(上海では2021年まで、LGBTQコミュニティーの誇りをたたえる「プライド」イベントが行われていた。写真は2017年のもの 【2023年6月29日 BBC】)
【LGBTQなど性的少数者を施設に送り込み「転向療法」と称して殴打するなどの虐待】
中国・習近平政権の「西側の価値観」への警戒、少数者へ不寛容、希薄な人権意識を象徴するような状況が報じられています。
****中国で性的少数者への暴力横行 施設に送り「転向療法」で虐待*****
世界で性の多様性への理解が進む中、中国でLGBTQなど性的少数者を施設に送り込み「転向療法」と称して殴打するなどの虐待が横行していることが11日、分かった。
被害者らが暴力の実態を証言した。保守的な考えに基づく偏見に加え、性的少数者の権利擁護を「西側の価値観」と警戒する習近平指導部の姿勢が性差別に拍車をかけている。
被害者や支援者らによると、転向療法を行う病院や民間施設は、上海市や河北、湖北、四川各省などに100カ所近く点在。入所者の多くが家族に半強制的に連行された10〜20代の若者だという。
「おまえなど気持ち悪くて役立たずだ」。性的指向や性自認の「矯正」を行う施設で、指導官が入所者を殴打したり人前で裸にさせたりした。性的虐待の被害もあった。
施設では外部との連絡を制限するためスマートフォンやパソコンを没収される。髪は短く切られ、軍隊のような厳しい訓練のほか「男性は働き女性は子を産む」といった伝統的な性別役割の授業を受けさせられる。【2月11日 共同】
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共産党支配の価値観にそぐわないものを「社会の不安定要因になっている」として容赦なく弾圧するということでは、チベットやウイグルに対する弾圧と同根と思われます。
【近年、LGBTへの圧力は強まってはいたが・・・】
中国におけるLGBTを取り巻く環境が厳しさを増していることは昨年6月頃から報じられてはいました。
共産党支配の価値観にそぐわないものを「社会の不安定要因になっている」として容赦なく弾圧するということでは、チベットやウイグルに対する弾圧と同根と思われます。
【近年、LGBTへの圧力は強まってはいたが・・・】
中国におけるLGBTを取り巻く環境が厳しさを増していることは昨年6月頃から報じられてはいました。
****中国でLGBT団体」が“活動停止”に 過去にはイベント中止やSNS閉鎖も…当局が性的マイノリティーの活動取り締まり強化*****
中国のLGBT団体が活動停止に追い込まれたことがわかりました。中国ではここ数年、性的少数者に対する圧力が急速に強まっており、今回の活動停止もその一環だという見方が広がっています。
「北京LGBTセンター」は2008年から北京を中心に活動を続けてきましたが、15日、SNS上で「大変残念なことに、不可抗力により活動を停止することになりました」とするコメントを発表しました。
台湾メディアなどによりますと、中国当局は近年、性的少数者のグループに対する取り締まりを強化しており、2020年には上海でLGBTのイベントが中止に追い込まれたほか、2021年にはLGBT団体のSNSアカウントが閉鎖されるなど年々圧力が強まっていたということです。
中国当局は性的少数者の活動について「社会の不安定要因になっている」として取り締まりを強化しており、今回の活動停止もその一環だという見方が広がっています。 【2023年5月17日 TBS】
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共産党政権下でも対応が緩やかだった時期もあり、LGBTへの厳しい対応は習近平政権の性格を示すものでもあります。
****中国のLGBTコミュニティー、当局が抑圧 プライド月間にも大きなイベントなく*****
「北京LGBTセンター」は2008年から北京を中心に活動を続けてきましたが、15日、SNS上で「大変残念なことに、不可抗力により活動を停止することになりました」とするコメントを発表しました。
台湾メディアなどによりますと、中国当局は近年、性的少数者のグループに対する取り締まりを強化しており、2020年には上海でLGBTのイベントが中止に追い込まれたほか、2021年にはLGBT団体のSNSアカウントが閉鎖されるなど年々圧力が強まっていたということです。
中国当局は性的少数者の活動について「社会の不安定要因になっている」として取り締まりを強化しており、今回の活動停止もその一環だという見方が広がっています。 【2023年5月17日 TBS】
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共産党政権下でも対応が緩やかだった時期もあり、LGBTへの厳しい対応は習近平政権の性格を示すものでもあります。
****中国のLGBTコミュニティー、当局が抑圧 プライド月間にも大きなイベントなく*****
LGBTQ(性的少数者)の誇りをたたえる「プライド」月間の6月、世界中でさまざまなイベントが開かれている。だが、中国では目立った催しがない。同国最大のプライドイベントは、2021年以来中止となっている。
このイベントを主催してきた「上海驕傲节(上海プライド)」は、中止の理由を明らかにしていない。「今後予定されているすべての活動をキャンセルし、今後のイベントを予定することも休止する」とだけ発表している。
中国で政治的抗議に参加した人は処罰されることが多い。そのため、上海プライドはパレードを行う代わりに、ダンスパーティーやマラソン大会、映画上映会などを主催してきた。
現在では、認知度の低いイベントしか、LGBTコミュニティーには残されていない。たとえば、雑誌モデルのポージングから着想を得た「ヴォーギング」のダンスパーティーなどだ。
