(イムラン・カーン元首相=2023年5月18日【2月6日 毎日】)
【パキスタンの「最も信用できない選挙」 この国の真の支配者は軍部】
パキスタンでは今月8日に国民議会選挙が行われます。
国民的人気という点で言えば、最も人気があるのが現在収監中(2023年8月に汚職を巡る罪で禁錮3年の有罪判決)で出馬できないとはいえ、クリケットの元スター選手で、在任中に軍情報機関トップの人事などを巡って軍部と対立し、議会で不信任を決議されて22年4月に失職したカーン元首相です。
そのカーン元首相に対して、選挙直前に文字通り“連日のように”追加的有罪判決が言い渡されています。
同氏の人気をおそれる現政権、そしてその背後にいる軍部の意向を受けて、同氏の信用失墜、同氏が率いる野党の抑止が目的と見られています。
****カーン元首相に禁錮10年 パキスタン、守秘法違反****
パキスタンの特別法廷は30日、首相在任中に外交公電の内容を公表した公職守秘法違反の罪で、カーン元首相に禁錮10年を言い渡した。地元メディアが報じた。パキスタンは2月8日に総選挙を控え、政界復帰を目指すカーン氏にとって打撃となる。
側近のクレシ元外相も30日、同様の公職守秘法違反の罪で禁錮10年となった。2人は2022年3月、米国が政権転覆を企てていると主張し、その説明のために公電に書かれた内容を都合よく解釈して公表したとされる。【1月30日 共同】
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****パキスタン元首相に禁錮14年 カーン氏、政界復帰に打撃****
パキスタンの裁判所は31日、首相在任中に外国首脳らから受け取った高額な寄贈品を売却しながら政府に虚偽申告をした汚職を巡る罪で、カーン元首相に禁錮14年を言い渡した。国会議員などの公職に就くことも10年間禁じた。地元メディアが報じた。
パキスタンの特別法廷は30日、公職守秘法違反の罪でカーン氏に禁錮10年を言い渡した。同国では2月8日に下院選が予定され、今回の判決は政界復帰を目指すカーン氏にはさらなる打撃となった。
裁判所は31日の判決で、カーン氏に罰金7億8700万パキスタンルピー(約4億1500万円)も科した。【1月31日 共同】
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****カーン元首相、今度は「違法結婚」で実刑=禁錮7年、総選挙前に―パキスタン****
パキスタンの裁判所は3日、カーン元首相とブシュラ夫人に対し、イスラム教の教えに反し違法に結婚した罪で、禁錮7年と罰金を科す有罪判決を言い渡した。地元メディアが伝えた。
同国で8日に行われる下院選(総選挙)に向け、政権側は司法機関を通じ執拗(しつよう)にカーン氏の信用失墜を図っているもようだ。最大野党パキスタン正義運動(PTI)設立者の同氏は、国民的スポーツであるクリケットの元スター選手。収監中で総選挙に出馬できないものの、依然として高い人気を誇る。【2月3日 時事】
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まさに“執拗に”という連日の判決です。
当然ながらカーン元首相個人に対してだけでなく、同氏が率いる野党・「パキスタン正義運動」(PTI)の選挙活動にも大きな圧力がかけられています。
****カーン元首相率いる野党に締め付け パキスタン、8日下院総選挙****
パキスタンで8日、下院(定数336)の総選挙が投開票される。野党「パキスタン正義運動」(PTI)を率いるイムラン・カーン元首相が汚職事件などで有罪判決を受けて出馬が絶望視される中、ナワズ・シャリフ元首相の与党「パキスタン・イスラム教徒連盟シャリフ派」(PML―N)が優勢とみられている。
しかし、クリケットの元スター選手でもあるカーン氏の人気は若者を中心に根強く、野党の反発と混乱が予想される。
カーン氏は2023年8月に汚職を巡る罪で禁錮3年の有罪判決を言い渡された。判決が「政略的だ」と反発して政界復帰を目指してきたが、その後、追い打ちをかけるように公職守秘法違反の罪などでさらに3回の有罪判決を受けた。
