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日野皓正のオリジナル曲

2013-03-15 | JAZZ
日本を代表するトランペッター「日野皓正」
彼が作曲した美しいバラード「ALONE, ALONE AND ALONE」を取り上げました。

私がこの曲を最初に聴いたのは1970年2月に発売された「takt Jazz シリーズ」という、日本コロムビアからの再発盤でした。
この年を前後して、このレーベルからは日野皓正を始め多くのミュージシャンのアルバムが、新譜、再発の両方で発売されました。
アローン、アローン・アンド・アローンは「A-A-B-A」の32小節から構成されていて、曲も素晴らしいのですが、再発ジャケットの日野は、当時トレードマークとなっていたサングラスをかけたカッコいいスタイルでステージに登場し、これに憧れたこともありました。

その後、この曲が入っているアルバムを収集してきましたので、ここで整理の意味も含めて録音順に並べてみました。
この曲に纏わる経緯について、1996年にリリースされたCDの瀬川昌久さんの解説を添付しました。
 

録音順に並べてみたところ、何と最初のレコーディングはブルー・ミッチェルのBN盤でした。
その理由は上記解説書に詳しく書かれています。
このアルバムには、「ギャラリー8」に立ち寄ったサックスのジュニア・クックの他、チック・コリアも参加しています。

次は白木秀雄がベルリンで録音した「SAKURA SAKURA JAPAN MEETS JAZZ」です。
日野皓正は稲垣次郎のバンドを皮切りに、1963年に19歳の若さで白木秀雄クインテットに参加し、1965年10月のベルリン・アート・フェスティバルに出演しています。
この時は日本がテーマに選ばれ、ドイツで初めて日本人のジャズが紹介され、高い評価を得たことから、その後の11月1日にベルリンでスタジオ録音され、SABA (MPS) から発売されました。
このプロデューサーは、著名な評論家でもあるヨアヒム・E・ベーレントで、彼のアイデアにより3人の琴奏者も加えた曲が披露され、それが「さくらさくら」「よさこい節」「山中節」も入ったジャズアルバムにもなりました。
日本では日本コロムビアがMPSと契約していた時代に、ジャパン・ジャズというタイトルで、日野皓正をアップした1970年当時のファッションのジャケットで発売されました。
このアルバムの解説者である油井正一さんは、以下の3番目に紹介する日本での初レコーディングより、このベルリンの演奏を絶賛していました。
     
左側 BLUE MITHELL 5 「DOWN WITH IT」 (BLUE NOTE BST84214) 
1965年7月録音 (演奏時間 7分43秒)
右側 白木秀雄 5 「SAKURA SAKURA JAPAN MEETS JAZZ」 (SABA 15064ST) 
1965年11月録音 (演奏時間 6分15秒)

そして3番目に登場するのが、日野の初レコーディング・アルバムです。
この時は、当時のオリジナルメンバーである大野雄二(p)、稲葉国光(p)、日野元彦(ds) のカルテットでタクトレーベルに録音され、後に日本コロムビアがこのレーベルを買収した際に、ジャケットと曲順を変えて再発されました。
オリジナルLPでは、アローンはA面2曲目ですが、再発時はA面1曲目に配置されています。
    
左側 「ALONE, ALONE AND ALONE」のオリジナル・ジャケットと裏面(takt-13) 
1967年11月録音 (演奏時間 7分34秒)
右側  日本コロムビアのタクト・ジャズ・シリーズからの再発盤と中の写真 (XMS-10023-CT)
ピアニストの大野雄二は、この後しばらくしてスタジオに入り、CMソングを始めとして多くの曲を書いたりアレンジを担当したりしていて、中でも「ルパン三世」の音楽は有名です。 

次は再びドイツでライブ録音された2枚です。
最初は1971年のジャズ・フェスティバル、2枚目は1973年のジャズ・クラブでのものです。
左側は「HINO AT BERLIN JAZZ FESTIVAL ’71」とタイトルされた日本ビクターから発売されたもので、LPで再発されたことはありますが、契約の関係でしょうか、CDでは一度も発売されていません。
この時の日野はひとつのピークを迎えた時期で、レーベルの移動も影響したのか、演奏も非常に充実しています。
このアルバムのメンバーは日野皓正(tp)、植松孝夫(ts)、杉本喜代志(g)、池田芳夫(b)、日野元彦(ds)で、ここではピアノレスとなっています。
曲はA面2曲、B面2曲で、アローンはB面のオード・ツゥ・ワークマン(ベーシストのレジー・ワークマンに捧げた曲)に続き連続して演奏されていて、ギターの杉本とはお互いに勝手に演っているようにも聴こえますが、実はそうではないところにスリルがあります。
アローンは曲の最後に、日野の長いソロがあって終わりますが、各曲の終わりに録音されている拍手が大きく、良い演奏だったことが伺えます。

