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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

欧州 トランプ大統領の「欧州離れ」に対し、独自の安全保障対策を探る動き加速 ロシアは反発

2025-03-22 22:41:04 | 欧州情勢

(【3月7日 テレ朝news】)

【トランプ大統領の「欧州離れ」「欧州軽視」】
トランプ大統領による急激な国際政治・経済の変革のひとつがウクライナに関してウクライナ・欧州の頭越しにロシアと進む交渉に見られるような「欧州離れ」「欧州軽視」とも言える動きで、その背景には欧州の地盤沈下があります。

****トランプはまさに暴走機関車!枚挙にいとまがない暴政、ロシア支持の暴挙…なぜ国民に“支持”されるのか?広がる「唯一超大国」論****
(中略)このように、世界を大混乱に陥れてまで自己主張と強圧的姿勢を取り続けるトランプ氏の態度は、第一次政権(17~21年)当時と比較しても、異常なほど際立っている。

トランプ暴走の背景にあるのが、近年のグローバル・パワー・シフトだ。具体的には、EUの地位低落、中国経済の不振の二つがある。

まず、EUについては、01年「9・11テロ」以後、大規模なテロとの戦いが長期化するにつれて米国の足かせとなり、とくに07年以来、同国経済の減速が露呈し始めたころから、欧州諸国の間では、米国との「デカップリング(切り離し)」論が台頭しつつあった。

そして一時は、「アメリカ一極支配」から脱し、独自の通貨「ユーロ」に根差した独自の経済体制、さらには独自の新たな政治機構の樹立まで唱える動きまで見え始めていた。

ところがその後、アイルランド、ギリシャ、ポルトガル、イタリアなど加盟国の間で深刻な財政危機や信用不安が露呈したほか、20年には、英国がEU離脱に踏み切ったことなどをきっかけとして、EUそのものの地位低落を招き、今日に至っている。 

とくに、英国離脱後のEU経済の停滞は深刻化してきている。ドイツ経済を見ると、19年第4四半期以降、昨年末まで5年間ほぼ横ばい状態を続けており、成長見通しも立っていない状態だ。同期間中のフランス、イタリア、スペイン各国経済も、成長が見られるものの、2.9~5.6%程度にとどまっている。

この間、11.4%の成長を記録した米国経済との差は広がる一方だ。「Capital Economics」の指摘によると、停滞要因として、人口動態、ハイテク分野の起業家精神欠如など、経済構造的問題が挙げられるという。

10年ほど前までは、欧州安全保障の米国依存からの脱却をめざし、独自の「欧州軍」創設構想まで持ち上がったことがあったが、その後、足踏み状態が続いている。

それどころか、地続きの隣国であるウクライナの安全保障確保でさえも、それぞれ自国の経済的事情から立ちすくみ、依然として米軍依存から脱却できていない。

3月に入り、トランプ―ゼレスンキー首脳会談決裂を見かねたマクロン仏大統領はじめEU各国首脳が、ようやく欧州諸国による対ウクライナ軍事支援増強に向けて動き出したが、各国の思惑があり、具体的にどのような安保強化策が打ち出せるかは不透明だ。

トランプ政権が、ウクライナ休戦協定締結に向けて、欧州同盟諸国抜きでロシアと直接交渉に乗り出したのも、その背景には明らかに、EU地盤沈下がある。【3月10日 WEDGE】
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トランプ大統領は第1次政権の2018年にも貿易問題で、「我々には多くの敵がいると考えている」と発言し、そのうえで「EUは敵だと思う」とも語っています。「アメリカを利用している」とも。安全保障面でも欧州の負担の少なさを事あるごとに批判しています。

これまでは欧州に「カネをもっと出せ!」と主張してきたトランプ大統領ですが、いよいよNATOから距離を置く姿勢も報じられています。

****トランプ政権がNATO軍最高司令官ポストの放棄検討と米報道 議会は懸念****
米NBCニュースは19日までに、米軍の指揮官が担ってきた北大西洋条約機構(NATO)欧州連合軍の最高司令官ポストを手放すことをトランプ政権(共和党)が検討していると報じた。政権が進める支出削減に向けた米軍再編案として浮上しているという。報道内容に関し議会共和党から懸念の声が上がった。

報道によると、国防総省は米軍の司令部や部隊の大幅再編を検討していて、その1つとしてNATO欧州連合軍の最高司令官ポストを手放す案が出ている。同ポストは約75年にわたり米軍の大将級が務めてきた。

