皆さん既にニュースや公務労協情報、全財務号外等を通じてご案内のとおり、昨23日、公務員連絡会・国公連合は、国家公務員の給与削減措置について片山総務大臣との交渉を行い、政府提案を受け入れることで合意しました。
これまでの経過を踏まえつつ、今回の政府との合意に関する全財務中央執行委員長としての見解を以下のとおり、掲載させていただきます。【谷】
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全財務労働組合中央執行委員長としての見解
~片山総務大臣との交渉を終えて~
政府は5月13日、「平成25年度末までの間、俸給・ボーナス支給額の1割をカットすることを基本として交渉を行いたい」として、片山総務大臣から公務員連絡会に対し、「人事院勧告制度の下、極めて異例ではある」が国家公務員人件費削減について提案がなされ、私たち全財務は、国公総連・国公連合に結集し取り組んできたところです。
交渉にあたり、組合では、①誠実な交渉・協議、合意に基づく法案の国会提出、②自律的労使関係制度の確立及び労働基本権の回復に係る関係法案の同時成立、③地方公務員等への影響の遮断、④提案内容の根拠と削減理由等の明確で納得できる説明、⑤定員削減の凍結、⑥若年層への配慮の観点から一律的削減案の撤回と再提案、⑦俸給削減分の退職手当への反映否定、について問題点を指摘し交渉での回答を求めてきました。
この間、公務労協情報や機関紙での情報提供、職場集会、国公連合各地区ブロック単位での情勢報告会などを通じて現場役員・組合員の疑問・意見を集約し、17・19日の2度にわたる書記長クラスによる内山総務大臣政務官交渉を経て、現場組合員の声、厳しい状況を踏まえ、交渉事項の更なる進展のため、ギリギリの交渉を続けてきました。
しかしながら、既に報告されているとおり、譲歩に関しては、政府が頑な姿勢を崩さず更なる譲歩を引き出すことができなかったこと、組合員の思いを代弁し政府に主張したもののその壁を突き崩せなかった点については率直に認めざるを得ません。
また、東日本大震災の発生を受け、政府や国会での震災対応から、予定されていた公務員制度改革関連法案の作業の遅れなどもあり、今国会の会期末を見据えると、政府の人件費削減提案から解決するまでの交渉期間が極めて短期間にならざるを得なかった点については、「十分な交渉協議」「できる限り真摯な対応」との観点から見て、大きな課題を残したところです。
こうした課題を残しながらも、これまでの交渉及び本日の片山総務大臣との交渉において、①当初の一律削減について、俸給部分のみとは言え中堅・若手層に配慮した一定の譲歩を引き出したこと、②今回の給与削減提案と自律的労使関係制度の確立の同時成立については、政府全体として努力することを確認したこと、③今回の措置が異例であり再度の引下げは全く考えていないこと、並びに、人勧制度下においても今回の交渉は重要で人勧よりも組合との合意が優先する旨確認されたこと、④事実上、純減目標を掲げた大掛かりな定員削減を行うことは困難であることを確認し、超過勤務予算の確保について実態に即した支給となるよう必要な検討を行うとされたこと、⑤退職手当については、明確に反映させないとの回答を引き出したこと等、交渉によって私たちが求めていた事項について、一定の解決が図られたこともこれまでの交渉の到達点であると考えます。
しかしながら、組合員のみなさんの生活実態、とりわけ、不眠不休で被災地の復旧復興支援にあたられている組合員、及びその支援にあたる全国の組合員、更には子弟の教育費や住宅関連費などを抱える世帯の組合員のみなさんの実情を踏まえると、一律1割の一時金削減をはじめ、今回合意した政府提案に対して、十分な理解を求めることには断腸の思いであります。
私たち全財務をはじめとする労働組合は、組合員の生活改善、労働条件の維持改善を最大目的に掲げる組織であり、したがって、給与削減について反対の立場にあることは当然であります。
一方で、昨年の参議院選挙の各党マニフェストや人勧深堀論にも見られるように、与野党を問わず国会での公務員人件費への厳しい攻撃、東日本大震災を受けた世論の動向などを踏まえた時、「給与削減絶対反対」を貫くことは戦術上可能ではあるものの、こうしたある意味強力な権限を有する政府・与党等との力関係を含めた情勢を考慮した場合、政府による一方的な給与削減の強行にとどまらず、1割削減以上の更なる人件費削減の攻撃に晒される懸念が強くあったことも事実です。
また、1982年の人勧凍結に代表されるように、これまでの人勧制度下における私たちの賃金労働条件決定が、時の政権や政局に大きく左右・翻弄され、労使による労働条件決定が阻害されてきた歴史的事実についても認識する必要があります。
今、労働協約締結権付与をはじめとして自律的労使関係制度の措置が実現しようとする中で、①労使合意によって私たちの賃金をはじめとする労働条件が決定され、政府をして合意結果が最大限尊重されること、②これらに基づいて国会に法案が提出されること、③国会審議の過程においても、政府の責任において成立させる覚悟をもって対応させること、④労使合意のコントロール下で労働条件を決定する仕組みをしっかり担保させること等により、いわば次代を先取りした新しい労使関係とその運用の試金石になるものと信じています。
このことが、現下の極めて厳しい情勢の中、給与削減措置によって生活に大きな影響を受ける組合員のみなさんの将来的、大局的な利益につながるものとの思いで、全財務としても、本日の政府提案を受け入れるとした公務員連絡会・国公連合の交渉判断を是としたものであります。私自身も組合員のみなさんから寄せられた疑問、意見と全く同じ思いで、国公総連、国公連合に結集し、いただいた意見を踏まえて交渉への反映に努めてきましたが、結果として、厳しい選択をせざるを得なかった点については、重く受け止める次第です。
いずれにしても、東日本大震災の発生により、情勢が大きく変貌し、被災地のみならず日本全体としてのこれからの復旧・復興には大変困難な道のりとなると思います。すべての国民、すべての関係者がこの復旧・復興に全力をあげている中で、私たち財務局で働く組合員も、被災者・被災地とともに歩んで行かなければならない、という思いを胸に、今回の政府提案及びその交渉結果を受け入れることとしたいと思います。
そして、厳しい生活実態と高い志を抱いて日々職務に精励されている全ての組合員の声や思いをしっかり受け止めさせていただきつつ、引き続き、被災地はもとより、全国各地の組合員が復旧・復興に向けて全力をあげて取り組むことを確認させていただき、また、これまでの取り組みにご協力いただいたすべての組合員のみなさんに心から敬意と感謝を申し上げて、中央執行委員長としての現段階での総括とさせていただきます。
2011年5月23日
全財務労働組合
中央執行委員長 大谷 貞徳