害されました。犯人は義足に爆弾を仕込んで近づいたとみられ、その後、過激派組織「イスラム国」が犯行声明を出したということです。
現地メディアによりますとアフガニスタンの首都カブールの神学校で11日、自爆テロが起き、宗教指導者のラヒムラ・ハッカーニ師が殺害されました。犯人は義足に爆弾を仕込んで近づいたとみられ、その後、過激派組織「イスラム国」が犯行声明を出したということです。
ハッカーニ師はタリバン暫定政権の支持者でタリバン統治に反対する「イスラム国」を批判、過去にも「イスラム国」のテロの標的となっていました。
アフガニスタンで争点となっている女性に対する教育に賛成していることでも知られ、今年初めイギリスBBCのインタビューを受けた際には「イスラム法では女性に教育を許さないとする正当な理由は全くない」などと話していました。【8月12日 TBS NEWS DIG】
アフガニスタンで争点となっている女性に対する教育に賛成していることでも知られ、今年初めイギリスBBCのインタビューを受けた際には「イスラム法では女性に教育を許さないとする正当な理由は全くない」などと話していました。【8月12日 TBS NEWS DIG】
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今回事件はタリバンではなく、「イスラム国」による自爆テロのようです。
ただ、アルカイダ・ザワヒリ容疑者とも近い関係があったタリバン強硬派とアルカイダや「イスラム国」といったテロ組織の間には考え方の差はあまりないようにも思えます。
【教育を奪われた少女の願い「一日も早く学校に通いたい、教育を受けたい」】
****女子教育の機会奪われたアフガニスタン 「夢を絶対に…」少女の訴えは “秘密の学校”も****
アフガニスタンでイスラム主義勢力・タリバンが再び実権を握ってから、まもなく1年です。この1年で女性を取り巻く環境は劇的に変わり、教育の機会も奪われたままです。学校に通えなくなった女子生徒たち、そして彼女らを支える女性が、苦しい胸の内を明かしました。
◇
今月、NNNのカメラはアフガニスタンの首都・カブールへ入りました。
平山晃一記者 「カブールでは、街の至る所で『タリバン』による検問が実施されています」
テロを繰り返していたイスラム主義勢力・タリバンが、今は街の治安を守る存在になっていました。
こうした中、カブールに住む12歳の少女・スーサンさんを訪ねました。すると、スーサンさんは日本語であいさつをしてくれました。
「おはようございます、こんにちは。わたし名前はスーサンです」
日本語であいさつした後、はにかんだ表情をみせるスーサンさん。父親の留学の関係で、小学校1年から3年まで日本の小学校に通っていました。「宿題忘れゼロ賞」と書かれた賞状や日本語で書いた作文などを見せてくれました。
「宿題がとても大変でした。でも、日本の先生たちはとても優しく教えてくれて、励ましてくれました」
しかし帰国後の去年8月、タリバンがカブールを占拠し、実権を掌握。タリバンは、いまだ女子の中等教育再開を認めておらず、スーサンさんと姉のマスーダさんは、学校に行けない日々が続いています。
「学校に行く代わりに、テレビを見て勉強をしていますが、将来がとても不安です…」
今年3月には、「女子の中等教育の再開」がアナウンスされましたが、当日に突如、撤回されました。
「学校に行って、イスに座って先生を待っていたら、帰るよう言われました」
顔を曇らせ、涙をぬぐうスーサンさん。夢の実現のため、「一日も早く学校に通いたい、教育を受けたい」と訴えます。
「母の夢でもあった『看護師になる』という夢を、絶対に実現したいです」
◇
こうした現状に立ち向かう動きも出てきています。
平山晃一記者 「こちらの場所では、学校に行けない少女たちを対象にした授業が行われていて、イスに座りきれず、床に座っている子たちもいますね」
元教師の姉と大学生の妹が、40人ほどの女子生徒らに、ひそかに授業を行っていました。いわば“秘密の学校”です。
(中略)
“秘密の学校”に通う女子生徒(12) 「将来は医者になって、この国の人を助けたいです。勉強を続けないと、夢をかなえることはできません」
タリバンが再び支配するまでの自由なアフガンを生きてきた元教師の姉は、この1年を次のように振り返りました。
元教師の姉 「この1年間で、女性たちは精神的に多くのダメージを負いました。仕事も勉強も何もかも制限されるようになりました。私たちアフガンの女性は、これからも戦い続けます」
タリバン暫定政権は、「準備が整えば、女子の中等教育を再開する」としていますが、今も少女たちの教育の機会は奪われ続けています。【8月12日 日テレNEWS】
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この少女らの夢がかなうことを切に願いますが、力によってしか変わらない現実を思うとやり場のない思いも・・・。
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