NATO欧州連合軍の最高司令官は現在、米欧州軍司令官を務めるカボリ陸軍大将が兼任し、ロシアの侵略を受けるウクライナへの支援任務も担う。

ポストを手放すことになった場合、NATOを牽引(けんいん)してきた米国の立ち位置を変えることにつながる可能性がある。(中略)

上院軍事委員会のウィッカー委員長(共和党)と下院軍事委員会のロジャース委員長(共和党)は19日、報道を受けて「懸念」を表明する共同声明を発表した。

NATO欧州連合軍最高司令官のポスト放棄や米軍再編などの対応は「米国の抑止力を弱め、敵対国との交渉における米国の立場を損なう危険性がある」と指摘。議会との協力や関係部局との調整がない大幅な米軍再編は「受け入れない」と述べた。【3月20日 産経】
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【欧州で強まる米依存脱却の動き “はずみ”になりそうなドイツの国防費拡大を可能とする憲法改正】
こうしたトランプ大統領の「欧州離れ」「欧州軽視」とも言える動きに対し、ロシアの脅威のもと、欧州ではこれまでの安全保障上のアメリカ依存を見直そうとする動きが広がっています。

その欧州の動きの“はずみ”になりそうなのが、主要国ドイツにおける国防費拡大を可能とする憲法改正でした。

****ドイツ連邦議会で‟財政規律緩和”の憲法改正案可決 国防費拡大が可能に****
ドイツの連邦議会で、財政規律を緩和する憲法改正案が可決されました。対ロシアを念頭に急務とされる「国防支出の拡大」について、厳しい財政ルールから除外されることになります。

ドイツの下院にあたる連邦議会では18日、財政規律を緩和する憲法改正案が賛成多数で可決されました。

改正案では、国内総生産=GDP比の1%を超える国防支出や、新たに設ける5000億ユーロのインフラ投資への基金に対して、国債発行を抑制するルールから除外されます。ドイツでは、厳しい財政規律が長年維持されてきましたが、対ロシアを念頭にヨーロッパで独自の防衛力強化が求められていて、方針を大転換したことになります。

今回の改正案は、先月の総選挙で勝利したメルツ氏の保守政党と、ショルツ首相の中道左派政党が中心となって協議してきました。この2党で連立協議も進んでいて、早ければ来月にもメルツ首相が誕生する見通しです。【3月19日 TBS NEWS DIG】
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これまでは、憲法で、財政赤字をGDPの0.35%未満に抑える「債務ブレーキ」が定められていましたが、改正案では、GDPの1%を超える国防費が「債務ブレーキ」の対象から外れます。

このドイツの動きはEUが掲げる再軍備計画にも大きな追い風となります。

****EU、「再軍備」125兆円=ロシアの脅威に対抗―欧州委員長****
欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は4日、ウクライナへの侵攻を続けるロシアの脅威に対抗するため、8000億ユーロ(約125兆円)規模の「再軍備計画」を表明した。

トランプ米政権は欧州の安全保障への関与に消極的な姿勢を示しており、EUは6日、ベルギー・ブリュッセルで特別首脳会議を開いて計画の詳細を議論する。

フォンデアライエン氏は記者発表で、複数のEU加盟国による防空システム、ミサイル、ドローンなどの共同調達を促す融資制度の新設を首脳らに書簡で提案したと説明。

EU加盟国に課された財政規律の緩和やEU予算の活用を含め、再軍備計画が実行されれば「安全で強靱(きょうじん)な欧州のため、8000億ユーロ近くの防衛費を捻出できる」と訴えた。【3月4日 時事】
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こうした動きの背景にあるのは“トランプ米政権は欧州の安全保障への関与に消極的”という、もっと平たく言えば、ロシアがウクライナを越えて更に欧州に迫るいざというときアメリカは欧州を守ってくれないかもしれないという不安です。

ドイツの次期首相が確実視されているメルツCDU党首は「(トランプ大統領は)欧州の運命にあまり興味を持っていない」とも。 ドイツの憲法改正を、マクロン仏大統領は「歴史的な採決だった」と評価しています。

****欧州再軍備に追い風 ドイツ基本法改正案可決 保守派の次期首相、「米国重視」を修正****
ドイツ連邦下院は18日、基本法(憲法に相当)改正案を可決し、メルツ次期首相は国防増強とインフラ整備で大型の財政支出を目指す姿勢を鮮明にした。ドイツが緊縮財政からの脱皮に動き出したことは、欧州連合(EU)が掲げる再軍備計画にも大きな追い風となった。(中略)

18日、ベルリンを訪問したマクロン仏大統領は記者団に、「歴史的な採決だった。ドイツ、欧州の双方にとってよいニュースだ。投資を促すことにもなる」と議会の動きをたたえた。