右側の「TARO’S MOOD」はドイツのenjaレーベルに録音されたもので、ジャケットの裏側に、日野自身が書いたこのアローンの自筆の五線譜がありましたので、冒頭に掲載しました。
この時のメンバーは71年とは変化があり、ギターの杉本に代わってピアノに益田幹夫が入り、更に今村祐司がパーカッションのコンガで加わっています。
こちらの演奏は、ここで紹介している全アルバムの中で最も長い演奏で、ピアノのフリーな導入部から始まり、かなりエモーショナルな内容となっています。
このアルバムはCDで2回発売されていますが、2回目の2006年に発売されたものはLPの時の3曲の他に新たに4曲が追加され、充実したものになりました。
なおタイトルは新宿のジャズ喫茶「タロー」から名付けられたものと思われます。
   
左側 「HINO AT BERLIN JAZZ FESTIVAL ’71」 (日本ビクター SMJX-10128) 
1971年11月録音 (演奏時間 7分38秒)
右側 「TARO’S MOOD」 (enja 2028 /CD:TOKUMA JAPAN TKCW-32099) (演奏時間 14分25秒)
1973年のヨーロッパ・ツアーの時は、今は無きユーゴスラビア(リュブリアナ)でのライブがNHK FMで放送されたこともあり、この時の演奏も素晴らしかったことを記憶しています。(その放送は、オープン・リールに録音し、未だ押し入れの何処かで眠っています)

なお、この2つのアルバムの間には、1971年(昭和46年)12月3日に、今は無き新宿厚生年金会館で行われた「原信夫とシャープス&フラッツ 結成20周年記念リサイタル」へ客演し、ビックバンドと共に、このアローンを演奏したものもありました。 (レコードは今では懐かしい4Chで録音されています)
 

まだまだ続きます。
1980年代に入るとすぐに米国CBSと契約し、この時代を反映したフュージョン・アルバムを数多く録音するようになります。
また1983年にはCBSソニーと契約し、1984年に「TRANS - BLUE」を製作しています。
このアルバムは、スタンダードのバラードが中心で、1曲だけ日野のオリジナルのアローンが入っています。
メンバーはケニー・カークランド(p)、ジム・ホール(g)、エディ・ゴメス(b)、グラディ・テイト(ds)で、1984年12月に録音され、翌年1月に佐藤允彦がアレンジしたホーンとストリングスを被せて完成させています。
そして日野は、この時期から従来のトランペットに替え、これより柔らかい音がするコルネットを吹くようになりました。
この中のアローンでは、一部でエディ・ゴメスのベース・ソロも聴かれます。
このアルバムは最初LPで購入し、後にCDが発売されたので買い替えてLPを処分しましたが、その時の売却価格はたったの10円でした。
1980年代はフュージョンを中心とした演奏が大半を占め、1993年にはこれらのアルバムから11曲がピックアップされた「SBM BEST SERECTION」というCDも発売され、ホーンとストリングスの入ったアローンはこの中にも入っていますが、この時代の演奏はこれ1枚で事足りると思っています。
 

CBS(ソニー)の時代はフュージョンに活路を見出し、さらには多様な活動をするようになりましたが、これまでのジャズ・フアンはそれに失望し、だんだん離れて行きました。(私もその内の一人です)
そんな折、1989年になると「BLUESTRUCK」というCDが発売されました。
これはウッディ・ショウのスイート・ラブ・オブ・マインと、スタンダードの枯葉以外は全て彼のオリジナルで構成され、アローンも入っていて、この時期のレギュラーだったピアニストのオナージュ・アラン・ガムスを入れたトリオをバックに、淡々と演奏しているのが印象的です。
また1998年には自身のカバー・アルバム「RE-COVER」を、そして2007年には菊池雅章とのデュオで、同曲を録音しています。
  
左側 「BLUESTRUCK」 (東芝EMI/somethinelse 5155) 1989年9月録音 (演奏時間 8分32秒)
中央 「RE-COVER」 (テイチク・レコード/Sweet Basil TECW-28821) 1998年 (演奏時間 8分32秒)

1997年になるとスイート・ベイジルに移籍し、フュージョン時代から使ってきたコルネットを再びトランペットに戻して録音しています。
そしてアローンの演奏については、これまで日野のトランペット以外ホーン楽器は入っていませんでしたが、今回初めてアルトサックスのオリバー・レイクを入れたクインテットで演奏しています。
またこのアルバムのもう一つの特徴は、録音エンジニアにルディ・ヴァン・ゲルダーを起用し、彼のスタジオで録音していることです。

右側 「Edges/エッジズ~日野=菊池デュオ」 2007年6月録音 (演奏時間 7分39秒)
エッジというタイトルが示す通り、2人の研ぎ澄まされた演奏で、お互いの「間」のとり方も絶妙です。
菊池は演奏中に良く唸り声を出し、それが直接録音されていることもしばしばですが、ここではそのような音は聴こえませんし、バックで弾いているコードも変わっていてこれも一聴の価値があります。
またこのアルバムは、2人の心の内を聴く音楽でもあります

コメント (1)
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