シンガポール便で、「In Time」を観た。日本では、「タイム」という邦題でまもなく上映が始まる。医学の進歩により25歳まで成長した人間はその後老化せずに永遠に生きることができるが寿命は腕に埋められたタイムクロックによって制御される。その世界では、時間は通貨になっていて、自分の生きる時間は自分で稼ぎ、バス代やコーヒー代や家賃は稼いだ時間で支払うのである。しかし、そこは格差社会であり底辺のスラムゾーンに生きる人々は上流階級の人々から搾取され、1日程度の時間しか持たないため毎日一生懸命働いて時間を稼がなければすぐに死んでしまうのである。逆に、上流ゾーンに住む人間たちは、1000年単位で時間を持っている。
スラムの人間の持ち時間は短いのでいつも時間を気にして生きなければならず、町には時間切れの死体がそこら中に転がっている。だからスラムの人間は、毎日死と向き合い生きている、三途の川の土手を危なっかしく、でも必死で自分の足で歩いているのだ。逆に、時間をたっぷりと持っている上流階級の人間は、ほとんど不死のため、時間を盗られることや事故などで自分が傷つき死ぬことを恐れ、ボディーガードを何人も雇い、走ることも車を運転することもせず窮屈に生きている。どちら側の人間も皆、時間にとらわれて生きるしかないという、息苦しい社会なのだ。
主人公のウィルはある日、自殺志願の男から100年の時間を譲り受ける。母親の悲惨な死をきっかけに、上流階級に潜り込み、社会の不合理に反抗を始める。タイムキーパーに負われ上流階級の娘とスラムゾーンへ戻ったウィルは、時間銀行を襲い時間カプセルを盗み出して人々に時間を分け与えることで社会を変えようとする。
「In Time」2011、監督:アンドリュー・ニコル、出演:ジャスティン・ティンバーレイク、アマンダ・セイフライド、最近アマンダ・セイフライドの「Red Riding Hood 赤ずきんちゃん」、「ジュリエットへの手紙」、「ママミーア」を続けて観ているのでユニークな顔を覚えてしまった。映画にはタイムキーパーという時間の守り人が出てきて重要な役割を演じる。昔、ドラえもんの映画にタイムパトロールだったか時間警察だったかが出てきたが、それはタイムマシンを操って時間の秩序を乱す犯罪を取り締まる組織だったが、この映画のタイムキーパーは時間格差社会の秩序を守るのが仕事なのである。銀行強盗をする二人は昔見た「俺たちに明日はない」のボニーとクライドそっくりだったし、時間をスラムにばらまくところは、金持ちから盗んだ小判を貧乏人に配った義賊・ネズミ小僧次郎吉とそっくりだった。このようにいつか見た映画の焼き直しのような陳腐なところも多いのだが、登場人物のタイムクロックが上がったり下がったり突然ゼロになったりというシチュエイションに完全にはめられてしまい、ハラハラドキドキの映画に引き込まれてしまった。★★★★★
1月2月の機中映画はとりあえずRatingだけしておく。
「ガタカ」1999 監督:アンドリュー・ニコル、出演:イーサン・ホーク、ジュード・ロー、ユマ・サーマン、「In Time」と同じ監督のSF作品で、生まれながらのDNAによって人間の適性(Valid)、不適正(In-Valid)が決められている社会の話で、適格者しかなれない宇宙飛行士になるために、不適格者が血液などを偽装して組織に入り込む。どこか暗い映画だったが、この監督には独特の世界観がある。★★★★☆
「タンタンの冒険」2011 ☆☆☆☆☆ 監督:スティーブン・スピルバーグ 3Dアニメ 期待していたのにはっきり言って面白くなかった。
「Hurt Locker」2008 ★★★☆☆ Avatarのジェームズ・キャメロン監督の前奥さんが監督し、Avatarを抑えてアカデミー賞作品賞を獲得した作品。イラク駐留米軍兵士の苛酷な任務を描いていてアメリカ人なら星5つかもしれないが、戦場と縁遠い身としては切実感がどうしても湧かなかった。戦場は想像力を超えた場所なのだと思う。
「My Girl」1991 ★★★☆☆ 葬儀屋の娘として生まれたから身の回りに日常的に死があり、さらに自分が生まれることと引き換えに死んだ母親や親友の死を乗り越えていくという11歳の女の子の成長ストーリーは過酷としかいいようがない。どこに救いがあるのだろうかと考えていたが、最後は結構しっかり生きてる姿を見せてくれた。
「恋愛小説家」1997 ★★★☆☆ ジャック・ニコルソンのいつもの毒のある演技で観る方はいっぱいいっぱいだった。それでも、周囲との関わりを否定していた小説家がウェートレスによって徐々に変わっていく過程が面白い。
「October Sky」1999 ★★★★☆ ロケットに魅せられた高校生がNASAの技術者になるという実話。とにかく好きなことをとことんやりぬく人生は素晴らしい。
「カウボーイとエイリアン」2006 ☆☆☆☆☆ 評価に値しない。ハリソン・フォードも何が良くてこんな映画に出たのかと思う。
「雪に願うこと」2006 ★★★☆☆ ばんえい競馬で生きる意味を取り戻す青年の話で、伊勢谷友介と佐藤浩市が良かった。