孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

台湾・馬政権の苛立ち 香港で問われる「一国二制度」の実態

2014-09-27 23:29:07 | 東アジア

(香港で抗議行動に参加する学生 ただ、中国の壁を前にしてはあまりに非力な感も・・・。 中国経済に依存して繁栄を維持してきたことの帰結とも。 “flickr”より By Leung Ching Yau Alex https://www.flickr.com/photos/cyalex/15170492449/in/photolist-p7yJSD-pnCVzj-p8b6W3-pnpvNN-p7QRQU-p7XmwG-p6WaRQ-ppDg1N-pnY5dy-ppoAbR-p7Wd9m-ppHQ5z-pnY8Nj-ppd2Tz-p8131q-pq5Z2p-pq62RT-p8zRTV-pq4Gd3-p8bFqf-p7Zax2-poKd2V-p7QLXh-ppvhkk-povbuW-p8caDZ-p8baiT-poqCAr-p6WvKM-ppDnkS-pprAR6-pnpzGE-p8bc1m-p8bVfj-pnD9H3-p7WPoN-p8yEWC-p6VsQ2-p7UvSS-pp9ndK-ppp7KY-ppnzZw-p7TRXH-p7UeR3-pp9j86-p7UtuL-pnntwN-pnn1MW-p7WtpP-pppiEg)

馬総統「台湾はこのままでは、競争力を失うおそれがある」】
今年3月~4月、台湾では「中台サービス貿易協定」をめぐり、中国への警戒感からこれに反対する学生が立法院議場を占拠する騒動がありました。

「中台サービス貿易協定」は、中台間の医療や金融などサービス分野の市場を相互に開放する内容で、馬英九政権は「就業機会が増え、台湾経済に利点が多い」として、協定の早期発効を目指していました。

世論調査で学生支持が5割前後に達し、議場占拠も長期化するなかで、馬政権は学生側の一部要求に応じ、中国と協議を進める際に立法院などが内容を監督する「中台協定監督条例」案を立法院に提出。

王金平院長(議長)は学生側に歩み寄る形で条例案成立まで協定審議は進めない意向を示して、政権側が譲歩する形で一応事態は収束しました。

しかし、協定審議は長期化しており、台湾の馬英九政権及び中国側は苛立ちを募らせています。

****馬英九総統「早くしないと手遅れになる」・・・進展せぬ「大陸との「サービス貿易協定」に焦り=台湾****
台湾の馬英九総統は10日、中国と韓国が年内にも自由貿易協定(FTA)を締結するとして、「そうなれば、台湾の大陸市場における市場占有率が極めて大きな影響を受けるに違いない」と主張。「ところが(台湾と大陸の)サービス貿易協定は、立法院(議会)で止められている」、「もはや、われわれに先延ばしは許されない」と述べ、焦りをあらわにした。中国新聞社などが報じた。

馬総統は「中国大陸部は将来、地球最大の経済体になるだろう」と述べ、「われわれには、見て見ぬふり、なにも起こっていないように振る舞うふりは許されない」、「今の台湾は、グローバル化の道を歩まねばならない。台湾のグローバル化は大陸を除外することはできない」と主張。

(中略)馬総統自身も「台湾はこのままでは、競争力を失うおそれがある」と認識していることを明らかにした。

台湾では従来、大陸側との協定は「外交における条約ではない」との建て前から、議会の批准なしで締結することができた。

3月から4月にかけて立法院を占拠した学生ら若者の主張の中核のひとつが「議会の承認なしの大陸との協定締結は制度上の不備であり、立法院の事前承認を必要とする法を制定せよ」だった。

王金平立法院長(国会議長)が「大陸との協定について、立法院が事前審査をする監督条例の制定をする」などと約束したことで、学生らは自主的に占拠を終結させた。

馬総統は「とにかく早く動く必要がある。先に立法院の審査が必要だと言うなら、早く初めねばならない。さもないと、台湾にとって非常に不利になる。どの政党が与党になっても同じだ」と述べた。【9月11日 Searchina】
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王金平立法院張(国会議長)と馬英九総統は同じ国民党ながら政敵関係にあり、王金平院長は馬英九総統の了承を得ない「独断」で立法院を占拠した学生らの言い分を受け入れたとされています。

なお、馬英九総統は香港生まれですが、両親は湖南省の出身で、一家は馬総統誕生の直後に台湾に移住しており、馬総統はいわゆる「外省人」(戦後になり大陸から渡ってきた国民党員や支持者とその子や孫など)にあたります。

一方の王院長は先祖から台湾に住み、日本の統治も経験した「本省人」だです。

中国との距離感については、「外省人」と「本省人」では差があります。

習主席「平和統一と一国二制度は国家統一を実現する最良の方法だ」】
状況が進展しないなかで、中国・習近平国家主席は改めて中国側の主張である「一国二制度」について言及しています。

