今世界の経済界で、このデフォルトのことが大騒ぎになっている。世界に知られた1国が債務不履行に突入するってなかなかないことだから、事の難しい本質が初めて万人に見えるように浮かび上がっている。それも、現代世界最大問題と言うべき本質が。
元凶の米ヘッジファンドの行動は、日頃人を出し抜くためにすべて隠密裏に行動するから一般人には何も見えないもの。そういう隠密行動の凶暴性が事の詳細な経過も含めてバーンッとばかりに、誰の目にも見える形で世に飛び出てきた。
中日新聞の本日5面の社説が、この難しい問題をうまく解説している。要約すればこんな所だろう。
国がその信用をかけて借金した相手に渡す債務証券・国債証券への返済が難しくなった。この国債を買った人々にアルゼンチン政府が相談を持ちかけて、9割の人々が借金減額に応じることになった。ところが、1割の減額に応じない人々の国債を米投資ファンドが安く買い集めて、その全額返済を求めて米連邦地裁に訴訟を起こしたのである。出た判決は、ファンドに全額返済しなければ、減額に応じた人々への返済も認めないというもの。アルゼンチン政府は米最高裁に上訴したが退けられたと、こういう経過をたどった。アルゼンチン政府が「減額相手以外の債権者とよりよい条件を結ぶことは禁止」という契約を減額契約相手と結んでいたから、ファンドの要求も飲むことができない。こうして、一部返済期限が過ぎたものがデフォルトと見なされたわけである。
さて、この社説が展開した批判を上げておこう。
『まず、「米国の裁判所はおかしい判断をした」というのが一般的な見方である。(中略)債権者の大半が同意した借金減額案を反故にする。あまりにファンド寄りの判決に疑問の声が強いのである』
アルゼンチン政府も、多数の債権者の合意で全体を縛れる「集団行動条項」を契約に入れておくべきだったと国際金融筋は指摘しているとも、書いてあった。
『高額報酬の弁護士らで強力な訴訟対策をとり、法の盲点を探る。「全額返済(約千三百億円)を勝ち取れば十六倍もの利益が上がる。まさにハゲタカ」との批判は免れまい。ファンドの意に沿う判決を出した米司法制度や、強欲主義を黙認するような米社会への不信感も高まった』
さて、私見だがここには現代世界の大問題が全て含まれているように思う。
生き馬の目を抜くような競争と、そこにおける弱肉強食性とが、極限にまで達しているという問題。
これを、世界最強のアメリカ国家がまるまる是認し、側面援助しているように見えるという問題。つまり、国連にも最大影響力を持った世界最強国家を、こういう金持ち達が所有しているように見えるという問題。
この競争に関わって、情報量の差によって小さくない一国家に一企業が勝利を収める事態にさえなっているという大問題。こうした事態は、その国家の未来の予算までを浸食することを通して国民の不幸に連なっていくだろうという大問題。
これでは、昔から唱えられてきた人間的道義などはどんどん吹っ飛んでいくのではないか。アメリカの大統領候補が選挙演説で堂々とこんな思想を述べたように。「オバマは貧乏人のためにのみ政治をやっている」。こう言いながらその一方でどんどん中進国、中間層などを世界から蹴落としていくのであれば、金持ちだけのための政治でもって地球を握るも同然ではないか。
アルゼンチンのような一国をさえ蹴落とすような金融の威力によって格差がさらに極限にまで進んだ時、税を払えない人々、そういう人々ばかりの国は一体どう生きよと言うのだろうか。「死ぬ人々が無数に出るのも仕方ないこと」。イラク、パレスチナなどへの仕打ちを見る時、そんな声も聞こえてくるようだ。ロムニー前大統領選挙候補者、共和党論客などはきっとそう考えているのだろう。
どんな物事にも軽重があるが、アルゼンチン・デフォルトはこうして、現代世界、社会の諸問題の根源を鮮やかに示したとは言えまいか。前世紀末から無数に引き起こされた諸国家の通貨危機と同様に。今回のこの大難問は、果たしてどんな結果に行き着くのだろうか。ファンドの望む結果になるのかどうか、世界子孫の近い将来生活・展望を懸けて大注目である。