選挙管理委員会が公表した下院選の候補者リストに名前はなく、政界に大きな影響力を持つ軍が圧力をかけたとの見方が出ている。
PTIは18年7月の前回選で政権交代を実現した。首相に就任したカーン氏は軍と良好な関係を築いていたが、軍情報機関トップの人事などを巡って対立。議会で不信任を決議されて22年4月に失職し、PTIは下野した。
23年5月にはカーン氏の汚職事件を巡る逮捕を受け、PTIの支持者が軍や政府の施設を襲撃する暴動が起きた。選挙管理委員会は政党の要件を満たしていないとして、PTIが使ってきた政党シンボルを剥奪している。
PTIで首都イスラマバードの選挙区を管轄する男性は毎日新聞の取材に野党への締め付けが激しくなっていると訴える。男性は「軍の一部勢力が、PTIの選挙への参加を妨害している」と強調し、「拘束される恐れがあり、友人の家を転々としながら選挙活動を続けている」と語った。
3度の首相経験があるシャリフ氏も、1999年の2度目の首相在任中に軍クーデターで失職するなど一時は軍と対立した。しかし、現在は良好な関係を保っている。
越境攻撃の応酬に発展したイランとの関係改善や、物価上昇への対策が急務だが、シャリフ氏は今月5日の集会で「私の政権が続いていれば、人々は今日のように不満を抱いていなかっただろう」と訴えた。【2月6日 毎日】
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もともと選挙は、議会が昨年8月に解散されたため憲法規定によって昨年11月の実施が予定されていましたが、新たな国勢調査に基づいて選挙区の区割りを見直すために延期されていました。
議会解散にともなって、現在は選挙管理内閣が組織されていますが、それまでの首相はシャバズ・シャリフ氏。
そのシャバズ・シャリフ前首相の兄が、首相を3期務めた政界の実力者ナワズ・シャリフ元首相。
ナワズ・シャリフ元首相は2017年、汚職罪で有罪判決を受けるとイギリスへ事実上亡命、その後、昨年10月に帰国して4度目の首相の座を狙います。
****「最も信用できない選挙」パキスタン、8日に下院選も政策論争なく 野党弾圧は軍の意向か****
(中略)経済低迷など課題が山積するにもかかわらず、政策論争は欠いた状況だ。
「私の時代の開発や政策が続いていれば、国の経済が今のような状態にはならなかっただろう」。政界復帰を目指すシャリフ氏は選挙期間中の演説でこう繰り返し、支持を呼びかけた。
シャリフ氏は3度首相を務めたが、2017年に資産隠し疑惑を巡り議員資格を剥奪されて辞任。汚職罪で有罪判決を受けると英国へ事実上亡命した。昨年10月に帰国し、今回、4度目の首相の座を狙う。
ただ、選挙は既に「建国以来、最も信用できない選挙」(米紙ニューヨーク・タイムズ)と評される。与党側がカーン氏やPTIへの圧力を強めたためだ。
パキスタンでは22年4月、当時首相のカーン氏が経済危機を巡る失政を理由に下院で不信任案を可決され失職。同氏は昨年以降、汚職罪などで複数回訴追され、3件の罪で実刑判決を受けた。立候補も阻止された。PTIでは出馬が認められない候補が続出し、支持者への襲撃も相次ぐ。PTIはシンボルマークであるクリケットのバットの使用も認められなかった。
弾圧の背景には、政治や司法に強い影響力を持つ軍の意向があるとされる。軍は前回18年選挙でPTIを支援したが、カーン氏が首相就任後、軍人事に介入したことなどを問題視し、関係に亀裂が入った。カーン氏の失職は軍がシナリオを書いたともささやかれた。
代わりに軍が注目したのがシャリフ氏。英国からのの帰国も軍がゴーサインを出したとされ、地元記者は「市民はシャリフ氏を〝軍に選ばれた首相候補〟とみている」と述べた。
一方、パキスタンは新型コロナウイルス禍に加え、22年に国土の3分の1が冠水する洪水に見舞われ、経済状況が深刻だ。昨年7月に国際通貨基金(IMF)は30億ドル(約4500億円)の融資を承認し、債務不履行の危機は脱したが、厳しい状況が続く。シャリフ氏はインフレ対策や雇用創出を訴えているが、具体的な妙手はなさそうだ。