****中国主席、台湾の野党党首に「一国二制度」提起****
中国の習近平国家主席は26日、北京の人民大会堂で台湾の野党「新党」の党首らと会談し、「平和統一と一国二制度は国家統一を実現する最良の方法だ」と述べた。

台湾の聯合晩報によると、習氏が2012年11月に中国共産党の総書記に就任して以来、台湾人との会談で一国二制度に言及するのは初めて。

台湾の中央通信社によると、習氏は中台関係の現状について「新たな状況、新たな問題に直面している」と指摘した。今春の学生運動による反中感情の高まりや貿易協議の停滞などを指しているとみられる。

台湾の総統府は同日、一国二制度は「受け入れられない」とする報道官の談話を発表した。【9月26日 産経】
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中国との統一を求める台湾団体の代表団との会談であったことからの発言でしょうが、中国側が「一国二制度」での政治統一を持ち出せば、その分、台湾側の世論は警戒感を強めます。

香港:「セントラル(中環)占拠」で行政長官の選挙制度民主化を求める
「一国二制度」については、返還後50年は維持するという形で先行する香港が、抗議行動「セントラル(中環)占拠」という大きな節目を目前にしています。

ことの発端は、2017年の香港特別行政区の次期長官選挙について、中国の全国人民代表大会(全人代=国会が常務委員会が、実質的に民主派候補者を排除する決定を行ったことにあります。

****<香港>全人代、次期長官に制限 指名委設置し候補決定****
2017年の香港特別行政区の次期長官選挙について、中国の全国人民代表大会(全人代=国会)常務委員会は8月31日、選挙制度改革の進め方に対する原則を決めた。

(1)「指名委員会」を新設して2~3人の候補を指名(2)その中から有権者が1人1票を投じて選出する--との内容。

経済界などに割り当てられた「選挙委員会」が選ぶ従来の制限選挙から市民に「投票権」を広げる一方、選挙委を廃止する代わりに指名委というハードル設定を義務づけた。
共産党政権の意中の人物が幅広い民意を集めて選ばれた体裁を取れるような制度設計だ。

香港には「1国2制度」に基づく「高度な自治」が認められているが、選挙制度改革の根拠となる香港基本法の解釈権は全人代常務委にある。

このため、香港政府の梁振英(りょうしんえい)行政長官が7月、選挙制度改革に関する報告書を提出し、常務委の判断を求めていた。

全人代常務委の李飛副秘書長の説明によると、指名委は前回選の選挙委(1200人)の選出方法が「ふさわしい」としており、従来同様、親中派が大半を占めるのは確実となった。

候補者には指名委の過半数の支持を得ることを義務づけたうえで「愛国・愛港(国を愛し、香港を愛するの意味)の者」という表現で、中国政府に対抗する人物は排除する前提も示した。

香港政府の報告書は立候補の自由につながる「住民指名」にも言及していたが、「基本法違反の主張」(李副秘書長)と却下し、有権者の直接投票という形式をもって「普通選挙」をアピールした。

原則発表を受け、香港政府は選挙制度の具体案をつくり、立法会(議会)に提出し、3分の2の同意を得れば可決される。

だが、民主派は「暗黒の一日」と反発しており、世界の金融センターの一つ、金融街・セントラル(中環)地区を占拠して抗議する構えだ。

中国政府は3月の全人代の政府活動報告で、これまで言及してきた香港の「高度な自治」に触れず、6月10日には香港返還時に導入された「1国2制度」に関する白書を初めて発表。香港に対する「全面的な管轄権がある」と明記し、締め付けを強めている。

英米からは香港返還から50年間変えないことになっている「高度な自治」が20年足らずで揺らぐ事態に懸念の声が上がっている。

習近平指導部のナンバー3である全人代の張徳江・常務委員長はセントラル占拠について、ウクライナやエジプトを引き合いに「外国勢力の介入による(民主)革命につながりかねない」と危険視。

中国外務省の元次官は「戒厳令を布告する権限がある」と選挙制度改革をめぐって混乱した場合は中国政府の介入の可能性を口にし、李副秘書長も「香港には『1国2制度』の正確な認識が足りない者がいる。違法活動の扇動は各国からの投資者の利益を損なう」と徹底して取り締まる姿勢を示した。

11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)を控え、党・政府にとり、香港政治の情勢は国内外の大きな火種になりそうだ。【9月1日 毎日】
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「セントラル(中環)占拠」は、「香港の経済活動になるべく衝撃を与えない日程」として、香港も祝日となる中国建国記念日「国慶節」の10月1日が予定されています。