元凶の米ヘッジファンドの行動は、日頃人を出し抜くためにすべて隠密裏に行動するから一般人には何も見えないもの。そういう隠密行動の凶暴性が事の詳細な経過も含めてバーンッとばかりに、誰の目にも見える形で世に飛び出てきた。
中日新聞の本日5面の社説が、この難しい問題をうまく解説している。要約すればこんな所だろう。
国がその信用をかけて借金した相手に渡す債務証券・国債証券への返済が難しくなった。この国債を買った人々にアルゼンチン政府が相談を持ちかけて、9割の人々が借金減額に応じることになった。ところが、1割の減額に応じない人々の国債を米投資ファンドが安く買い集めて、その全額返済を求めて米連邦地裁に訴訟を起こしたのである。出た判決は、ファンドに全額返済しなければ、減額に応じた人々への返済も認めないというもの。アルゼンチン政府は米最高裁に上訴したが退けられたと、こういう経過をたどった。アルゼンチン政府が「減額相手以外の債権者とよりよい条件を結ぶことは禁止」という契約を減額契約相手と結んでいたから、ファンドの要求も飲むことができない。こうして、一部返済期限が過ぎたものがデフォルトと見なされたわけである。
さて、この社説が展開した批判を上げておこう。
『まず、「米国の裁判所はおかしい判断をした」というのが一般的な見方である。(中略)債権者の大半が同意した借金減額案を反故にする。あまりにファンド寄りの判決に疑問の声が強いのである』
アルゼンチン政府も、多数の債権者の合意で全体を縛れる「集団行動条項」を契約に入れておくべきだったと国際金融筋は指摘しているとも、書いてあった。
『高額報酬の弁護士らで強力な訴訟対策をとり、法の盲点を探る。「全額返済(約千三百億円)を勝ち取れば十六倍もの利益が上がる。まさにハゲタカ」との批判は免れまい。ファンドの意に沿う判決を出した米司法制度や、強欲主義を黙認するような米社会への不信感も高まった』
さて、私見だがここには現代世界の大問題が全て含まれているように思う。
生き馬の目を抜くような競争と、そこにおける弱肉強食性とが、極限にまで達しているという問題。
これを、世界最強のアメリカ国家がまるまる是認し、側面援助しているように見えるという問題。つまり、国連にも最大影響力を持った世界最強国家を、こういう金持ち達が所有しているように見えるという問題。
この競争に関わって、情報量の差によって小さくない一国家に一企業が勝利を収める事態にさえなっているという大問題。こうした事態は、その国家の未来の予算までを浸食することを通して国民の不幸に連なっていくだろうという大問題。
これでは、昔から唱えられてきた人間的道義などはどんどん吹っ飛んでいくのではないか。アメリカの大統領候補が選挙演説で堂々とこんな思想を述べたように。「オバマは貧乏人のためにのみ政治をやっている」。こう言いながらその一方でどんどん中進国、中間層などを世界から蹴落としていくのであれば、金持ちだけのための政治でもって地球を握るも同然ではないか。
アルゼンチンのような一国をさえ蹴落とすような金融の威力によって格差がさらに極限にまで進んだ時、税を払えない人々、そういう人々ばかりの国は一体どう生きよと言うのだろうか。「死ぬ人々が無数に出るのも仕方ないこと」。イラク、パレスチナなどへの仕打ちを見る時、そんな声も聞こえてくるようだ。ロムニー前大統領選挙候補者、共和党論客などはきっとそう考えているのだろう。
どんな物事にも軽重があるが、アルゼンチン・デフォルトはこうして、現代世界、社会の諸問題の根源を鮮やかに示したとは言えまいか。前世紀末から無数に引き起こされた諸国家の通貨危機と同様に。今回のこの大難問は、果たしてどんな結果に行き着くのだろうか。ファンドの望む結果になるのかどうか、世界子孫の近い将来生活・展望を懸けて大注目である。