AMASHINと戦慄

~STARLESS & AMASHIN BLOG~
日々ブログレッシヴに生きる

誰が殺したクットゥルー神

2013年03月05日 | ルルイエ異本
ああ、クトゥルー神話探究心が嵩じて、まさかブックオフで立ち読みしてる女の子に交じって、少女マンガ本まで買い漁ることになろうとは・・・・

白泉社の“花とゆめCOMICS”レーベルより刊行され、80年代に絶大なる人気を博した魔夜峰央先生の長寿サスペンスギャグ漫画『パタリロ!』は、アラフォー世代の方には馴染み深いかと。私も幼少の頃、夕方に放映されていた『パタリロ』のアニメをよく見ていて、笑い転げていた記憶がある。放送コードスレスレのホモセクシャルなシーンも、幼心に直視してられぬ禁断的な刺激があったし、クックロビン音頭もよく真似したっけか。
実はこの『パタリロ!』の作者である魔夜峰央先生は、大のクトゥルー神話好きで有名で(てゆーか怪奇・ミステリー小説全般の愛読者なのであろう)、『新編 真ク・リトル・リトル神話体系 6』の巻末に先生のインタビュー記事が掲載されているほどである。

今回105円コーナーで入手したのは、『パタリロ! 第69巻』。本巻には、「バンコランVSベールゼブブ」という、パタリロたちが魔界の大公爵と対決する長編ゴシックホラーものが掲載されているのだ。
ここでパタリロが、彼の先祖パタリロ6世が記した日記を取り出してきて、その内容を紹介している。なんでも彼の祖先はお金欲しさに悪魔に魂を売り渡し、この日記は、パタリロ6世が魔界で大公爵の下僕となって働いていた頃に書いた魔界の記録なのだとか。



以前、第62巻に掲載されている「再び東カリマンタン」の巻では、パタリロが「いや、取り越し苦労はやめにしよう。クトゥルーの邪神が宇宙の深淵から攻めてきたらどうしようと心配するようなもので、可能性はほとんどゼロに等しい。」と、クトゥルーの実在を否定するかのようなひとり言を漏らしているが、本編では完全にクトゥルーの邪神と人間との関わりを容認している。
パタリロ6世の日記によると、人間とはクトゥルーの邪神どもが地球に送り込んだ夜鬼どもを駆逐するために、<旧神>が送り込んだ創造物であるということがほのめかされている。う~む、『狂気の山脈にて』では、地球の先住種族である<古のもの>が造り出した失敗作だとされているが、魔夜先生は<古のもの>=<旧神>という論説をお持ちなのであろうか。
いずれにせよ、不思議な復元能力を持つパタリロは、魔界からのなにか、クトゥルー神のなんらかの能力を受け継いだものであることは確かなようである。


魔夜峰央先生の作品でもうひとつ、プリンセス・コミックスから刊行された『アスタロト外伝』という幻の著作があるが、これは魔夜先生のクトゥルー趣味が爆発した、禁断の闇黒神話マンガと呼ぶべき奇作。
主人公のアスタロト公爵は、バンコラン風の美男子キャラクターであり、美少年たちをかこって少年男娼を営む魔界から地上に降り立った大悪魔。ま、飽くまでノリはコメディータッチで『パタリロ!』と大差はない。



クトゥルー神話体系の教義は随所に渡って言及されており、『アッシュールバニパルの写本』、『ネクロノミコン』(バチカン宮殿付属図書館の禁書室に所蔵)など、続々と闇黒魔書も登場する。そして、この魔界の大公爵と対峙するは、這い寄る混沌“ナイアルラトテップ”!
残念ながら、両者の決着はつかぬまま未完となってしまっている。おそらくテーマがマニアックすぎるため打ち切られたのであろう。
まぁ、2ページにも渡って何の挿絵もはさまず(いや、あんたマンガ家だろ!)ダラダラとわけのわからん闇黒神話の教義をたれ流されたら、そりゃ普通の読者はついけいけまへんで。
私としても、少女マンガの線の細い描写(切り絵っぽい)は苦手で、クトゥルーものとしてはちと迫力に欠ける。
ただ、一世を風靡した人気マンガ家であったにもかかわらず、これほどまでに踏み込んだコズミックホラーマンガに挑んだ先生の、クトゥルー愛とその意気込みには敬意を表したい。


社会現象にまでなった「クックロビン音頭」


今日の1曲:『Beelzebub』/ Bill Bruford
コメント (3)
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