****金融街占拠、来月1日か=香港選挙改革で民主****
香港の民主派団体「民間人権陣線」(民陣)は17日までに、中国国慶節(建国記念日)の10月1日に5万人のデモを行う計画を警察に届け出た。

地元各紙が伝えた。デモ終了後に、大群衆で金融街の中環(セントラル)地区を占拠し、行政長官の選挙制度民主化を求める街頭行動を実行する可能性がある。

計画によると、デモ隊は1日午後、香港島中心部の繁華街にある公園から中環まで行進し、「真の普通選挙」導入を訴える。その後、深夜まで中環で集会を開く。【9月17日 時事】
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「セントラル(中環)占拠」に先立ち、学生の授業ボイコットがすでに始まっています。
 
****長官選制度反発 授業ボイコット1万人超 香港学生、中国に撤回要求****
香港で22日、次期行政長官選挙に民主派の立候補を認めない決定を下した中国に反発した大学生らが、授業ボイコットによる抗議活動を始めた。学生団体によると、大学や専門学校など21校から約1万3千人が参加した。

香港紙、蘋果日報(電子版)は香港学生運動として過去最大になると伝えた。学生側は「決定撤回」を求めているが、中国は「撤回はあり得ない」と態度を硬化させている。

学生らは要求が認められない場合、さらなる抗議活動を展開する方針。また民主派の住民団体は、大群衆で金融街の中環(セントラル)を占拠する抗議を10月1日に強行する構えだ。

学生らの抗議がエスカレートすれば、治安維持を理由に中国側が何らかの強硬手段をとる恐れもある。(後略)【9月23日 産経】
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中国「撤回はあり得ない」】
中国側は“全人代の張徳江常務委員長は19日、北京を訪れた香港の親中派の代表団に、授業ボイコットや「中環占拠」で中国の決定が変わることはあり得ないと断言。さらに香港当局は「中環占拠」を違法として、民主派団体が行った10月1日のデモ申請を却下した。”【同上】と態度を硬化させています。

すでに、治安当局との衝突や逮捕などの混乱も出ています。

****無抵抗の香港学生ら23人負傷、警官隊が催涙スプレー、13人を逮捕****
約5千人が集まった香港政府庁舎前の抗議活動は27日未明、学生や支援に駆けつけた市民らの一部に警官隊が催涙スプレーを噴射するなど混乱が広がり、少なくとも23人が負傷、高校生2人を含む13人が逮捕された。

香港政府は27日朝、混乱について遺憾の意を示す声明を出し、社会秩序を守るよう呼びかけた。
香港英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(電子版)などが伝えた。

報道によると、抗議活動をしていた学生らのうち、約200人が立ち入り禁止だった庁舎前広場の中まで柵を乗り越えて侵入し、武装した多数の警官隊に取り囲まれた。

学生らは警官に「撤退しろ」「恥を知れ」とシュプレヒコールを繰り返した。学生らは両手を挙げて無抵抗を示しながら警官隊の前に立ちふさがり、抗議を続けたが、警官隊が催涙スプレーを噴射し、倒れる学生が続出した。

逮捕された高校生は16歳と17歳で、うち1人は高校生中心の学生団体のリーダーだった。(後略)【9月27日 産経】
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****座り込みの61人逮捕=香港政府本部乱入事件****
香港行政長官の選挙制度民主化を求める民主派の学生らが26日夜から27日未明にかけて政府本部構内に乱入した事件で、警察は27日午後、構内で座り込みを続けていた61人を逮捕した。地元テレビが伝えた。

逮捕者の中には、22日からの授業ボイコットを主導した民主派系の学生団体、香港大学生連合会(学連)の幹部も含まれている。【9月27日 時事】 
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親中派の対応については、以下のように報じられています。

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中国側が示した仕組みが実現されるには、香港議会の3分の2以上の賛成が必要。今のところ、民主派系の議員が3分の1をわずかに超えており、親中派も切り崩しに必死だ。

中国寄りのメディアなどでは「今回の案が通らなければ、普通選挙は実現しないかもしれない。不満はあっても、まずは制度を導入することが大事だ」といった声が、連日のように紹介されている。【9月23日 朝日】
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梁振英(りょうしんえい)行政長官は学生らの対話要求に対し、「一人一票の選挙方式が早く実現するよう考えよ」として、民主派候補を排除しながらも一人一票の投票を認める選挙制度改革の導入を決めた中国側の方針に従うよう主張しています。

10月1日の「セントラル(中環)占拠」にどれだけの住民が参加するか、それに対して当局側がどこまでの対抗措置をとるのかは不明ですが、何があってもそれによって中国側が決定を変えることはないでしょう。
天安門広場の学生を戦車で踏みつぶした国ですから。

ただ、どういう展開になるかは香港議会の決定には影響があるでしょう。

また、国際社会が注視するなかで、中国がどこまで介入するのかも注目されます。
「一国二制度」の実態が世界に示されるとも言えます。
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