PTI側はカーン氏への刑事訴追を「嫌がらせであり、国民は決して受け入れないだろう」と反発。「国家による抑圧に勇気をもって立ち向かう」と強調している。PML−Nが勝てばPTI支持者の反発は確実で、国内情勢は流動化していく可能性がある。【2月6日 産経】
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シャリフ元首相も軍部と対立して失職の経験がありますが、今回帰国は“軍がゴーサインを出した”ことによるもの。 カーン元首相も就任当時は軍部の支持を得ていましたが、対立すると失職。
シャリフ元首相の与党、パキスタン・イスラム教徒連盟シャリフ派(PML−N)が勝とうが、カーン元首相の野党、パキスタン正義運動(PTI)が勝とうが、この国の真の支配者は背後で糸を引く軍部・・・ということです。
【ロシア 反戦派ナデジディン氏排除の動き】
「最も信用できない選挙」ということですが、その類の“信用できない選挙”は残念ながらパキスタンに限らず、世界中の巷に溢れています。
ロシアでは3月に大統領選挙が行われ、プーチン大統領の勝利(通算5選)が確実視されていますが、問題は“勝ち方”。圧勝で世界に国民の支持を誇示する必要があります。
ウクライナでの戦争が長引く中で、政権は戦争批判が広がることに神経質になっています。
****動員兵の帰還求め妻らがデモ、記者一時拘束 ロシア****
ロシア・モスクワで3日、ウクライナ侵攻に動員された兵士の妻らが夫の帰還を求めて行ったデモを取材していた約20人の報道関係者が、警察に一時拘束された。AFP通信の記者も警察署に連行されたが、数時間後には解放された。
動員兵の妻らはここ数週間にわたり、毎週末、大統領府(クレムリン)の壁の前で抗議活動を行っている。当局は反政府的な抗議活動を厳しく取り締まっているが、兵士の妻らはこれまでのところ処罰されていない。妻らを拘束すれば反発が一段と拡大する恐れがあると懸念しているとみられる。
この日はモスクワ中心部の赤の広場の外で、抗議活動を取材していた内外の報道関係者(全員男性)が拘束された。拡散された動画には、報道関係者であることを示す黄色いベストを着た記者らが警察車両に乗せられる様子が捉えられている。
ウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナでの戦闘に従事する兵士は61万7000人で、うち24万4000人が動員兵だとしている。 【2月4日 AFP】AFPBB News
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なかなか表に出てきにくい戦争批判の受け皿になりそうだ・・・ということで注目されているのが、唯一の「反戦候補」であるナジェージュジン氏。立候補のための署名活動でその支持の広がりが顕著になっています。
当然のように、政権側は神経質にも。反戦候補が一定の得票を得る結果になれば、(選挙に勝ったとしても)プーチン大統領の面目が潰れます。今後の戦争遂行にも影響します。
****ロシア大統領選出馬に向け「反戦候補」が署名提出 「クレムリンは神経質になっている」支持広がりに****
ウクライナ侵攻反対を掲げ、3月のロシア大統領選で出馬を目指す元下院議員が、候補者登録に必要な署名を中央選挙管理委員会に提出しました。(中略)
改革派政党「市民イニシアチブ」から立候補を表明した元下院議員のナジェージュジン氏は31日、10万5000人分の署名を中央選管に提出しました。
ウクライナ侵攻を「プーチン大統領最大の過ち」と批判し、20万人以上の署名を集めたというナジェージュジン氏は、JNNの単独インタビューで自身の支持の広がりについてこう語っています。
元下院議員 ナジェージュジン氏
「クレムリン(大統領府)は神経質になっている。私の支持率は1か月前1%だったが、いまは10%に増えた。(プーチン氏に次いで)2番目だ」
中央選管が今後10日以内にナジェージュジン氏の出馬の可否を判断することになりますが、反戦ムードの高まりを警戒する政権の意向を受け、出馬が認められない可能性も指摘されています。
