今日の面接は、近々釈放される予定の受刑者を雇用して頂こうと1時間ほど高速道路を走って来ていただいた福祉施設の事業所である。
全国の矯正施設では釈放予定の受刑者を次々と協力雇用事業主さんに来所いただき面接をしていただいたうえで採用の合否を頂く流れを作っている。同じように自分たちも実行しているが、この流れがスムーズになってきたのは昨年からであって、それまでは、同胞を得られず自分一人で苦戦を強いられていたので、事業主さんにもずいぶんとご迷惑をおかけしていた。今日の面接は、今年度に入っても回を重ねている面接である。出所者の帰る場所が違う、出所者の希望する職種がバラバラな上に年齢もバラバラなことでマッチングも相当難しい。
この面接の風景は、通常の一般求職者と会社側の人たちが採用面接をするものと少し異なっている。
会社側の面接官はたいてい2~3人、それを倍以上の人たちが面接を見守るという構図になっている。だからともすれば、面接官さんを我々が面接をしているかのようでもある。会社側の人たちも長所や短所、志望動機、自己PRなど通り一遍型通りの質問や会社説明に終始することが多い。でもここは特殊な場所で特異な人が受ける面接である。
これでは会社の人も、遠慮して突っ込んでの質問ができないだろうと・・・よって自分が会社側に立って質問をすることが多くなる。
今日の事業所は福祉施設。
《介護は女性の職員が多いが、君は女性の多い職場のことを知っているの?》《君の職歴見たら、女性はみな部下か、お茶くみの事務員さんなど自分をサポートしてくれたのが女性だったけど、今度は例えば二十歳の女性職員さんの部下になるよね、理解してるの?》《毎日毎時顔を会わせると、早く死にたい、早く迎えに来てもらいたい・・・と云う高齢者がいると、どんな対応が望まれるの?》《介護の世界に要求される能力を、五つ言ってみてよ・・》《人間関係が難しく、仕事は身体的に厳しく、さらに賃金は低い・・よ、どうするの?前職の1/4くらいかナァ・・》《今後仕事をするうえで困っていること、不安なことはどのようなこと?》などと事業主さんに成り代わって私の方から質問攻め・・。
自分がこの10年間ほど受刑者や出所者に会って強く想うことに、彼らの自己開示部分がある。自分の犯した罪を公表して職に就きたい者がおれば、反対に隠して生きていきたい者もいる。どちらがイイとか悪いとかの判断基準を自分は持たない。本人の今後の生き方と雇用する事業所さんの立場がそれを決定する。
やはり、失敗をしても再チャレンジできる社会であらねばと、自分は思うだけ。
さんざん質問で追い込んで身柄を退出させた後・・・彼にとにかくチャンスを与えて欲しいと・・事業主さんにお願いすることとなる。