AMASHINと戦慄

~STARLESS & AMASHIN BLOG~
日々ブログレッシヴに生きる

新興宗教オモイデ教

2006年12月03日 | 本わか図書室
11月末で期限切れになるブックオフの100円割引券を消化するため、久々に小説を購入。
昔けっこうファンだった筋肉少女帯のヴォーカリスト大槻ケンヂ著の『新興宗教オモイデ教』という長編小説で、大変読みやすい内容だったので一気に読み終えてしまいました。
カヴァーイラストは丸尾末広さんですね。

その内容は・・・

主人公ジローの同級生だった不思議少女なつみさんが、“オモイデ教”という新興宗教の信者になってしまい、ジローも彼女に誘われるがままオモイデ教に入会してしまう。そこで“メグマ波”なる電波を使って人を発狂させてしまう「流誘メグマ祈呪術」という業を身につけ、“つまらない人間(悪しきもの)”を始末するという計画に巻き込まれていく。
そして他の宗教団体との泥沼の抗争へと発展していくのであった・・・

まぁいかにもオーケンらしいドロドロとした世界が展開されており、ところどころでオーケン個人の音楽的趣味のギミックが使用されているのに気づく。たとえば、主人公と中間というミュージシャンくずれの信者が談話するいきつけのバーの店名が「ポセイドンの目覚め」だったり。

筋少の詩世界も物語の随所にちりばめらている。
「新興宗教」というカルト的な発想は“僕の宗教へようこそ”、“新興宗教オレ教”など、筋少の詩の中ではもうお馴染みのテーマとなっている。
「つまらない人間を抹殺する」という発想なんかは“飼い犬が手を噛むので”の詩の内容そのものだし、「電波で人を殺す」という発想は“電波Boogie”、“妄想の男”の詩に出てくる。
あと物語の中で「トー様の足下にすり寄って来た猫のお腹がパックリと割れて、赤いバラの花が溢れだしたり」という下りは、筋少の楽曲を嗜んでいる者なら“猫のお腹はバラでいっぱい”の歌詞を思い浮かべて思わずニヤリとしてしまうだろう。
まぁ筋少うんぬんを抜きにしてもクセのある登場人物といい、わかりやすいストーリー展開といい、エログロナンセンスな描写といい、構成はかなりシッカリとしており、オーケンの卓越した文才が光るなかなかオモシロい物語です。(巻末の解説でも永井豪先生がマンガでそれを力説しておられます)

大槻ケンヂという人物は、インディーズ時代から新興宗教の教祖様というキャラ設定が好きらしく、カリスマというか、そういうキャラを自ら演じていた節があり、これは一種のコンプレックス、あるいは変身願望だったのではないか。
ナゴム時代のテクノバンド、空手バカボンのアルバム『バカボンのススメ』の冒頭でも、“バカボン教教祖伊集院明美”というキャラで登場したり、筋肉少女帯の名曲“キノコパワー”のPVでは、“ラリパッパ教教祖大槻ケンヂ”として登場している。



私も女の子としゃべれなくてクラスでハミってた高校生の頃、筋少の音楽と出会い彼を教祖的な存在として崇めていたような青い時期があり、筋少のアルバムは全て所持していたし、彼の詩集『リンウッド・テラスの心霊フィルム』なんかも購入するぐらいの妄信ぶりであった。
しかし、シングル『元祖高木ブー伝説』が爆発的に売れ、その独特のカルト的キャラにより人気を博しメディアに進出し始め、CMやゲーム音楽とのタイアップなどによる商業的な開き直り、気の弱さを売りにしているような胡散臭さが鼻につくようになり、第一に音楽そのものがつまらなくなったので(正直筋少がよかったのは『踊るダメ人間』までだと思う)もう大学に入った頃にはすっかり醒めてしまっていた。

この小説の最後の方に登場するオモイデ教の教祖“トー・コンエ”という山師的な人物がオーケンとかなり重なり合うものがあり、主人公ジローは彼と出会い、この開き直った教祖が実は単なる妄想家の小心者で、“つまらない人間を抹殺する”という名目を掲げてはいるが、それは自分がコンプレックスや嫉みを抱いている者に向けられてたものであり、結局はこの教祖も自分自身も“つまらない人間”のひとりであることに行き着くのである。

最後に小説の中でトー・コンエがジローに歌って聞かせる唄の歌詞を以下に紹介しよう。

誰も詩など聞いてはないし この世界が皆、作りものなら
青い月夜に緑色の マストを広げて旅に出ようか
パノラマ島へ帰ろう

これは筋少の大ヒットアルバム『サーカス団パノラマ島に帰る』に収録されている“パノラマ島へ帰る”の歌詞の一部が引用されている。
今聴くと、世間に認められなかった負け犬の逃避行を歌ってるような、むなしく暗い歌である。

まぁでも、こういうのキライじゃないんだよなぁ。



今日の1曲:『詩人オームの世界』/ 筋肉少女帯

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