ZENZAIMU(全財務公式ブログ)

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国家百年の大計はいずこへ・・・理念なき改革

2012-02-02 18:23:11 | 日記

先月31日、政府は行政改革実行本部を発足させ、2009年の衆議院選マニフェストで掲げた「総人件費2割削減」の達成を目指すとしています。一方、与党・民主党も行政改革調査会において、「行政構造改革実行法案」の骨子を1月中にとりまとめる予定でしたが、総会で異論があり、決定は2月以降に先送りされました。

今、政府与党の最大の課題となっている「社会保障と税の一体改革」を進めるにあたっては、消費増税を含む国民負担を求める必要があることから、その前提として「公務員に身を切らせる」改革を進めることで、国民の皆さんに理解を得た上で「消費増税=マニフェスト違反」との批判をかわす狙いがあるとも報じられています。

ところで、何故「総人件費2割削減」なのでしょうか?2009年のマニフェストが策定された時点からの疑問であり、民主党内でも明確に説明できる議員が何人いるのか不明です。2割で1.1兆円の歳出削減になると言われますが、社会保障関係費の自然増見合いなのかも、定かではありません。

そもそも、よく指摘されるとこですが、国際比較では、日本の千人当たりの公務員数(地方含む)は32人と主要先進国の中でも最も低く(仏88、米78、英77、独54)、OECD諸国における公務員人件費対GDP比も最低となっており、そうした意味では日本は小さな政府であり、むしろ、アウトソーシングの名の下で、公共サービスが低下しているのではないかと思います。

日本の累積する長期債務残高問題や急速に進む超高齢化社会に向けた社会保障関連費の増大など、厳しい財政事情は理解しますが、そうであるならば、国民の皆さんに「低福祉低負担」を求めるのか、「高福祉高負担」を求めるのか、国家百年の大計をもって、今後あるべき日本の将来像(ビジョン)を示すことが何よりも重要ではないでしょうか?

その上で、国の業務、地方へ移管する業務、民間へ移管する業務、そして公共サービスをどう提供し、その内容について(仮に公共サービスが低下しても)国民の皆さんが十分に理解し、それでも公務員は少なくてよい、公共サービスや福祉が低下してもよいという政策を選択されるのであれば、私たちも国民のみなさんの負託にこたえる観点から議論していくことになると考えます。

しかし、今、検討されているのは「当面の増税前の露払い的発想」による理念なき2割削減であり、私たちの給与や労働条件をスケープゴートにしているに過ぎず、これでは、まじめに公務・職務に精励している多くの仲間やこれから公務員になろうとする方々のモチベーションを低下させ、将来的な人材確保も困難になり、行政サービスの質の低下、ひいては国民の皆さんへ悪影響を及ぼす結果になるのではないかと危惧するところです。

旧松下電器産業(現パナソニック)の創業者である故松下幸之助氏は、将来の日本のため政治家を育成しようと私財を投じて1979年に「松下政経塾」を設立し、その卒塾生から現在38名の与野党国会議員が誕生しており、野田首相、前原政調会長、玄葉外務大臣など政府与党の中枢議員も卒塾生です。さてさて、その故松下氏は、今の政治状況、日本の将来をどのようにご覧になっておられるやら・・・最後に、生前、政経塾を設立する契機として氏が抱いていたと言われる危機感を披露して、コメントに代えたいと思います。

『日本の政治家は今日の問題を解決することばかりに追われている。100年先はおろか、5年先、あるいは10年先のことを考えている政治家がいない。この変化の激しい時代に青写真のない国作り、国家としての方向を定めない政治は、やがて必ず日本の国を行き詰まらせる』

【谷】