備忘録として

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活断層

2016-06-19 16:11:06 | 話の種

熊本地震が発生して2か月が経つ。東日本大震災の海溝型あるいはプレート型地震ではなく、活断層が動いたことによる内陸型地震で、1995年の阪神淡路大震災の野島断層と同じように地表面に断層面が出現した。この断層沿いの家屋で大きな被害が出た。被害規模を判断する最大地表面加速度は4月14日の前震が0.74gで、16日の本震は0.68g(気象庁三成分合成観測記録)と前震よりも小さかったが、前震で損傷した家屋が本震の追い打ちを受けて倒壊した。屋根瓦の重い木造家屋で1階部分が押しつぶされる被害が多かった。地震加速度は0.89gの神戸も木造家屋の被害が多かった。熊本城の石垣の一部がくずれ落ち、天守閣の屋根瓦も落ちた。

動いた活断層は、以前より認識されていた布多川断層と日奈久断層で、東の延長線上には熊本に連動して動いた大分の別府万年山断層を経由して、日本最大の活断層である中央構造線に繋がる。

活断層の定義: (日本)約10万年前以降に活動した痕跡のある断層。USGSの用語を紐解くと、活断層(Active Fault)とは、A fault that is likely to have another earthquake sometime in the future. Faults are commonly considered to be active if they have moved one or more times in the last 10,000 years.とされ、活動時期を日本の10万年前に対し、1万年前としている。

左:東京新聞Webサイトより、右:国土地理院『都市圏活断層図 利用の手引き』(http://www.gsi.go.jp/common/000112914.pdf)より

地震の規模は動く活断層の長さに関係があると言われ、Log L=0.6M-2.9という断層の長さLとマグニチュードMの関係式が提唱されている。この式を使うと100㎞の活断層が動くとマグニチュードM=8.12の地震が起こるという計算になる。中央構造線の全長は1000㎞以上あり、それが動くとマグニチュードM=9.8というとてつもない数字になってしまう。研究者は中央構造線沿いで過去に発生した地震記録や痕跡から最大地震動がM=8以下であることを推定し、また地質や地形の活動痕跡から中央構造線全線が一度に動くことはないということにしている。式が正しいとして、M=8から逆算した活動長は80㎞となり、なんか短かすぎて本当だろうかという疑念がわく。

被害は対象とする構造物が揺れる加速度で評価し、この地表面加速度は地震のマグニチュードと震源からの距離とその間の地盤状況で決まる。2011年のニュージーランド地震は、M=6.3と小さかったが震源深度は5~6㎞の直下型で、地表面加速度は2gを超え被害は大きかった。神戸はM=6.8、震源深度は16㎞で地表面加速度は0.8gであった。中越地震はM=6.6、深度10㎞で柏崎原発で測定された地表面加速度は1g以上だった。一方、東日本大震災本震のマグニチュードはM=9の巨大地震で、仙台沖のプレート境界沿いで震源深度5~40㎞の巨大地震が連動して発生した。観測された最大加速度は2gを超えていた。

熊本の活断層は2mほど、野島断層は1.5mほどずれた。そのため、日本の原発を活断層上に建てることが禁止されている。ところが日本の活断層がすべて判明しているわけではなく、敦賀原発では同じ断層の露頭をみた専門家の間でもそれが活断層かそうでないかで意見が割れている。2008年の宮城内陸地震ではそれまで活断層とされていなかった断層が5mもずれ、観測された最大地表面加速度は4gだった。そんな場所では、どんな耐震構造を施した構造物でももたない。要するに、現在の科学技術では克服できない5mずれて加速度が4gを超すような活断層が日本のどこかに潜在している可能性があるということである。それでも原発を作り続け稼働し続けるのかということである。

アメリカのカルフォルニアにあるサンアンドレアス断層は延長1300㎞の巨大断層で、両側15m内に住めないことになっている。上の国土地理院の地図でもわかるように狭い国土の日本で活断層のないところを探すのは大変だ。その上に、液状化する緩い砂のあるところ、津波の来る沿岸部、土石流や地すべりの発生する斜面、火山の近く、洪水を起こす河川流域なども避けて住居を決めなくてはいけない。自然災害の少ない場所を選んだとしても、潜在的活断層の存在や設計や施工の人為的なミスや不良のリスクを完全に排除することはできないからやっかいだ。


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