北大西洋条約機構(NATO)のルッテ事務総長も、SNSで「NATO防衛力にも大きな変化をもたらす」と歓迎した。

ドイツはEUの域内総生産(GDP)の4分の1を占める経済大国で、基本法が改正されれば波及効果は大きい。

メルツ氏は2月の総選挙で保守系、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が勝利した後、CDU党首として首相就任を確実にした。CDUは東西冷戦中の西ドイツ時代から、防衛政策で米国との同盟関係を最重視してきたが、メルツ氏は「欧州の結束」優先の方針に転じた。

テレビ討論会で、米国は「欧州の運命にあまり興味を持っていない」と述べ、トランプ米政権の「欧州離れ」に警鐘を鳴らした。18日には下院採決を前に、「欧州の防衛体制に向けた最初の一歩」と法案の意義を強調した。

債務ブレーキは2009年、CDU出身のメルケル前首相時代に定められた。財政均衡を重視するドイツの姿勢は、11年に始まったユーロ圏債務危機で貫かれ、EUの緊縮財政に受け継がれた。加盟国の財政赤字の膨張を押さえ、EU全体の財政健全化に貢献する一方、起債を伴う大型投資の足かせにもなってきた。

ドイツの国防費は昨年、GDP比2%。フランスは3〜3・5%、英国は3%を長期的目標に掲げる。(後略)【3月19日 産経】
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今回改正案は21日にドイツ連邦参議院(上院)でも採択されています。

【フランス・マクロン大統領のフランスの“核の傘”を欧州に広げようという動き】
もうひとつ、安全保障面での欧州の動きとしては、フランス・マクロン大統領のフランスの“核の傘”を欧州に広げようという動きがあります。

****マクロン仏大統領「核抑止力で欧州の同盟国守る」 議論開始を表明****
フランスのマクロン大統領は5日のテレビ演説で、自国が保持する核兵器による抑止力を欧州全体で行使するための議論を開始する意向を表明した。

トランプ米大統領が、ロシアの侵攻を受けるウクライナへの軍事支援の一時停止を命じ、欧州の防衛にも消極的な姿勢をみせる中、ロシアの脅威に対し、欧州全体の軍事力、抑止力を強化し、これまでの対米依存からの脱却を加速させる。

マクロン氏は演説で、ウクライナとロシアの停戦に向け「ウクライナがロシアと強固な平和を交渉できるようになるまで、ウクライナの抵抗を支え続けなければならない」と述べ、ウクライナが求める停戦後の安全の保証を支援する意向を強調した。

またロシアが多額の国防費支出で軍事力を大幅に増強していると指摘。「欧州諸国は自国を守り、さらなる侵略を抑止しなければならない」と語った。そのうえで、英国と並ぶ核兵器保有国としてフランスが「抑止力によって欧州の同盟国を守るための戦略的議論を開始することを決めた」と述べた。

トランプ氏はウクライナへの軍事支援の一時停止を命じたほか、停戦に向けた協議でも、ロシア寄りの姿勢が目立っている。マクロン氏は「米国が我々の側にとどまることを信じたい。だが、そうでない場合の備えも必要だ」と述べ、「防衛および安全保障問題における欧州の独立性を強化しなければならない」との認識を示した。

ロイター通信によると、フランスは290発の核弾頭を保持しており、潜水艦や航空機で核ミサイルを運用している。

2月のドイツ総選挙で第1勢力となった野党統一会派「キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)」の一角、CDU党首で次期首相となる可能性が高いメルツ氏は選挙後、米国への防衛依存を低減し、仏英の核抑止力による防衛の拡張について議論する意向を示していた。

一方、欧州各国首脳はウクライナ支援のためにロンドンで2日に開かれた会議で、フランス、英国を中心に欧州諸国で「有志国連合」を形成し、停戦後のウクライナに平和維持部隊を派遣する方針で一致した。

ただ、米国は一貫してウクライナに米軍を派遣しない方針を変えておらず、当初期待された平和維持部隊の後方支援なども実現が見通せない状態となっている。マクロン氏は演説で、10日以降に有志国の軍司令官をパリに招き、具体策を協議する方針を明らかにした。【3月6日 毎日】
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マクロン大統領はドイツの次期首相となる見通しのメルツ氏からの要請を受け、今回の決断に至ったとしています。

ロシアはマクロン大統領のこうした動きを「ロシアの脅威だ」などと批判し、「ロシアがヨーロッパに対して戦争を準備しているという非難はナンセンスだ」などと主張しています。【3月6日 テレ朝newsより】