一方、通算5選が確実視されるプーチン大統領は、他の候補者との討論会には参加しないとしていて、仮にナジェージュジン氏の出馬が認められても侵攻の是非を問う討論などは行われない見通しです。【2月1日 TBS NEWS DIG】
改革派政党「市民イニシアチブ」から立候補を表明した元下院議員のナジェージュジン氏は31日、10万5000人分の署名を中央選管に提出しました。
ウクライナ侵攻を「プーチン大統領最大の過ち」と批判し、20万人以上の署名を集めたというナジェージュジン氏は、JNNの単独インタビューで自身の支持の広がりについてこう語っています。
元下院議員 ナジェージュジン氏
「クレムリン(大統領府)は神経質になっている。私の支持率は1か月前1%だったが、いまは10%に増えた。(プーチン氏に次いで)2番目だ」
中央選管が今後10日以内にナジェージュジン氏の出馬の可否を判断することになりますが、反戦ムードの高まりを警戒する政権の意向を受け、出馬が認められない可能性も指摘されています。
一方、通算5選が確実視されるプーチン大統領は、他の候補者との討論会には参加しないとしていて、仮にナジェージュジン氏の出馬が認められても侵攻の是非を問う討論などは行われない見通しです。【2月1日 TBS NEWS DIG】
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懸念されていた“出馬が認められない可能性”・・・次第に現実のものになりつつあります。
****ロシア大統領選、反戦派ナデジディン氏排除か 中央選管が署名に「不備」認定*****
(1月31日、モスクワのロシア中央選管で、大統領選出馬のための有権者署名を提出する際に話すナデジディン元下院議員(共同))
3月のロシア大統領選の出馬予定者の中で唯一、ウクライナ侵略に反対の立場を表明している元露下院議員、ボリス・ナデジディン氏(60)の陣営幹部は5日、陣営が露中央選管に提出した有権者10万人分超の署名に関し、15%超を中央選管が「不備」だと認定したと明らかにした。陣営幹部によると、署名の5%以上が不備だと認定された場合、ナデジディン氏は大統領選に出馬できない。
大統領選では通算5選を狙うプーチン大統領の「圧勝」が確実視されているものの、政権側はナデジディン氏が出馬して一定の票を集めた場合、政権への打撃となることを警戒し、ナデジディン氏の排除に動いた可能性がある。
露メディアによると、陣営幹部は「署名は真正に集められた」とし、不備認定が誤りであることを証明する用意があると説明。ナデジディン氏も「中央選管が私を候補者登録しなかった場合、最高裁に不服を申し立てる」と表明した。
ナデジディン氏陣営は1月31日、候補者登録に必要な有権者10万人分を超す署名を中央選管に提出。中央選管は署名を審査し、今月7日にも候補者登録の可否を発表するとしている。【2月5日 産経】
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選挙の形を整えるためにある程度の反プーチン候補も認める、あるいは政権側がお膳立てするものの、一定以上に支持を集めそうな反プーチン候補はいかなる手段を使っても選挙から排除する・・・ほとんど意味のない「最も信用できない選挙」です。
前述のように、世の中にはこの類が溢れています。
もっとも、中国のように日本的な感覚での選挙自体がない国もありますので、それよりはマシと考えるべきなのでしょうか。
ただ、民主主義の守護者たるアメリカの選挙も、どんなに罪を重ねようが、民主主義への冒涜行為があろうが、それらに一向にかまうことなく熱烈な支持を受ける候補が政権に近づきつつある・・・・という現実を見れば、“民主的な選挙”とは一体何なのか、ため息も出てきます。
「もしトラ」の一番怖いところは、トランプ氏自身、あるいは彼の政策自体ではなく、(おかしな人間、うそつき、ペテン師、自己顕示欲の塊・・・そうした人間はどこの世界にも存在します)“民主的選挙”で、そういう彼を国民の過半が選んだという現実です。