バスのご婦人の味方になっていた。

私はコミュニティバスに乗っていた。こぎれいな高層の都営住宅の横を走りながら、バスの中では隣の席のご婦人が、その隣の席のご婦人に話をしている。その内容が聞こえてきた。話を要約するとこうだ。このご婦人は年金生活者だ。でも、その受給額では足りないので、訪問介護の仕事をして暮らしている。彼女が訪問する要介護者の一人に、この立派な都営住宅に暮らしている老婦人がいる。口うるさい人で、彼女の掃除の仕方が悪いといちいち文句をつける。でも、バスの乗客のご婦人を怒らせているには、もう一つの理由がある。この都営住宅に住む老婦人は生活保護を受けているのである。生活保護を受けているからと言って、介護のやり方に文句をつけてはいけないということはないのだが、バスのご婦人は、自分は少ない年金を補うために、一生懸命働いているのに、税金で暮らしている人が、私以上の良い暮らしをして、そのうえ、人の仕事に口うるさく文句を言うということにあるらしい。それも、自分は普通の人以上に、きれいにしているつもりである。都営住宅の老婦人が、言葉やさしい人ならば、バスのご婦人も、こんなには、激昂しないと思われる。私は、いつのまにか、このバスのご婦人の味方になっていた。

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