【欧州 ウクライナ軍支援強化の取組 ハンガリー・オルバン首相は反対】
欧州の主要国やカナダ、ウクライナなどは3月15日、停戦後のウクライナを守る「有志連合」の結成に向けて、オンラインの首脳会議を開き、ロシアへの圧力を強化することで合意しました。

また、EUの執行機関である欧州委員会のフォンデアライエン委員長は3月18日、アメリカの焦点がインド太平洋地域にシフトする中、ロシアは欧州の民主主義国家との対決に向けて準備を進めているとの見方を示し、ロシアへの警戒を明らかにしています。

ウクライナ問題に関してEUは、20日の首脳会議でウクライナへの軍事支援強化などを盛り込んだ文書についてロシア寄りのハンガリーが反対したため合意に至らず、残る26カ国で採択しました。3月6日のEU特別首脳会議でも、オルバン首相の反対で支援に合意できなかっ経緯があります。

****EU首脳会議でウクライナ軍事支援強化持ち込んだ文書が“ロシア寄り”ハンガリーの反対で合意至らず「反ヨーロッパ的」ゼレンスキー大統領が批判****
EU(ヨーロッパ連合)の首脳会議で、ウクライナへの軍事支援強化などを盛り込んだ文書についてハンガリーが反対したため合意に至らず、残る26カ国で採択しました。

20日に開催された首脳会議にはウクライナのゼレンスキー大統領もオンラインで参加し、ウクライナに対する支援策について話し合いました。

協議の結果、EUはウクライナへの軍事支援を強化することや、ロシアに対して責任を追及することなどを盛り込んだ文書をまとめました。

しかし、ロシア寄りの姿勢を示すハンガリーのオルバン首相が反対したため合意に至らず、文書は残る26カ国で採択しました。

これについてゼレンスキー大統領は「同盟全体の決定を1人が阻止するのは反ヨーロッパ的だ」とオルバン首相を批判しました。【3月21日 FNNプライムオンライン】
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ウクライナの将来的な安全保障に向けた支援計画を協議するための会合もイギリスで開かれ、およそ30の有志国の軍事担当者らが参加しました。

“停戦後のウクライナへの平和維持部隊の派遣については「ウクライナ軍は今や、ヨーロッパ最強の軍隊の一つになった。我々はその能力を強化し、周辺に配置することについて話している」と述べ、ウクライナ軍を支援するための“限定的な派遣”となる可能性を示しました。”【3月21日 TBS NEWS DIG】

こうした欧州の一連の動きをロシアは再び強く批判。

****ロシア、欧州の「軍国主義化」計画を批判****
英国でウクライナの安全の保証に向けた西側諸国の軍高官による会合が開かれたのを受け、ロシア大統領府(クレムリン)は20日、欧州諸国が平和を求めずに「軍国主義化」を計画していると非難した。

フランスや英国などの欧州主要国は、ドナルド・トランプ大統領が1月に就任して以来、米国がもはや欧州防衛に尽力していないとの懸念から、軍事費の増額を模索している。

ロシアはトランプ氏との関係を密にするにつれ、3年以上続くウクライナ侵攻をめぐる怒りの矛先を欧州に振り向け、和平への障害は主に欧州連合と英国だと非難している。

クレムリンのドミトリー・ぺスコフ報道官はAFPを含むメディアに対し、「EUと欧州諸国からのシグナルは、大部分が欧州の軍国主義化計画に関するものだった」「欧州は自らの軍国主義化に着手し、戦争屋じみてきた」と述べた。

英国のキア・スターマー首相とフランスのエマニュエル・マクロン大統領は、ロシアとウクライナの停戦後、ウクライナに平和維持部隊を派遣する用意があると述べているが、ロシアはこの考えに猛反対している。

マクロン氏は、フランスの「核の傘」を欧州全域に拡大することについて議論を始めるとも述べている。
ロシアのセルゲイ・ショイグ安全保障会議書記は20日、こうした発言は「現在欧州にまん延している反ロシア感情を反映」していると指摘した。

また、ドイツの次期首相就任が確実視されるキリスト教民主同盟のフリードリヒ・メルツ党首が、ロシアは「欧州侵略戦争」を仕掛けていると主張して国防費の大幅増額を提案したことについて、ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は「ドイツの政治エリートの歴史的復讐(ふくしゅう)心」を反映したものだと指摘。

ロシア側に攻撃計画はないが、「ドイツがそのような発言をするということは、ドイツには攻撃計画があるということだ」と付け加えた。 【3月21日 AFP】
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