AMASHINと戦慄

~STARLESS & AMASHIN BLOG~
日々ブログレッシヴに生きる

黒智爾観世音菩薩

2011年02月02日 | ルルイエ異本
昨年の秋にふと立ち寄った大阪のブックオフで偶然発見し、先週やっと読み始めたミステリー作家の殊能将之(しゅのうまさゆき)著『黒い仏』を読了。

名探偵を自称する石動戯作という人物が登場し、九世紀の天台僧・円載にまつわる唐の秘法探しを依頼されるところから物語が展開していくわけなんですが。
なんで私がこんな辛気臭そうな探偵小説を読む気になったかというと、ま、やっぱりこの作品がクトゥルー神話絡みやからということですわ。

まぁクトゥルー絡みといっても、ラヴクラフト作品をモチーフに犯人が犯行を遂行していくといった本格探偵推理小説なんだろうと、私も最初は謎解きを楽しむ心構えでこの作品に挑んだのであるが、中盤でいきなし映画「フロム・ダスク・ティル・ドーン」さながらのトンデモ展開になっていって、予めクトゥルーもんとわかっていた私ですら目が・になってしまった。
おそらくこれを読んだ本格派探偵推理小説ファンは激怒したんやないかな。
「イア!どこいくねーん!!」って。

いってしまえば本書は仏教版ナイアルラトホテップものであり、クトゥルーファンが思わずニヤニヤしてしまうキーワードも随所に出てくる。

まずカルト仏教組織が崇め奉っている“くろみさま”が、無貌の神、這い寄る混沌ナイアルラトホテップであることはほぼ間違いないだろう。
色黒の(松崎しげるくらいかな?)住職“星慧”もおそらくナイアルラトホテップの化身であって、彼の最初の滞在先が“ギルマンズ・ホテル”。
比叡山の最深部にある池の名前が九頭龍池(くずりゅういけ)。
第三章のタイトルが「黄の印」で、福岡の繁華街にあるファッションヘルスの店名が“イエロー・サイン”。

あと、これは深読みが過ぎるかもしれないけど、ノースエンド平尾というアパートの住民たち。
自称ヴァイオリン弾きの老人が住んでいますが、私はこれはエーリッヒ・ツァンではないかと。
そして自称画家の男はおそらくリチャード・アプトン・ピックマンなんだと勝手に解釈しております。


もひとつ興味深かったのが、主人公たちがカヴァーヴァージョン談義している場面。
ここでの会話シーンで、作者がかなりのロックファンであることが窺える。
助手のアントニオがフランク・ザッパがカヴァーした「天国への階段」を絶賛している。
一方、ジューダス・プリーストの「ジョニー・B・グッド」なんかも話題にでてきて
「あれはとんでもないですよ。全然はずまない<ジョニー・B・グッド>なんですよ。チャック・ベリーは聴いて激怒したんじゃないかな」
と、かなりコキおろされている。
作者は多分メタル嫌いなんだろう。



アントニオ曰く「ジミー・ペイジのギターソロをホーンセクションで完全コピーしてます。これが本当に完璧な出来映え。譜面に起こして、ホーン奏者に徹底的に練習させたんでしょうね。最高のテクニックと努力を駆使して、世にもばかげたことをやる。ザッパは偉いですね、本当に」と大絶賛。

今日の1曲:『Stairway To Heaven』/ Frank Zappa
コメント
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