活動を中止した主要なLGBTグループは、上海プライドだけではない。他の団体もここ数年で休止を余儀なくされている。世界第2の経済大国で、権利活動が抑圧されている恐れが高まっている。
「手に負えない力」で活動休止
中国のメッセージアプリ「微信(ウィーチャット)」では2021年、LGBT関連のトピックを扱う数十件のアカウントが削除されたという。
この年には、LGBTコミュニティーを代表して訴訟を起こしていた団体も活動を休止した。この団体の創設者が当局に拘束され、釈放の条件として団体休止を求められたと報じられている。
そして今年5月、「北京同志中心(北京LGBTセンター)」が、「自分たちの手に負えない力」によって活動を休止すると発表した。
上海プライドの共同創設者である彭雷氏は、「北京LGBTセンターの閉鎖によって、中国に最後に残されていた大規模なLGBT組織が休止することになった」と話した。彭氏は、上海でのプライドイベントを休止した後に中国を離れている。
「上海プライドのリーダーや活動家には大きな圧力がかけられており、イベント運営がどんどん困難になっていた」と彭氏は話した。「12年にわたる運営の後、運営者は休みを取り、英気を養い、状況が改善するまで待つことで合意した」
別のLGBT組織の指導者で、やはり中国を離れたある人物は、BBCの取材に対し、当局からの圧力が社会を変えようとする人たちに犠牲を強いていると話した。
「主催者たちは拘束され、友人や家族も警察から事情聴取を受ける。こうしたことがメンタルヘルス(心の健康)への大きなプレッシャーになる」と、匿名希望のこの活動家は語った。
「パンデミック前は、LGBTグループのための環境は素晴らしかった。大きな声を上げられたし、いくつかの訴訟にも勝利した」「声が大きすぎたのかもしれない」
変化の潮流
中国に特化した市場調査会社「ダシュエ・コンサルティング」によると、2019年には中国で性的少数者を自認する人は7500万人と、総人口の5%を占めていた。
LGBT権利団体は、中国ではまだ承認されていない同性婚など、数々の問題について活動を行っていた。
中国では1997年に同性愛が合法となった。2001年には、中華医学会精神病学分会が同性愛を精神障害から除外した。
中国の最高立法機関「全国人民代表大会」は2019年、国民から最も要請の多い立法の一つが同性婚の合法化だと認めていた。
しかし、民主化運動やインターネット上での反体制派の抑圧と共に、LGBT権利活動の範囲もここ数年で狭まっている。
2021年には、中国の若い男性が「女性的」になりすぎているとする通達を教育省が出し、議論を呼んだ。
この通達では、「生徒の男らしさを育てる」という観点から、引退したスポーツ選手やスポーツ経験者を学校当局が採用し、サッカーなど特定のスポーツを「精力的に発展させる」よう助言している。
中国の放送規制当局もこの年、エンターテイメント番組における「女々しい」美的感覚を禁じるとし、「下品なインフルエンサー」を避けるべきだとの見解を示した。
当局はさらに、より男性的な男性像を推進すると表明。しっかりと化粧をしている男性著名人らを批判した。
このような動きは、性的マイノリティーの人物が注目されるようになってきた中でも起きている。(中略)
英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のティモシー・ヒルデブラント准教授は、「社会的、家族的差別のある国々では、こうした問題はさらに深刻化する」と指摘する。
上海プライドの彭氏は、中国を離れた今も、同国のLGBTコミュニティーを支援している。
「過去10年にわたって上海プライドを運営してきたが、今は限られたイベントしかない。私も他のコミュニティー組織を支援したり、そのイベントに参加したりする機会が増えた」
「草の根活動も、個人や企業も、まだそれぞれの領域で声を上げられるし、コミュニティーやアライ(ally=理解・支援者)への働きかけを創造的に行うことができる」と、彭氏は続けた。
「今、権利主張を行うスペースは非常に限られているが、努力を止めるべきではない」【2023年6月29日 BBC】
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上記のように2021年頃から状況が厳しくなっていることは耳にしていましたが、「草の根活動も、個人や企業も、まだそれぞれの領域で声を上げられるし、コミュニティーやアライ(ally=理解・支援者)への働きかけを創造的に行うことができる」という昨年中頃の話と冒頭の「LGBTQなど性的少数者を施設に送り込み「転向療法」と称して殴打するなどの虐待が横行している」という話は随分と様相が異なるようにも思われます。
一段階取り締まりのギアが上がったのでしょうか。
【LGBT対応にとどまらない、政権の「多様性への不寛容」、人権意識の希薄さという基本性格を示すもの】
問題はLGBTに関するものにとどまりません。LGBTへの不寛容は「多様性への不寛容」、人権意識の希薄さを示すものであり、この国と付き合って行かざるを得ない日本にとっても重要なことです。
これまで頼りにしていたアメリカでは「カネを払わないなら、ロシアに好き勝手させるように煽ってやる」という用心棒というか、みかじめ料を取り立てるヤクザみたいな人物が大統領に復権しそうです。
アメリカがそういう国なら、日本も基本的な方向を考え直して、中国との関係を見直すのも一つの方向性では・・・と言いたいところですが、いくら政治体制が異なるとはいえ、「LGBTQなど性的少数者を施設に送り込み「転向療法」と称して殴打するなどの虐待が横行している」といった国との付き合いを深めるのもできない相談・・・・「いやな渡世だな・・・」