九条バトル !! (憲法問題のみならず、人間的なテーマならなんでも大歓迎!!)

憲法論議はいよいよ本番に。自由な掲示板です。憲法問題以外でも、人間的な話題なら何でも大歓迎。是非ひと言 !!!

アルゼンチンデフォルトが示すこと  文科系

2014年08月04日 15時17分39秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 今世界の経済界で、このデフォルトのことが大騒ぎになっている。世界に知られた1国が債務不履行に突入するってなかなかないことだから、事の難しい本質が初めて万人に見えるように浮かび上がっている。それも、現代世界最大問題と言うべき本質が。

 元凶の米ヘッジファンドの行動は、日頃人を出し抜くためにすべて隠密裏に行動するから一般人には何も見えないもの。そういう隠密行動の凶暴性が事の詳細な経過も含めてバーンッとばかりに、誰の目にも見える形で世に飛び出てきた。
 中日新聞の本日5面の社説が、この難しい問題をうまく解説している。要約すればこんな所だろう。

 国がその信用をかけて借金した相手に渡す債務証券・国債証券への返済が難しくなった。この国債を買った人々にアルゼンチン政府が相談を持ちかけて、9割の人々が借金減額に応じることになった。ところが、1割の減額に応じない人々の国債を米投資ファンドが安く買い集めて、その全額返済を求めて米連邦地裁に訴訟を起こしたのである。出た判決は、ファンドに全額返済しなければ、減額に応じた人々への返済も認めないというもの。アルゼンチン政府は米最高裁に上訴したが退けられたと、こういう経過をたどった。アルゼンチン政府が「減額相手以外の債権者とよりよい条件を結ぶことは禁止」という契約を減額契約相手と結んでいたから、ファンドの要求も飲むことができない。こうして、一部返済期限が過ぎたものがデフォルトと見なされたわけである。
 さて、この社説が展開した批判を上げておこう。

『まず、「米国の裁判所はおかしい判断をした」というのが一般的な見方である。(中略)債権者の大半が同意した借金減額案を反故にする。あまりにファンド寄りの判決に疑問の声が強いのである』

 アルゼンチン政府も、多数の債権者の合意で全体を縛れる「集団行動条項」を契約に入れておくべきだったと国際金融筋は指摘しているとも、書いてあった。

『高額報酬の弁護士らで強力な訴訟対策をとり、法の盲点を探る。「全額返済(約千三百億円)を勝ち取れば十六倍もの利益が上がる。まさにハゲタカ」との批判は免れまい。ファンドの意に沿う判決を出した米司法制度や、強欲主義を黙認するような米社会への不信感も高まった』

 さて、私見だがここには現代世界の大問題が全て含まれているように思う。
 生き馬の目を抜くような競争と、そこにおける弱肉強食性とが、極限にまで達しているという問題。
 これを、世界最強のアメリカ国家がまるまる是認し、側面援助しているように見えるという問題。つまり、国連にも最大影響力を持った世界最強国家を、こういう金持ち達が所有しているように見えるという問題。
 この競争に関わって、情報量の差によって小さくない一国家に一企業が勝利を収める事態にさえなっているという大問題。こうした事態は、その国家の未来の予算までを浸食することを通して国民の不幸に連なっていくだろうという大問題。
 これでは、昔から唱えられてきた人間的道義などはどんどん吹っ飛んでいくのではないか。アメリカの大統領候補が選挙演説で堂々とこんな思想を述べたように。「オバマは貧乏人のためにのみ政治をやっている」。こう言いながらその一方でどんどん中進国、中間層などを世界から蹴落としていくのであれば、金持ちだけのための政治でもって地球を握るも同然ではないか。

 アルゼンチンのような一国をさえ蹴落とすような金融の威力によって格差がさらに極限にまで進んだ時、税を払えない人々、そういう人々ばかりの国は一体どう生きよと言うのだろうか。「死ぬ人々が無数に出るのも仕方ないこと」。イラク、パレスチナなどへの仕打ちを見る時、そんな声も聞こえてくるようだ。ロムニー前大統領選挙候補者、共和党論客などはきっとそう考えているのだろう。

 どんな物事にも軽重があるが、アルゼンチン・デフォルトはこうして、現代世界、社会の諸問題の根源を鮮やかに示したとは言えまいか。前世紀末から無数に引き起こされた諸国家の通貨危機と同様に。今回のこの大難問は、果たしてどんな結果に行き着くのだろうか。ファンドの望む結果になるのかどうか、世界子孫の近い将来生活・展望を懸けて大注目である。

コメント (4)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 随筆紹介「児童虐待に思う─一... | トップ | TPPのISDS条項   ... »
最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Unknown)
2014-08-04 17:44:26
そもそも、ヘッジファンドの隠密行動とかは無い。
堂々と裁判にかけられていて、さらされている。
バックが、ポール・シンガーだって事は、少し検索かければ分かる事だし、知らないなら、新聞しか見てないバカと言える。

取り敢えず、
http://yamikabu.blog136.fc2.com/blog-entry-1181.html
この記事がよくまとまっているかも。
返信する
答える価値もないが・・・ (文科系)
2014-08-04 21:36:00
 例によってエントリーの中心部分に言及していなくって、エントリーとしては枝葉問題にかかわるコメントだから答える価値も薄いが、今後のために、それでも一言。

 ファンドについてあなたの論点関連部分を、僕はこう語っている。
『日頃人を出し抜くためにすべて隠密裏に行動するから一般人には何も見えないもの』
 このことは、「彼らの未来の行動」に関わって語っていることである。儲けたい人が必死に知りたがるのも、実はこういうことだろう。これに比べればこんな事が周知の事実であるのは上で語った通りに自明のことだが、僕はこんな事を語ったのではない。
『堂々と裁判にかけられていて、さらされている』
 裁判になったってことは、「過去のその行為」を根掘り葉掘り実証するものだ。判決を読んだ人がこれを知っているのは当たり前である。ただ、こんなものはこれに必死の関係者、その弁護士などだけが読む物であって、一般にできるだけ公開されているとは言いがたい。そして、こういう裁判結果でもファンドという物はこの主要点を世の中からまた懸命に隠す物である。なるべく自分らのことを隠す方が、将来儲かるからだ。トリプルAの嘘とか、デリバティブという物のいかがわしさとかも、一般投資者向けにはできるだけ報道規制が敷かれているはずだ。
 
 さて、今後はエントリーの本質に関わりないことは全く返事をしないつもりだ。文章がちゃんと読まれたかどうか分からなくって、つまらないからである。ただ思いつくことだけなら、誰でも書ける。
返信する
アメリカの裁判所の (らくせき)
2014-08-05 09:23:55
判決がそんなに世界的な効力を
持つものなのかしか?
返信する
らくせきさん (文科系)
2014-08-05 14:19:22
 らくせきさん、ご応答ありがとう。
 TPPでもこのことが最大問題の一つのはず。両国にまたがって有効な訴訟、判決の導入という仕組みがあったと思う。知的財産権侵害とか、相手政府の「不法な規則」で企業が損害を受けた場合とか。
 確かISDS条項と呼んでいた。この問題の専門家のサイトを紹介します。例えば、いつかここで何回か紹介したブログ「街の弁護士日記」8月2日エントリーをご参照下さい。名古屋市守山区の岩月浩二さんです。8月2日以前にも、このことを再三問題視されてきたかと覚えています。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。