中学校の同級会あり。各地から思いを馳せて故郷に集合することとなる。
神戸から里帰りの挨拶をするハルやんは、中学生当時人里離れた牛ノ峰中腹にある集落4~5軒の、通称奥と呼ばれた場所に住んでいた。そのハルやんが挨拶するのに、酒はどこででも飲めるが今日のような同級生ばかりがいる中で飲める機会はめったにない。でも今日は、酒を飲むことより、みんなと話し合うことを大切にする時間を過ごしたい…とみんなに話しかける。そのハルやんも神戸で事業を起こし従業員を多数抱える立場にいると、経営者としての風格が十二分に伝わってくる。また同じ経営者の立場にいる横浜のオーシタ君も皆の前に進んで立った。そして感極まる声で話す。横浜で石川島播磨の仕事を請けて従業員100人を超える事業家になった彼は、みんなの顔を見るだけで涙が出てくる・・と云う。故郷離れること50年が超えるまで孤独感の中で必死にあがいて生きてきたオーシタ君の生き様が身体全体から伝わってくる。
今日の出席者は50人予定のところ46人になった。聞けば、風邪を引いたとか、身内が亡くなったとか、介護の手が必要になったからとか、孫の運動会に行かなければならなくなったとか、そのような理由で欠席となった。それらの欠席理由もすべて年齢を重ねた結果の出来事であろうか・・と思う。
会場の「しおかぜの館」の2階から目の前を静かにハングライダーが数機ふわりふわりと海岸の浜に設えている着陸地点を目指してゆらゆら飛んでいる。
沖を見やれば、日本テレビで放送する「DASH島」である由利島の島影が夕陽の中で目に入る。
どうして団塊の世代である自分たちの田舎の同級生は仲がいいんだろうか・・?話しても話しても笑いが絶えない話が延々と続く。いつの間にか夕日が沈む。そう、ここは夕陽が立ち止まる町の冠キャッチコピーがある。
立ち止まることはなかったけれど、一日の終了を告げる落日は雄大で壮観な壮絶さを描いているようにも見える。
夜になった。笑い声の続く塊りはまだ崩れないが灯りのほとんど少ないこの町は、暗闇でありきっと宇宙衛星から見ると真っ暗闇で大都会に見える灯りの塊はないだろう。四方八方暗い。でも暗い中に在り、みんなと話し合う顔は身も心も壮大な灯りに映る。