孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

スリランカ  新たな和平構築に果たす日本の役割

2009-05-01 23:21:07 | 国際情勢

(スリランカ難民の少女 “fickrf”より By springm / Markus Spring
http://www.flickr.com/photos/springm/2946519231/sizes/m/)

【“スリランカ政府が信頼している日本”】
GW期間中のマレーシア・ボルネオ島旅行のため、宮崎県五ヶ瀬町から福岡へバスで移動中です。
そういう訳で、今日は目についた記事を簡単に紹介するだけ。

世間は新型インフルエンザで大騒動していますので、最近は海外からのニュースも殆どがその関係です。
そんななかで、最終段階を迎えているスリランカのタミル人難民救済に向けて、日本の役割を促す声を取り上げた記事がありました。

****スリランカ:日本主導で和平会議を…難民支援組織の総裁****
インド南部に逃れたスリランカ・タミル難民の自主支援組織「イーラム難民支援機構」のチャンドラハセン総裁(66)が30日、毎日新聞のインタビューに応じ、日本やインドなどを交えた政府側とタミル人側との和平会議の早期開催が必要との考えを示した。
政府軍と反政府武装組織「タミル・イーラム解放のトラ」(LTTE)との戦闘が最終局面を迎えたが、和平構築への道筋は見えない。
総裁は「日本が民族和解のイニシアチブも取ってほしい」と訴えた。

同機構は内戦が始まった83年、インドに逃れたタミル人のチャンドラハセン総裁が創設。以来、延べ50万人の難民支援に従事したことから総裁は「タミル難民の父」と呼ばれ、両国のタミル人社会に強い影響力を持つ。
総裁はタミル難民の現状について、「ほとんどの難民が肉親や友人を殺傷され、精神的な傷を持つ。多数派シンハラ人との25年以上にわたる対立のしこりも残っており、戦闘が終わっても難民がすぐに帰国できるわけではない」と指摘した。
その上で、「LTTEは組織的に終わっている」と明言し、「和平構築のための会議を早急に開くべきだ」と強調した。
 会議は治安の関係上国外での開催が望ましいとし、「スリランカ政府が信頼している日本、LTTEに影響力を持つノルウェー、地域大国のインド、超大国の米国」などが和解の仲介役となることを提案。「(日本政府代表の)明石(康)氏は、スリランカで最も尊敬されている外国人の一人」と語り、明石氏の役割に大きな期待を寄せた。
ただ、「スリランカ政府がLTTE側の会議参加を認めるとは現段階では考えられない」とも述べ、会議がどこまで実効性があるものになるかは「政府の対応次第」と語った。

スリランカ政府はLTTEへの最終攻撃で組織の完全壊滅を図ろうとしている。LTTEは「一方的停戦」を政府に通告したが、政府側は「LTTEは過去の停戦協定も裏切り続けた」と拒否した。当事者間で問題解決を図るのは難しく、国際社会がどう介入するかが和平構築の大きな焦点となっている。【4月30日 毎日】
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このブログでも取り上げたように、LTTEが立てこもる地域にはまだ多くの住民が「人間の盾」として取り残されています。
(4月22日「スリランカ  近づく最終段階 懸念される市民犠牲者」
http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20090422

“インドのPTI通信によると、北東沿岸部のムライティブ周辺にある非戦闘地域内のLTTE支配地域は5平方キロまで縮まり、追いつめられている。依然、約5万人が「人間の盾」として残されているとみられている。政府軍がLTTE支配地域のバリケードを20日に破ってから1週間で、避難民は10万人を超え、多くは戦闘による銃撃戦や爆発で負傷。国連の内部資料によると、今年1月以降、6500人以上が死亡した。「人間の盾」となっている市民は飲料水や食料がなく、深刻な状況にあるとみられる。”【4月28日 産経】

【“共存”へ向けて】
LTTE側の一方的停戦表明に対しても、スリランカ政府側は「停戦はLTTEに組織を再構築する時間を与えるだけだ」とはねつけており、停戦の姿勢は見せていません。
国内世論もラジャパクサ大統領のLTTEへの強行路線を支持しています。
ただ、政府側は国際世論にも一定に配慮したのか、27日、LTTE支配地域にいる民間人の犠牲を抑えるために、重火器の使用と空爆を停止すると発表しています。

目下の情勢では、難民帰還の問題よりも、LTTE支配地域住民の生命をいかに保護するかが急務です。
そのために、日本やノルウェー、アメリカの影響力が行使できれば幸いですが、勝利を目前にした政府軍の動きを抑制するのは困難な情勢です。

記事のなかで、チャンドラハセン総裁が期待をよせる明石康・日本政府代表が30日スリランカを訪問しています。

****スリランカ:明石政府代表が訪問*****
スリランカの和平構築などを目指す明石康・日本政府代表は30日夜、スリランカを緊急訪問する。ラジャパクサ大統領に政治的和解への取り組みを求めるほか、避難民キャンプの視察も行う予定。明石氏の同国訪問は02年10月から17回目。 【4月30日 毎日】
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LTTE組織の完全壊滅は避けがたい情勢ですが、“組織的に終わった”LTTEにかわるタミル人組織を取り込んだ“共存”への道筋がつけられるといいのですが。
日本は最大のスリランカ支援国ですが、単なる金蔓以上の働きが期待されます。

LTTEは壊滅しても、差別がある限り散発的なテロは続くでしょう。
“共存”のためには多数派のシンハラ人側の譲歩が必要になります。
それは、スリランカ政府・スリランカ社会にとって、LTTEの戦い以上に困難な課題です。

コメント
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